好調な業績を継続している携帯大手3社だが、その内容を見るとコスト削減や設備投資の減少などによって、高い利益が生み出されていることが分かる。だが今後は新しい通信方式の導入などによって再び投資が増えると考えられ、現在の状況が必ずしも継続するわけではないようだ。

NTTドコモは年間で1,100億円のコスト削減を予想

ここ最近、携帯大手3社の好業績が続いている。1月から2月に発表された第3四半期決算でも、ソフトバンクグループが米国の携帯電話事業で円高の影響を受け減収となったが、業績自体は好調であり、利益は3社ともに大きく伸ばしている。そして3社とも好調という現在の状況は、低迷していたNTTドコモが業績を回復させた2015年以降続いているものであり、現在携帯大手3社は全て“勝ち組”という、やや不思議な状況にもなっている。

だが現在の市場環境を見ると、大手3社にはむしろ逆風が吹いている状況だ。総務省が昨年4月に適用した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」によって、スマートフォンの実質0円販売ができなくなり、新規顧客の獲得が難しくなってしまった。またその影響を受け、端末価格の高騰を嫌う人達がより安価な料金を求めてMVNOなどのサービスに流出する傾向が急速に強まっており、大手キャリアにとっては既存顧客の流出とARPU(月間電気通信事業収入)の減少が急速に進みつつある。

それゆえ今後、3社の売上は徐々に減少していくものと考えられるのだが、少なくとも現在のところ、大手3社はいずれも業績を伸ばしており、特に利益の伸びが著しいことは確かだ。そこにはサービス開始して間もない光ブロードバンドサービスや、各種コンテンツサービスなどの伸びが影響している部分もあるが、もう1つ大きな影響を与えているのが、コスト削減である。

中でも最近、コスト削減で急速に業績を向上させているのがNTTドコモだ。同社の第3四半期決算を見ると、年間目標1,000億円に対し、累計で820億円のコスト削減を実現したことを明らかにしている。その実績を受けて年間目標をさらに100億円増額し、1,100億円のコスト削減を実現するとしている。

NTTドコモは第3四半期の累計で820億円のコスト削減を実現。年間のコスト削減額を1100億円に増額した

では、年間1,100億円という数字が業績にどの程度に影響を与えると考えられるだろうか。NTTドコモが打ち出した2016年度通期の業績予想を見ると利益予想は9,100億円となっているが、2015年度の利益が7,830億円であることから、年間で1,270億円の利益を伸ばそうとしていることが分かる。それゆえNTTドコモは、この利益の9割弱をコスト削減によって伸ばそうとしているといえ、いかにコスト削減が業績に貢献しているかが理解できるだろう。