親和性が高いといわれてきたVRと旅行の組み合わせ。この分野で新たなビジネスモデルを提示するのがKDDIだ。VRゴーグルを装着すれば、様々な国で“一人称視点”の旅行を体感できる新サービス「SYNC TRAVEL」は、旅行の新しい形として定着するだろうか。

VRゴーグルを装着すれば、世界中で街歩きを体感できるSYNC TRAVEL

現地ガイドを通じ、海外でアクションを起こせるVR旅行

KDDIが取り組む、VRを活用したリアルタイム遠隔海外旅行サービス「SYNC TRAVEL」。日本に居ながらにして、海外での“街歩き”感覚を味わうことができる仕組みはこうだ。

旅行先となる海外には、360度カメラを持つ現地ガイドがいる。日本にいる旅行者は、VRゴーグルを装着してカメラからの映像を見つつ、ガイドに指示を出して行きたい所へ行ったり、現地での買い物を楽しんだりできる。ガイドは旅行者を映し出すモニターを持って移動しているため、そのモニター越しに現地の人とコミュニケーションをとることも可能だ。

新サービスの発表会に登場したKDDIコミュニケーション本部マーケティング部の塚本陽一部長は、SYNC TRAVELの強みとして「リアルタイム性」、「双方向であること」、「現地の人とコミュニケーションを図れること」の3点を挙げた。すでに撮影された全方位動画を見るVRの旅行コンテンツとは違い、自分の行きたい所に移動し、見たいものを見られる点はSYNC TRAVEL最大の売り物だ。ガイド経由で買い物を含む様々なアクションを起こすことが可能だし、現地の人と会話もできるとなれば、体験型VR旅行として欲しい要素は網羅している感じがする。

「世界旅行をもっと自由に」がコンセプトと語るKDDIの塚本部長。画像の右側に見えるのは、現地ガイドが持つモニターだ

自宅向け商品として発売することはできるか

KDDIはSYNC TRAVELのツアー販売でナビタイムジャパンと組む。具体的には、ナビタイムが始めた旅行の計画・予約・ナビゲーションサービス「NAVITIME トラベル」の中で、11月の3日、4日に表参道の特設開場で実施する遠隔旅行ツアーを販売する。このツアーは実証実験のような位置づけで、KDDIは参加者の声や課題などを踏まえて本サービスのビジネスモデルを検討するという。ナビタイムとしては、VR旅行を体験した人が、実際に旅行に出掛けたくなることに期待しているようだ。

11月のツアーは、ロンドン、バンコク、シドニーの中から行きたいところを選んで応募し、抽選で選ばれた人だけが参加できる。VR体験は約15分間で、価格は税込み1,980円。この価格は「スペシャルプライス」(塚本部長)で、本サービスを始める際には価格設定も合わせて再検討するとのことだ。ただし、そこまで高額な商品にするつもりもないという。

まずは特設開場で始めるSYNC TRAVELだが、同サービスをビジネスとして成立させるには、自宅で体験できるコンテンツとして作り込めるかどうかが焦点になってきそうだ。