上質な肉を贅沢に使用するグルメバーガー勢を尻目に、ハードロックカフェが新たに仕掛けるのが“肉抜き”ハンバーガーだ。ステーキなどのヘビーなメニューを取り揃える同店だが、野菜をフィーチャーした新バーガーでは何を狙うのか。

野菜だがヘルシー志向ではない新メニュー

10月に世界各地のハードロックカフェで展開する野菜メニューのキャンペーン。今年で2回目となる日本では、7種のフードメニューと4種のドリンクメニューを提供する。“肉抜き”が斬新な「カリフラワーバーガー」と「キョフテバーガー」はともに1,980円だ。

左はカリフラワーと卵で作ったパテをズッキーニやトマトと一緒に頂く「カリフラワーバーガー」。右はじゃがいもや大麦などでアレンジしたパテを使った「キョフテバーガー」だ。キョフテとはトルコなどで親しまれている肉団子のこと

野菜バーガーはヘルシー志向のユーザーに訴求するための施策かと思いきや、どうも事情が異なる様子。ハードロックカフェ東京店でセールス&マーケティングマネージャーを務める嶋田健氏によると、同店では全てのメニューでカロリー表示を行っておらず、野菜バーガーでも低カロリーを打ち出すつもりはないという。新メニューではヘルシーを一番のセールスポイントとは考えていないのだ。

実際に2つのハンバーガーを食べてみると、カリフラワーバーガーは肉こそ入っていないものの、フライされたパティがしっかりとした存在感を放つ仕上がりとなっていた。キョフテバーガーに至っては、ニンニクの風味も相まってか、どちらかというと濃厚でずっしりくるメニューだと感じた。2つのハンバーガーに共通する特徴は、パテをハンバーグっぽい(肉っぽい)味わいにしていないこと。味わいは肉のようでも実は野菜でできている料理はありがちだが、ハードロックカフェの新メニューからは、「野菜に肉の振りをさせても仕方ない」(嶋田氏)という潔さが感じられる。

“肉に疲れた人”の食欲を刺激できるか

野菜をフィーチャーしているが、ヘルシー路線とは一線を画すハードロックカフェの新バーガー。狙っているのは「肉に疲れた人」だと嶋田氏は語る。「(肉のブームは)焼肉、A5などの高級志向、熟成肉ときて、(食べるほうの)バジェットが追いつかなくなってきている。肉の次を探している人が増えていると思う」というのが同氏の見立て。そういった人に対し、満腹感のある「畑の肉」を選択肢として提示する。

新メニューは野菜バーガーではあるが、卵などが入っているので厳格なベジタリアンにはオススメできないという。ベジタリアンでもなく、ヘルシー志向でもない人を狙った野菜バーガーと聞くと、マーケットはあまりにもニッチだという気がしてしまうが、肉へのこだわりで競い合うグルメバーガー勢の中にあって、ハードロックカフェの新メニューが異彩を放っているのは間違いない。あの手この手のハンバーガー戦争において、肉抜きバーガーがどの程度の集客力を発揮するかに注目したい。