今年はVR元年といわれ、様々なVR HMDやそのコンテンツが登場している。そんな中、通信インフラであるKDDIがVRを使ったコミュニケーションコンテンツを公開した。いまだ共通規格も定まらないVRだが、通信インフラが参入する意味はどこにあるのだろうか。

VRを使った新たなコミュニケーションとは

KDDIが「次世代VRマルチコミュニケーション」と銘打って開発している「linked-door」。HTCの「VIVE」を使ったVRコンテンツで、今年3月に米国のクリエーターイベント「South by Southwest 2016」で初公開となった。その改良版が今回、東京ゲームショウ2016のHTCブースで公開された。

HTC VIVEは高解像度のVR HMDに加え、両手に持つコントローラーで、実際に手を動かしてVR空間のものを操作できるのが特徴だ。また、部屋に設置する赤外線センサーにより、人の移動や、立ったり座ったりといった高さの変化も高精度で認識できる。linked-doorのプレイヤーはVR空間内を自由に移動したり、VR空間内のオブジェクトに干渉したりできる。

HTC VIVEではHMDをPCに接続するほか、両手に持つコントローラーとヘッドフォンが必要。さらに部屋の隅に赤外線センサーを設置するなどかなりの重装備だ

VR空間で体験を共有

linked-door自体は、VR空間内に作られた南国のリゾートビーチやダーツバーといったシチュエーションを体験するデモンストレーションコンテンツだ。異なるシチュエーション内の移動は、VR空間に現れる「ドア」やワープゾーンのようなポータルを使って行う。ドアを開けるには、ちゃんとVR空間上のドアノブにタッチし、コントローラーのトリガーボタンを引きながら手を回転させて開けるなど、現実世界さながらの動作が必要だ。

通信会社ならではともいうべきlinked-doorの特徴は、別の部屋にいるプレーヤーやデモの司会者と同時にVR空間内を移動したり、コミュニケーションを図ったりできるということ。VR空間で他の参加者はアバター(VR空間内で自分の身代わりとして表示されるキャラクター)となって表示され、音声で会話ができる。VR空間を共有する相手とは、グラスを持って乾杯したり、ダーツで遊んだりすることも可能だ。

乾杯している相手の「ガイド」はデモステージの司会。右にいる女性のアバターは隣室でVIVEを装着している別のプレーヤーだ

筆者もブースで体験させていただいたが、まずHTC VIVEの「VR空間を自由に動ける」、「オブジェクトに干渉できる」という体験は、ほかのVR HMDと比べてもかなり没入感がある。また、同席した別のプレーヤーとの挨拶も、ただ文字や声で挨拶するだけでなく、乾杯などの行為が加わることで、直接顔を合わせるよりも緊張せず、しかも従来のコミュニケーションよりも生身に近い感覚があるという、面白い体験に仕上がっていた。