白物家電事業で好調なのが、パナソニック、日立アプライアンス、三菱電機の3社だ。パナソニックは、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績において、アプライアンス部門の売上高が前年比3%減の2兆2,694億円、営業利益は45%増の722億円となった。減収となったのは、テレビ事業の販売絞り込みが影響したものであり、白物家電事業は増収。とくにプレミアム戦略によって、アプライアンス部門全体の収益良化に貢献したという。

パナソニック 代表取締役専務 アプライアンス社社長の本間哲朗氏は、「ここ数年、パナソニックのアプライアンス事業は、ひたすら身を縮めてきた。テレビ事業を中心に売り上げを縮め拠点を閉じ、人を縮小してきたが、昨年度でそのフェーズを終え、全社員が前を向いて成長を語れるフェーズに変わってきている。白物家電分野では成長を目指したい」と語りながら、「すでに2015年度実績で、日本における家電製品の合計シェアは27%となり、過去30年間で最高シェアを記録した」と続ける。アプライアンス社を構成する11事業部のうち、白物家電を担当する5つの事業部のすべてで営業利益率が5%以上を達成しているという。

パナソニックセンター大阪で展示された、パナソニックが提案するキッチン

本間社長は「白物家電事業を牽引しているのはプレミアム製品。日本におけるプレミアム製品の構成比率は44%を占め、アジアでも34%、中国でも32%に達している。これにより、限界利益率はわずか1年で1.5ポイント向上。収益向上に大きく貢献している」と続ける。

独自機能やスマート家電戦略が奏功

パナソニックがプレミアム製品と定義しているのは、「憧れにつながる製品」だという。 パナソニックの独自機能を搭載したり、スマホで制御したりできる製品などがこれに当たる。

ナノケア EH-NA98

例えば、パナソニックのヘアドライヤー「ナノケア」シリーズは、2005年の発売以来、累計出荷700万台を誇るヒット商品。このシリーズだけで、国内シェアは約2割に到達。パナソニックのドライヤー全体では国内で5割以上のシェアを持つという。中核となる「ナノケア」シリーズは、パナソニック独自の微粒子イオン「ナノイー」を採用し、髪をトリートメントできる世界初のドライヤーとして登場。9月に発売する新製品は12代目となり、放電電流の増加によってナノイーの発生量と、ナノイーを送り出す風量を約20%向上。ナノイーが髪に浸透することで、水分バランスを整え、うねりを抑制することで、しっとり感や指どおり、まとまりなどの効果がより実感できるようになる。

「ナノケアシリーズの市場想定価格は2万1000円前後。そうした製品が売れているのは、景気の影響や消費動向よりも、我々の提案が受け入れられているためだと認識している。これらの事業を支えているのは、価値を生み出す商品企画力、顧客が体感および実感ができる店頭力、ナノイーのようなコアデバイスを持っていることである。家電は、製品力によって、事業の中身を変えていくことが大切である」と、本間社長は語る。こうしたプレミアム製品の躍進が、パナソニックの家電事業の好調ぶりにつながっている。

さらに、ナノケアシリーズをはじめとした女性をターゲットにする「パナソニックビューティ」のほかにも、50~60代を対象にした「Jコンセプト」、30~40代を対象にした「ふだんプレミアム」といったセグメント戦略を展開。こうした戦略も市場に受け入れられている。