放送内容を記事化し、SmartNewsなどのキュレーションメディアに配信するラジオ局が増えている。リスナー獲得を狙った動きと見られるが、そもそも地上波で一度は放送した内容を記事化することに、どのくらいの効果があるのだろうか。いち早く記事化に取り組み始めたTOKYO FMで話を聞いた。
番組の記事化に外部の視点
TBSラジオ、ニッポン放送、J-WAVEの3社は2016年7月、SmartNewsに専用のチャンネルを開設し、記事配信を開始した。ラジオ局による番組の記事化事業がにわかに活気づいた印象だが、TOKYO FMがラジオ番組を記事化して掲載するサイト「TOKYO FM+(プラス)」を立ち上げ、SmartNewsにラジオ業界初となる専用チャンネルを開設したのは2015年4月のことだ。
TOKYO FM+には、毎日の放送内容から作成された記事コンテンツが並ぶ。記事の執筆は、番組制作に携わる構成作家が行う場合もあるが、基本的には編集の知見を持つ外部のライターチームが担当。番組スタッフによるブログは良くも悪くも“内輪ネタ”に走りがちだが、TOKYO FM+では外部の視点を取り入れることで、番組を聴いていない人にも読んでもらえるような記事作りに取り組んでいる。
TOKYO FM+のトップページ。記事はラジオ番組の内容をリライトしたものだが、リスナー以外の人でも読みたくなるように、見出しの付け方などに知恵を絞っているという。記事はYahoo!、SmartNews、Gunosy、antennaなどに配信している |
ラジオを“読みたい”というニーズはある?
サイトに載せるのは、一見するとラジオ番組が元ネタと気付かないような記事だ。こういった記事を外部に配信することで、普段はラジオを聴かない人にも番組の存在を知ってもらうのがTOKYO FM+の狙い。ただの番組紹介ではなく、単独でも記事として成立するようなコンテンツを掲載・配信し続けることが同事業の肝となる。
ラジオ番組を書き起こして公開しているリスナーや、ラジオ番組を元ネタにしてニュース記事を作成するメディアが存在するという事実は、ラジオ番組を“読みたい”というニーズが一定程度はあることを示唆している。そのニーズを開拓するのに、最も適した立場にあるのはラジオ局だ。番組内容についてラジオ局が公式な記事を用意すれば、放送内容について余計な誤解を招いたり、番組で発言する出演者の意図を曲解されたりするリスクを減らすこともできる。