2016年6月10日、日本マイクロソフトはWindows 10の最新利用状況や、Windows 7および8.1からのアップグレード通知について説明を行う記者会見を開催した。
既報のとおり日本マイクロソフトは、「毎月10日を『Windows 10の日』」と定め、Windows 10に関する最新情報を発信している。
その一環として、Windows 10体験キャラバンを2016年4月末から開始。日本全国をキャラバンカーが走り、これまで6都市でWindows 10体験イベントを開催したと、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部 本部長 三上智子氏は説明する。来場者数は6月5日時点で13,358人におよび、「全体的に使いやすくなった」「起動/再開が速い」「スタートメニューが分かりやすくなった」といった声を集めたという。
来場者にWindows 10体験前・体験後の感想として、他者に勧めるかと尋ねると、「勧める」と回答した数は48ポイント上昇した。三上氏は「体験してもらうことでWindows 10のよさを理解して貰えたことを実感している」と語る。「Windows 10の日」に関しては賛同パートナーとして、ジャストシステムやトレンドマイクロなど15社が参画し、Windows 10に移行したユーザーにお得な情報などを提供。「Windows 10エコシステムの強みと考える(三上氏)」
既に2016年7月29日でWindows 10への無償アップグレードが終了することは周知しているが、1年間、無償提供を続けてきた理由のひとつは「より安心安全なWindowsをユーザーに使ってほしい(三上氏)」ということ。Windows 7がリリースされたのは2009年9月(一般販売は10月22日)で、当時と現在を比較すると、我々を取り巻くセキュリティ環境は大きく変化した。昨今のサイバー攻撃は組織的に金銭目的で活動し、今現在も200万種類のマルウェアが世界中に点在する。下図はマルウェアの活動確認状況(2016年6月9日時点)を可視化したものだが、数多くのマルウェアが活動していることは一目瞭然だ。
ユーラシア大陸全体では、B106と呼ばれるマルウェアが多く見られる。日本国内は、BamitalやCitadelなど多種多様なマルウェアが活動中だ。第5位にランクインするConfickerは2008年に発見され、Windows 2000からWindows Vistaまでに存在した脆弱性を狙ったマルウェアだが、それだけ古いOSを使っているユーザーも存在し、今この瞬間も危険にさらされていることは明白。「古いPCにマルウェアを感染させて踏み台にし、他のPCへ攻撃を仕掛ける例は少なくない。だからこそ、(OSが)最新版であることが重要(三上氏)」だ。
相応のITスキルを持つユーザーであれば、古いOSを使っていても、自身で対策を講じることは可能だ。だが、一般的なユーザーにそれを求めることは難しい。「10億台のデバイスが標的となっている現状をマイクロソフトの責任として、ユーザーを安全な環境に導きたい。我々は営利企業だから本来は利益を求めるべきだが、(Microsoft CEOのSataya)Nadellaの決断で1年間の無償提供に至った(三上氏)」とした。
日本マイクロソフトは、セキュリティリサーチ企業のFFRIがまとめた「セキュリティリスク抑止効果調査報告 Phase 1」を本日公開(※PDF)。Windows 7に潜むセキュリティ面の問題をはじめ、Windows 10のセキュリティに対する安全性と、日々進歩する標的型攻撃に対しても有効であることをアピールする。「Windows 10ならセキュリティの観点から見ても、先回りして対策を講じることができる。ユーザーは最新の技術と高いセキュリティ機能を享受できる(三上氏)」という。
さて、発表会の肝となるのが、今話題の無償アップグレードに関する通知についてだ。
本件については、日本マイクロソフト カスタマーサービスアンドサポート コンシューマーサポート アジア サービスデリバリーチーム マネージャーの水澤玲氏が説明した。
Windows 10への移行を望まないユーザーにとっては煩わしい存在となるGWX(Get Windows 10)ダイアログだが、キャンセルする方法を丁寧に説明。文章で説明するより下図を見たほうが早いので、まずはご覧いただきたい。
無償アップグレード期間終了後、WGXによるダイアログは出てこない。仮にアップグレードを開始してしまった場合も、15分間のカウントダウン中に<後で実行する>をクリックし、アップグレードの再スケジューリングもしくはキャンセルが可能だ。
アップグレードが始まり、Windows 10のようこそ画面が現れた状態でも、EULA(エンドユーザー使用許諾契約)に対して同意しなければ、アップグレードがキャンセルされる。EULAに同意しないでインストールを先に進められるOSやアプリケーションは存在しないだろう。そのため、「朝起きたらWindows 10にアップグレードされていた」という現象は、途中で何らかのユーザー操作が加わっている可能性が高い。もっとも、EULA画面で<拒否>ボタンを選択するとWindows 7 / 8.1に戻る……ということを示していない点は、分かりにくい部分であることは確かだ。
また、6月中旬からWindows 7 SP1、もしくはWindows 8.1アップデートを適用していないWindows 7 RTMおよびWindows 8ユーザーに対して、Windows 10へのアップグレードをうながす案内が始まる。サインイン時に下図のようなメッセージが現れるので、アップグレードを停止する場合は、<今後、このメッセージを表示しない>をクリックすることでシステム通知は止まるという。ただし、<今は実行しない>ボタンをクリックしても次回以降のサインイン時にメッセージが現れるので注意してほしい。これらの通知はドメイン内やWSUS(Windows Server Update Services)など、管理ツールを使っている場合は対象外となる。
日本マイクロソフトは、Windows 10無償アップグレード終了までの残り約50日間、電話/チャット/ツイッターなどを用いたサポートや、サポートコンテンツを用意して支援を行う。筆者としては企業利益やサポート体制など複合的要素から、日本マイクロソフトがWindows 10を推奨する立場は理解できる。一方で、アプリケーションや周辺機器の互換性問題から、Windows 7 / 8.1に留まるユーザーの状況も分かる。万人が納得する答えはないかもしれないが、Windows 10へのアップグレード後、30日以内なら元のWindows 7 / 8.1に戻せるので、一度Windows 10を試してみてはいかがだろうか。ここでは詳しく触れないが、より万全を期するなら、Windows 10のバックアップ機能で「システムイメージ」を作成しておくと、完全に元の状態(バックアップ時)に戻せるので安心だ。
阿久津良和(Cactus)