$35という低価格で買えるワンボードPC「Raspberry Pi」、ここ数年人気となっている(日本の店舗や通販では5,000円強、2016年4月時点で最新型となるRaspberry Pi 3は6,000円強)。名刺大のサイズに、PCとして使える一通りの機能を備え、OSやデータを格納するmicroSDメモリーカード、マウス、キーボード、ネットワーク、HDMI、電源を接続するだけで「パソコン」として利用できる。OSは一般的なWindowsではなく、Linuxで使うのが基本だ。

Raspberry Pi+マインクラフトの工作キット「PIPER」で遊ぶ

■第1回 : まずは組み立て
■第2回 : 初期設定と、親子で決めるルールと約束
■第3回 : 電子工作の基本を学べるストーリーモード

「Raspberry Pi 3 Model B」

5ドルの「Raspberry Pi Zero」

筆者も複数のRaspberry Piを購入して遊んでおり、大人のホビーや、maker(世の中にないものを作ってしまう人々)にも人気が高い。だが、本来は基本的なコンピュータ科学の教育促進を意図して開発された製品だ。これからの社会を担う生徒に無料配布する企業もあれば、日本でも全校生徒にRaspberry Piを配布して、一般授業に役立てている小学校もある。

一言でコンピュータ教育といっても、その範囲は広い。ソフトウェア学習だけでなく、ハードウェア寄りの学習もあれば、小学生・中学生・高校生では学習のレベルも異なり、必要な教材も変わる。Raspberry Piの標準OS「Raspbian」は多くのコンポーネントを含んでいるが、低年齢向けの教育用機器としては難易度が高い。

KANO Computer Kit

そこで、安価なRaspberry Piを使いつつ、独自のコンテンツや興味を引きそうなパーツを含めた教育用パッケージプロジェクトがいくつかある。例えば「KANO Computer Kit」は色鮮やかなケーブルやキーボード、ステッカーが付いており、ソフトウェア学習が主な目的だ。

ラズパイ+マイクラ

PIPER

ここで取り上げる「PIPER」は、「PIPER: Learning electronics with Minecraft」とRaspberry Piのブログで紹介されているように、Raspberry Piと子どもに人気のゲーム「Minecraft(マインクラフト)」を使用しながら、電子工作の基本を学ぶものだ。2015年3月にプロジェクトがスタートし、クラウドファンディングのKicksterterで投資を募ったところ、目標の5万ドルに対して28万ドルの資金を集めた。

PIPERのパッケージ。凝ったつくりで「作るぞ感」が盛り上がる

PIPERには、Raspberry Pi 2 model B本体とソフトウェアを格納したmicroSDメモリーカードだけでなく、マウス、ディスプレイ、バッテリが入っている。どこでも利用できるのが強みだ。組み立てキットの形で販売されており、買ってきたらまず組み立て作業が必要となる。

キットには、Minecraftの世界を歩き回るために必要なキーボードが同梱されていないが、ストーリーモードで移動キーボタンスイッチを自分で組み立てる。ハードウェアの自己学習キットということを考えると、本体も自分で組み上げるという流れは自然だ(KANO Computer Kitも名前の通りキット形式になっていて自分で組み立てる)。

PIPERチームによる紹介ビデオ

日本人の一般的な子どもにとっては、PIPERのコンテンツが英語という点が最大のハードルだろう。チュートリアルムービーが字幕付きの英語なので、日本語化はかなりの費用をかけなければ無理だろう。プレイ中のメッセージやヒントも英語だ。

また、PIPERは少々お高い。公式サイトの価格は$269.99で、日本ではリンクスインターナショナルが代理店を務める。国内の希望小売価格は49,800円(税別)となり、大量に売れるようなものでもないため、この値段は仕方ないだろう。2016年4月17日の時点で、リンクスインターナショナルの直販系サイトでは、PIPERは在庫切れとなっている。なかなか難しいとは思うが、国内でも継続して買えるように、リンクスインターナショナルにはがんばってほしいところだ。

今回はPIPERの製品サンプルをお借りできたので、組み立てからストーリーモードで電気の流れを実感するところまで使ってみた。「PIPERを買ってきたらこんなことができる」という使用感をお伝えしたい。