ユニクロが今年1月に始めた「セミオーダー感覚で作れるストレッチウールジャケット」(以下、セミオーダージャケット)事業の滑り出しが好調のようだ。そもそもなぜ、ユニクロが同事業に乗り出したのか。色々と気になる部分を探っていくと、行き着いたのは“究極の日常着メーカー”を目指すユニクロの姿だった。

セミオーダー導入店舗に勢い

従来から吊るし(既製品)のジャケットを取り扱っていたユニクロだが、1月からはサイズのカスタマイズを可能とする新たなサービスを始めた。シルエット(スリムフィットかレギュラーフィット)、色(各フィット3色ずつ)、身幅、着丈、袖丈を自分サイズに調整できるジャケットで、値段は既製品の2,000円増しとなる1万4,900円(税抜き)。程よい光沢が特徴の高級素材「Super110's ウール」を採用しており、同一素材のボトムスと合わせればセットアップのスーツとしても着られる。ボトムスと合わせても価格は2万円強だ。

スーツとして買っても2万円強の価格設定は驚きだ(画像はユニクロHPより)

これまでの売れ行きは上々の様子。ユニクロ商品本部メンズMD部の立石学氏によると、ジャケットを取り扱う同一店舗で比べた場合、既製品のみを置いていたときとセミオーダージャケットを導入した後では「勢いに違いがある」という。販売目標も達成しており、従来の製品に比べると顧客からの反響も大きいそうだ。セミオーダージャケットの取り扱いは10店舗でスタートしたが、当初の予定通り、この2月には取り扱い店舗を全国118店に拡大した。

ジャケット“も”ユニクロで

商品本部メンズMD部アウターMDチームのリーダーを務める立石学氏。MD(マーチャンダイジング)部はユニクロの商品企画を担う部署だ

ニット、シャツ、ボトムスなどはユニクロで揃えるが、ジャケットは別の場所で購入する―。立石氏によると、このような顧客からの声は非常に多かったという。インナーやボトムスなどに比べると、ジャケットはサイズ感に対する顧客の要求が非常にシビアなアイテム。S、M、Lという従来どおりのサイズ展開では、デパートや紳士服店との差別化が難しかったようだ。

ジャケットのサイズ感に対する顧客の不満を読み取ったユニクロが、その部分にニーズを見出して投入したのがセミオーダージャケットだ。洋服を選ぶうえで、「フィットするもの(を購入できるの)は最高の贅沢」と立石氏は語る。

セミオーダージャケットは大規模なビジネスを展開するユニクロのスケールメリットが詰まった商品だ。高級素材を使用している割に手頃な価格設定もそうだが、特筆すべきは「早さ」の部分。セミオーダーでジャケットを作る場合、手元に届くには早くて2週間、通常でも1~2カ月かかるのが一般的だというが、ユニクロは最速1週間で商品を届ける。早さの秘密は在庫管理と倉庫内作業にあった。