競争力をつけるための努力を続ける

海外でこんにゃくが有名になるのは、シェアNo.1の群馬県にとって重要なことだろう。しかし、こんにゃくがメジャーな食べ物になればなるほど、日本以外の国々もそれに追随するはずだ。これに対して群馬県の蚕糸園芸課は「日本のものに比べて安い海外産のこんにゃくが市場に出るのは仕方ないこと。そのなかで、どれだけ群馬のこんにゃくを食べてもらえるかを考えたい」と回答した。

群馬県は欧米などの「富裕層」をターゲットと定める。その理由は主に2つだ。ひとつは、水を含んで重いこんにゃくは輸送費も関税も相応にかかるため、エンドユーザーが購入する小売店などでは高値になること。もうひとつは、一般的に富裕層のほうが食に対する関心が高いことだ。食感や味よりも、こんにゃくの健康機能を主にアピールしていく。

群馬県の蚕糸園芸課は「こんにゃく海外戦略研究会」を設置。在県留学生にこんにゃくを使ったレシピを考案してもらう「こんにゃく料理コンテスト」などを開催している。写真左は「地元食材のトマトソース煮」(カメルーンの学生が考案)、右は「春巻」(ベトナムの学生が考案、最優秀賞を獲得)

精粉になってしまうと、ほとんど味にちがいは出ないといわれるが、群馬県の蚕糸園芸課によれば、「多少高値でも日本産がほしいという声も多い」そうだ。世界で日常的にこんにゃくを食べるのは日本と中国の一部地域くらいのもので、そうした意味で日本はこんにゃくについての"最先端"技術を持ち合わせているといえる。

たとえば品種改良だ。日本で栽培しているこんにゃくいもは「はるなくろ」「あかぎおおだま」「みやままさり」という3品種で97%以上を占める。そのうち約25%が、群馬県の試験場で開発されたみやままさりだ。あかぎおおだまなど従来品種の生子(種イモのこと)が細長い形をしているのに対し、みやままさりの生子は丸い。この形状のおかげで機械での植え付けが可能となった。加えて、歩留まりがあかぎおおだまより15%ほど多いなど、効率化に貢献。こんにゃく製品の品質だけでなく、価格での競争力もつけようと模索しているところだ。

こんにゃくが受け入れられるには

かつてイタリアに住んでいた筆者知人によれば、「こんにゃくは"知る人ぞ知る"健康食品のような位置づけで、万人が好んで食べるような食べ方は浸透していない」という話だった。これはあくまで個人的な印象かつイタリアの一部地域に限った話だが、こんにゃくの国際的な知名度がまだまだ低いというのは、あながちまちがいではないだろう。

こんにゃくの海外展開が軌道に乗るためには、現地の食生活になじむ食べ方の提案も重要となる。群馬県では、まずは身近な料理と置き換えられるよう、麺形状のものに注力していく方針だ。

"名脇役"は世界での和食ブームを追い風に、どこまでいけるだろうか。スシがアメリカに渡ってカリフォルニアロールが誕生したように、こんにゃくもアレンジに対する寛容さを備えている。世界でヒットする素地は十分にありそうだ。