神戸市はこのほど、市の教育行政に関わる方針を示した「神戸市教育大綱」を策定し、適性のない教員について「他職種への転換も視野に入れる」と明記した。一般的には、教員免許を取得した「教員」として採用された場合、地方公務員であっても教育委員会内での異動となるのが通例。そんな中、あえて他職種への転換も明記した理由はどこにあるのか。同市教育委員会の担当者に聞いた。
現場は向かなくても事務職はできる
「神戸市教育大綱」は、同市の久元喜造市長が教育委員会と協議を行い、教育の目標や根本的な方針を定めたもの。1月26日に策定し、公表。今回の他職種転換の措置については、「2 教員の資質向上を図ります」と題した項目に明記されている。「指導力や授業力、問題解決能力などに課題がある教員への個別指導を強化し、そのような対応を行っても教員としての職務遂行が期待できない教員については、適性に応じた他職種への転換も視野に入れる」としている。
久元市長はこの措置について、定例会見の中で次のように述べている。「教員を生涯の天職として選んだけれども、学校現場に立ってみたらなかなかうまくいかなかったと。現実に教員の中でもメンタル面で問題を抱える教員も残念ながらたくさん出てきています。…(中略)…しかし、人間の能力は多様ですから、学校現場に立つのは残念ながら向かなかったかもしれないけれども、事務仕事はできる。あるいは別の面での政策の企画立案みたいなことはできると」。
市教育委員会によれば、教員として採用した場合、教育委員会が管轄する部署での異動が一般的とのこと。今回同大綱が策定されたことで、委員会事務局だけでなく、主として市長部局への異動も検討対象になるという。具体的にどのように適性を判断するのかについては、「勤務評定を見ていくのか、判断基準を別途作るのか、具体的なことは決まっていない」とした上で、「異動先に幅広い選択肢があれば、個々の能力を生かせる場所が増える」と前向きに準備を進めているとのことだ。
また久元市長は「教員は幅広い総合的な人間力が求められておりまして、まず採用が大事です」とも指摘。「試験問題につきましては細やかな知識を問うのではなく、読解力、コミュニケーション能力、英語力とともに自然や社会に対し、十分な関心を有しているかなどの視点を重視していくことにしています」と採用方針について語っている。
同市がこのような異例の対応を取り、教員の資質について改めて言及したのはなぜなのか。それは、市民から寄せられた教育行政に対する要望が大きく影響している。