ここまで挙げたプランはほんの一部で、このほかにも数多くの事業が展開される予定だ。国交樹立50周年という“節目”ではあるとはいえ、これほど手厚く各種キャンペーンが実施されるのはあまり例をみない。言い換えると、両国がいかに相手国を重視しているかの表れともいえる。

特に日本からみてシンガポールからの観光客は重要な存在だ。2015年、インバウンド観光客は約1,974万人に達した。うちシンガポールからの観光客は約30万9,000人で、中国からの約500万人、韓国からの約400万人、台湾からの約370万人に比べると、数字そのものは見劣りする。だが、シンガポール人口約387万人(シンガポール人・永住者、2013年9月・外務省データ)のうちの30万人超であることを考えれば、台湾や韓国にひけを取らない高い割合で、日本が観光先に選ばれているのかがわかる(台湾人口:約2,343万人、2014年12月。韓国人口:約5,000万人、2013年。ともに外務省データ)。

JNTOのシンガポール事務所長 真鍋英樹氏

また、訪日回数が多いこともシンガポールからのインバウンド観光客の特徴だ。JNTOのシンガポール事務所長 真鍋英樹氏によると「日本を訪れるシンガポール人のうち、過去3~4回来日したことがあるのは22.8%、5回以上が30.3%を占める。つまりリピーターは5割以上」という。

リピーターが多いというのは大きなポイント。日本を初めて観光する際、真っ先に候補に挙がるのは京都・大阪、そして東京だろう。3~4泊の旅程の場合、これらの都市周辺の観光地を巡るだけで“手一杯”になると考えられる。一方、リピーターであれば、それらの有名都市は観光済み。まだ巡り切れていない地方へ脚を伸ばす可能性がグンと高くなる。“地方創生”を掲げる日本としては、地方へ脚を伸ばす可能性が高い観光客の存在はありがたいといえよう。

加えてシンガポールからの観光客は安定的と判断できるのも好材料。シンガポールは国民一人あたりのGDPが56,284USドルと高水準で、前述したように日本との大きな軋轢はほとんどない。中国からの観光客が増大したとはいっても、経済低迷が懸念されていることを考えると、いつ来日ペースが失速するかわからない。また、領土問題や外交問題のこじれから、観光客が急激に減少する可能性もゼロではない。

STBとJNTOは、観光だけでなく“人と人との交流”“ビジネスの交流”“文化の交流”“政府間の交流”と、SJ50プランは観光だけの施策にはとどまらないと強調する。日本からすれば、“観光立国”として高い存在感を放つシンガポールと交流を深めることで、日本の観光地としての価値を一層磨きたいところだ。