【レポート】

海運業界に異常事態!? 大手企業が巨額の特損を計上した背景とは

藤田真吾  [2016/02/03]

海運会社の業績悪化に歯止めが掛からない。日本郵船、商船三井、川崎汽船の三大海運会社はこのほど、2015年度の通期業績見通しを揃って下方修正。商船三井に至っては、今年度中に最大1,800億円の特別損失を計上すると発表した。海運業界に今、何が起きているのか。

三大海運会社は揃って通期業績予想を下方修正した

そもそも船で運ぶ荷物の量は、海運会社の想定を裏切る形で伸び悩んでいる。その一方で、中国の経済成長などを見込んで海運会社が発注していた船舶は続々と完成しており、現在は海上輸送する荷物の量に対し、船が余っている状況にある。

海運市場における運賃(海運市況)は船舶需給に連動しているため、海運会社を取り巻く事業環境は厳しさを増している。外航不定期船の運賃の動きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年を1,000として算出)をみると、2015年12月に入ってから数値は下落を続け、2016年2月1日には314と過去最低の水準まで落ち込んだ。市況の押し下げ要因として大きいのは、中国向け鉄鉱石・原料炭の減少だ。

中国の動向が海運市況を左右

中国の景気動向が海運市況に与える影響は大きい(画像はイメージです)

鉄鉱石や原料炭を運ぶ大型のばら積み貨物船(ケープサイズ、積載重量10万トン超)を例にとって海運市況を概観すると、中国の動向が海運市況に与えるインパクトの大きさが分かってくる。豪州やブラジルなどから中国に向かう鉄鉱石は例年、10月から12月にかけて大量に輸送される傾向にあった。ところが昨年は、想定通りに鉄鉱石の出荷量が伸びなかった。粗鋼生産量で世界一の中国に景気減速の不安がある以上、積荷のほとんどを鉄鉱石と原料炭が占めるケープサイズの動きが鈍るのは明らかだ。

日本鉄鋼連盟の公表資料「世界銑鉄生産の推移」によると、2006年に約4.13億トンだった中国の粗鋼生産量は増加を続けたものの、2013年の約7.48億トンをピークに減少に転じ、2015年の実績は約6.91億トンに留まった。海運会社は中国向け鉄鉱石・原料炭が増え続けるとみてケープサイズを発注していたため、建造に2~3年を要するという船が完成する頃には、荷物量(需要)に対して船の輸送能力(供給)が余るという事態が発生した。造ったはいいが稼動していないケープサイズも実際に存在するというから、「船余り」はよほど深刻なレベルまで進行しているようだ。

中国の粗鋼生産量は2013年をピークに減少

船舶の処理費用が特別損失に

三大海運会社は保有船舶の合理化を進め、船舶需給の適正化を図っている。商船三井は船舶の処分費用などとして、2015年度の第4四半期に最大1,800億円の特別損失を計上する。具体的には保有する船を売ったり、長期契約で借りている船を途中解約したりする費用が特別損失となる。

海運会社が運航する船舶の種類は多岐にわたるが、ばら積み貨物船とコンテナ船の市況が低迷している現状で業績改善を図るのは難しいだろう。船会社による船舶の処分は進んでいるものの、2016年に海運市場に漕ぎ出す新造船もまだまだ控えているという状況を考えると、船舶の需給バランスが正常に戻るのには時間が掛かりそうだ。

市況回復は早くて2016年後半か

三大海運会社を取り巻く海運市況を見てみると、2015年度第3四半期におけるケープサイズの傭船料(実績)は1日あたり7,000~8,000ドル程度で推移した。一般的にケープサイズの採算ラインは1日あたり2万ドル程度といわれる。市況回復の時期については現時点で見通せないという海運三社だが、あるIR担当者は予測として、2016年後半から2017年初頭に掛けて市況が上向く可能性があると指摘した。ただし、市況が採算ラインを超えるのはまだまだ先になりそうだ。

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