鍵に「権限」を設けられるスマートロック

ネットを介して鍵の受け渡しができるという点に付随して、もうひとつスマートロックの重要なメリットがある。それは鍵に「権限」を設定できることだ。

例えば「管理者」権限を持っていれば、いつでも鍵を利用できるうえに、合鍵の送付、入退室の履歴チェックなど、できることが多いのに対し、「ゲスト」権限の場合は設定された時間内に鍵の開閉のみできるといった具合である。

専用アプリからゲスト権限で合鍵を送るところ。画像はフォトシンスの「Akerun」の例

こうした特性は、ホテルでの利用も可能とする。ホテル側ではいつでも鍵の機能が使えて、合鍵を渡す対象の制限がなく、利用客の履歴が見られる。利用客には、利用範囲が限定された鍵を渡す。これにより、ホテル側と利用客が目的に沿った使い方が可能になる。

入退室履歴がマーケティングにも活用可能

入退室の履歴を利用することで、見守りサービスにも応用可能だ。個人利用でも、子供が帰宅したかどうか、遠方にいる高齢の両親が外出してちゃんと戻ってきているかがわかる。現在、見守りサービスは大手携帯キャリアや警備会社が参入するなどホットな状況であるだけに、スマートロックもその一環として参入余地があるわけだ。

"入退室の履歴"も、ビジネス利用において重要なポイントになる。例えばコワーキングスペースの場合、「利用客は何人だったのか」「掃除などメンテナンスのスタッフの出入りはあったか?」という状況が把握できるだろう。

自身が不動産を持つというQrioの西條晋一代表はさらに一歩踏み込んだ見方をする。不動産仲介会社から自身の物件に関する内見実施の連絡を受けつつも、現状は「なぜ入居が決まらなかったのか、内見時間はどのくらいだったのか、そもそも何人来たのか、というマーケティング面での情報がもらえない」とし、「スマートロックを活用することで課題が解決する」(同氏)とスマートロックとマーケティングの接点について示唆する。

こうした情報は、ややデリケートな内容もはらむが、スマートロックがドアを開閉する単なる鍵ではない役割を担うことがわかるだろう。

入り込む市場は多いが……

このほかにも、貸宿・空きスペース、店舗の防犯・勤怠管理などでの利用も想定されるという。不動産仲介、高齢者見守りサービス、ホテルのフロント業務なども含め、様々な業界に新たな利便性をもたらすスマートロック。だが、市場の拡大や普及という観点から見ると、そこに立ちはだかる障壁は、実はまだまだ多い。障壁はどこにあるのか。次回はスマートロック普及の鍵、将来像に迫っていく。