GIGABYTEとリンクスインターナショナル18日、秋葉原のツクモパソコン本店にて、「極冷OC指南イベント」を開催した。本イベントは、GIGABYTE製のオーバークロック向けマザーボード「Z170X-SOC FORCE」の発売を記念したもので、プロのオーバークロッカーである清水貴裕氏をゲストに迎えて、液体窒素(LN2)を使った極冷オーバークロックを実演した。

今回デモを行ったのはプロオーバークロッカーの清水貴裕氏。手に持っているのは、イベント当日にZ170X-SOC FORCEの購入者にプレゼントされたステンレスマグボトル

イベント当日に発売開始となったZ170X-SOC FORCE。オーバークロッカー向けのハイエンドモデルだ

極冷用の液体窒素。今回は余裕を見込んで50Lを用意

Z170X-SOC FORCEは、オーバークロック用途に向けて、特別に設計されたマザーボード。デモに先駆けて、清水氏からZ170X-SOC FORCEの特徴が解説された。Z170X-SOC FORCEの魅力ポイントとして、清水氏は入念に設計された電源回路とクロックジェネレーター「TURBO B-CLOCKチップ」、オーバークロックのための時短となるOC TOUCHを挙げたていた。

今回デモで利用したZ170X-SOC FORCE。CPUソケットの近い位置にクロックジェネレーターである「TURBO B-CLOCK」を搭載。この位置にクロックジェネレーターがあるのが評価ポイントだという

VRMはInternational Reactifier製のデジタルフェーズPWMコントローラーと、Hi/Low side MOS FETとDriver ICが一体になったPowlRstage、そして高耐久ブラックコンデンサと電源部に高性能パーツを盛り込んでいる

Intel Z170マザーボードで各社が採用するクロックジェネレーターでは、従来よりも調整範囲が大幅に広がった。GIGABYTEの「TURBO B-CLOCK」では、さらにシールド効果(と見た目)を重視したメタルプレートが付いている

続いて挙げたOC TOUCHは、OC設定のためにハードウェアで実装されたボタンスイッチ群で、システムを停止していても周辺回路だけ電源供給を行って、冷却ファンを回すことができる「OC Ignition」や、クロックや倍率をボタンで上げ下げできる「OC Touch Buttons」や最悪の状態からいち早く復活できる「OC Trigger Switch」などを高く評価していた。

手早く操作ができるOC TOUCHとその他のスイッチ群。基本はエクストリームユーザー向けだが、自動OCボタンも用意されている

CMOSクリアボタンでも解除できないときに備えて、バッテリ抜きと同じ効果のボタンも用意。リセットボタンを間違えて押さないようにこれだけ色が変えてある

また、Intel Z100シリーズマザーボードで採用されたPCI Express x16スロットの金属カバーは重いGPUを取り付ける場合など、スロット負荷がかかる状況でも安定するいう。

PCI-EスロットをメタルでカバーするUltra Durable PCI-Eメタルシールド

最近では、秋葉原の店頭イベントなどで引っ張りだこの清水氏だが、よく「オススメのパーツは?」と聞かれるそう。そこで今回のデモで使用する一押しパーツもいくつか紹介していた。

まずは、CORSAIRの電源ユニット「HX1000i」。シングルレーンながら、CORSAIRの独自ツールである「CORSAIR Link」を使うことで、仮想的にマルチレーン動作を実現できる点とセミファンレスである点を評価していた。このほか、メモリは同じくCORSAIRのDOMINATOR PLATINUM、グリスにはThermal Grizzly Krionautを「シミオシ(清水の一押し)」として挙げていた。

今回利用したその他のパーツ。電源はCORSAIRの「HX1000i」。普段は1200Wや1500Wクラスの電源を使うことが多いそうだが、もう少し普段使いにも適したモデルということでこちらをチョイス

メモリはDDR4-3200Mhzモデルを使用。とはいえオーバークロッカー向けの選別モデルなのでより上が狙えるうえ、バラツキも少ないそうだ

OC向けのハイエンドグリス。伸びがよくて極冷時のひび割れが起きにくいそうだ

極冷で定格4.0GHzのCore i7-6700KはどこまでOCできるか

今回のデモは2回行われたが、使用したちなみにCPUは特に選別したというわけではないそうだが、殻割りをしてTIMをThermal Grizzly Krionautで塗りなおしたという。

1回目のデモでは、銅製ポッドの取り付けからスタート。グリスは比較的厚めに塗って、これを「グリグリ」することで密着度を高めるという。そののち密着度を上げるために空だきをしてCPU温度を温めるのだが、時間短縮という事でガストーチで温めていた。

デモ前のポッド装着風景。結露防止に厚めの紙ウエスを装着。ちなみに基板には別途コーティング剤を塗っている。またCPUソケットにはグリス汚れ防止のためにテープを張ってある

ポッド安定のためのクッション材を装着

ポッド底面は前回のグリスが付着しているので、ウエスで拭き、さらにアルコールティッシュで拭き、最後に眼鏡ふきで拭く

CPUにグリスを塗る。付属のアプリケーターで塗りやすいそうだ

念入りにタテヨコに全面塗っている

ポッド鎮座

グリスとCPU、ポッドの密着性を上げるために空だき………イベントで時間もないのでバーナーで炙る

温度は50度ぐらいが目安との事。そののち「グリグリ」して密着度を上げる

バネとナットで固定してから、周りに結露しないように紙ウエスで包み

さらにタオルで包む。いつもの紫色ではなくZ170X-SOC FORCEに合わせでオレンジ色にしたそうだ

その後、液体窒素を注ぎ込みおおよそ-50℃で起動開始。この時点で「空冷だとキツイ5GHzも極冷ならラクラク」とBIOS設定を行っており、空冷との違いを見せつけていた。

まずは軽く冷却してから起動

極冷の最初の起動目安は-50℃とのこと。この時点でコアの電圧は1.5Vと結構盛っている。空冷だと厳しい領域でも極冷ならあっさり起動

1回目のデモでは最初のWindows起動で少々手間取った以外は、順調にクロックアップが進み、会場内の「OCは5.7GHzまで」という予想を覆し、6.1GHzまでオーバークロックできた。清水氏によると、今回のシステムでは事前の検証で、6.0GHzならばミスやグリスがはがれなければまず成功し、6.1GHzでも7割ぐらいの確率でうまくいくと判断していたらしい。

倍率を55倍にした5.50GHz駆動。ちなみにVcoreは1.65V

CINEBENCHのスコアは1215

さらにアンコアクロックも上げる。空冷だと消費電力=発熱が上がるのであまり意味がないが、極冷なら可能だという

CINEBENCHのスコアは1226でさらにスコアアップ

ちなみにメモリはDDR4-3200のOCメモリをさらに3600MHzで駆動させている。またレイテンシはCL15だ

6.0GHz動作、Vcoreは1.77Vに

CPU-Zの画面。Vcoreの値が間違っているが、確かに6.0GHz動作

これでもCINEBENCH完走。スコアは1316

6.1GHz動作。Vcoreは1.88V。CPUにはある程度個体差があるが、今回使用したものはVcore1.90V以上に上げてもダメとのことで、1.88Vは限界に近い環境での動作となる

CPU-Zの画面。確かに6.1GHz動作

CINEBENCHも無事完走。スコアは1336。ちなみにCINEBENCHは単にクロックを挙げるだけでは、スコアが伸びにくく。ほかのパラメータも含めて調節すると、一気にスコアが上がるタイミングがあるという

最終的には1341までスコアは上昇した

2回目のトライの前には熱電対(マザーボードのセンサーはマイナス温度の検知ができないため、極冷では必須のアイテム)が壊れてしまい、再度ポッドの取り付けをやり直すハプニングもあったものの、おおむね問題なくOCデモが完了した。そこで、見学に来ていた人の中から「極冷をやってみたい人」を募り、実体験デモを行っていた。

会場で見ていた人の中から希望者を募って極冷の体験も。このとき、清水氏は自分のときよりも緊張気味に

今回使用した殻割済みのCore i7-6700K。Skylakeはパッケージ基盤が薄くなったので、壊れやすくなったのが難点だそうだ

液体窒素を口に含んで吹き出す。清水氏参加のOCイベントでは恒例となっている

ということで、おおむねスムーズに極冷OCデモが行われていた。「マザーボードが壊れたらリペアセンターに持ち込んで直してもらわないと」と冗談を飛ばしつつ、安定したOCが行えたマザーボードの安定度と、ツールレスで素早くOC設定の変更が行えるOC TOUCHの効果、そして清水氏のパーツチョイスとOCノウハウが発揮されたイベントだった。