離婚では得るお金と失うお金の両方がある

愛し合って結婚した2人でも、さまざまな理由で別の道を選ぶ。つまり、離婚をすることがあります。ただ、「もう一緒にいられない! 」と決別する前に、よく考えておきたいのがお金のこと。別れたものの、離婚後に生活が困窮してしまうというケースも多いのです。知っておきたい離婚にまつわるお金について、見ていきましょう。

離婚で発生するお金は大きく4つ

離婚することで発生するお金には、「財産分与」「慰謝料」「養育費」「年金分割」などがあります。

財産分与とは、結婚している間に夫婦で築いてきた財産について、名義に関わらず夫婦の共有財産と考え、それぞれの貢献度に応じて分配するものです。基本的には夫婦の共有財産を折半することになります。

ですが、離婚をした場合に夫婦のどちらかが生活に困窮するなどの事情があれば、その生計を補助する扶養的な目的で、「扶養的財産分与」がされることもあります。離婚時に経済力に乏しい専業主婦・主夫だったりする場合、「再就職が決まるでの間、家賃を半額負担する」などの取り決めが行われるケースもあります。

慰謝料は、不倫など相手に非がある場合に受け取れるお金です。慰謝料の相場は、不倫などの不貞行為で100万~500万円程度。DVや言葉・精神的暴力のモラル・ハラスメントで50万円~300万円程度。相手の年収、職業、年齢、婚姻期間などによっても金額は変わり、婚姻期間が長く、相手が高収入の職業に就いている場合などは、高額な慰謝料が認められやすくなります。

養育費は、20歳以下の子どもがいる場合に、子どもの衣食住や教育にかかる費用を請求するもの。離婚をしなかった場合と同水準の養育ができるように金額が決められますが、養育費の請求をしても、実際に支払われるのは20%未満とも言われています。離婚時に未成年の子どもがいる場合、その養育についてはよくよく協議が必要となりそうです。

相手の職業で年金も変わる

離婚に際し、これらのお金が受け取れる可能性がありますが、失うお金や新たに負担するお金が多いことも知っておくべきでしょう。もし、あなたが60歳未満の専業主婦・主夫で第3号被保険者ならば、社会保険料は免除されていますが、離婚すれば支払い義務が発生し、国民年金月額1万5,590円(2015年度)と国民健康保険料(自治体によって異なる)の支払い義務が発生します。

年金については、離婚時に夫婦の年金を分割できる「年金分割」制度がありますが、分割の対象となるのは、婚姻期間中に納めた厚生年金、または共済年金部分のみで、基礎年金である国民年金部分は対象外です。相手が自営業で国民年金しか納めていない場合は、分割できる年金はありません。

また、年金分割ができても、夫婦であればもらえる加給年金、相手が亡くなった際に支給される遺族年金などは、離婚すれば当然無効となります。遺族年金は、結婚前の相手の厚生年金も対象で非課税です。受給の際にあなたが65歳以上なら、自分の老齢基礎年金と併せて、相手の報酬比例部分の4分の3を受け取れます。離婚すれば、これらの年金を受け取る権利を失うことも覚えておきましょう。

離婚には精神的なダメージはもちろんですが、得るお金と失うお金の両方があり、経済的にもダメージが大きいと言えるでしょう。実際、離婚後のマネープランについて相談に来られる方も増えています。離婚が現実的になってきた場合、お金についての算段をしっかりつけてから、新生活に踏み出すことをオススメします。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

筆者プロフィール: 西塚 亜矢子(にしづか あやこ)

エフピーウーマン所属ファイナンシャル・プランナー。2007年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金との付き合い方を伝えることを通じ、「お金の不安がない、明るく前向きな未来を描く」お手伝いがしたいとの想いから、2015年にファイナンシャルプランナーに転身。楽しく分かりやすく、お金の知識を伝えるファイナンシャルプランナーを目指している。お金の知識が身につく初心者向けマネーセミナー受付中(受講料無料)。