一部で非正規版のWindows 7/8.1からWindows 10アップグレード可能とMicrosoftのOSG(Operating Systems Group)担当EVPであるTerry Myerson氏の発言が話題を集めているが、米CNETの記事によれば、アップグレード自体は可能ながらもアクティベーションされないことが明らかになった。このように多様な角度から話題を集めるWindows 10だが、今回もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告する。

ビルド10041は不安定?

OSに限らずソフトウェアの開発に付きまとうのは、新機能の追加や既存機能の改善、そして新たに発生するバグの修正である。MicrosoftのOSG Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏は、ビルド9926からビルド10041に至る改善点として、「タスクバーを画面上部に移動させた際に検索ボックスが動作しない点や、OSのブートメニューが誤って追加される点、『Photos』のサムネイル表示が正しく行われない点などを改善」したと、公式ブログで述べていた。

だが、ビルド10041を使っている方の大半が感じているように、本ビルドは不安定な部分が多い。第16回で述べた"Windowsストアアプリが再インストールできない問題"以外にも、"仮想デスクトップを作成するとタスクビューのサムネイルが黒くなる問題"、"サインイン画面でタッチキーボードが正しく動作しない問題"など枚挙に暇がない。いずれもAul氏が公式ブログで述べた既知の問題だが、本ビルドが「高速(Fast)リング」をターゲットにしていることを踏まえると致し方ない部分である。

確かに過去のWindowsがRTM(Release To Manufacturing version: 製造工程版)に達するまでの工程を思い出すと、Windows 10の開発に関して拙速な印象を持ってしまう方は少ないだろう。そもそもOSというソフトウェアのメジャーバージョンはビジネス的な側面が大きく、Windowsに至ってはWindows 95(バージョン4.0)の時点でOS名とバージョンの連動性を破棄してきたが、Windows 10では連動性を取り直している。

Windows 8(画面左)とWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041(画面右)のバージョンダイアログ。再びOS名とメジャーバージョンを連動させている

しかし、今年5月の開発者向けカンファレンスである「Build 2015」やリリースタイミングを今夏にしたことを踏まえると、開発スピードのさらなる加速を求められるのは明らかだ。そのためMicrosoftは、プレビューユーザーに門戸(もんど)を広げて多くのフィードバックを求めているのだろう。既にWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041をお使いのユーザーは「Windows Feedback」を使って意見や感想を送ってみてはいかがだろうか。

細かな変化が加わった「Settings」の設定項目

さて、ビルド9926とビルド10041のデスクトップを見比べると、バランスの再調整が目に入る。下図は両ビルドのデスクトップ解像度を同じくして「Settings」を起動。いずれもシステムフォントは「Yu Gothic UI」だ。一見するとフォントサイズが違うように見えるものの、実際はモダンUIベースのウィンドウ(アプリケーション)上のアイコン間隔を再調整したようだ。

ビルド9926の「Settings」を起動した状態では、全般的にシステムフォントサイズが小さいことが見て取れる。ちなみにフォントは「Yu Gothic UI」

こちらはビルド10041の同環境。フォントサイズというよりもモダンUIベースのウィンドウ(アプリケーション)はアイコンの間隔が広く取られていることが分かる

レジストリの内容を確認すると、システムフォント周りのエントリに差異はなく、エクスプローラーやダイアログで使われているフォントサイズやアイコンサイズはまったく同じである。以前も紹介したようにMicrosoftは、コントロールパネルから「Settings」へ設定項目を移行させ、スタートメニューもXAMLベースで再構築するように、以前からのWin32ベースのコードを少しずつ消し去るようだ。

その「Settings」を見ると、2つの変更点に気付かされる。検索ボックスの横にピン留めボタンが加わり、スライダーやスイッチといった各GUIパーツのデザイン変更が行われた。まずピン留めボタンは設定項目の中カテゴリ(「システム」であれば「ディスプレイ」や「通知や操作」など)ごとにピン留めすることが可能になる……と思われるが、エクスプローラーのナビゲーションウィンドウにもジャンプリストにも加わる形跡はない。

ビルド9926の「Settings」で「システム」を開いた状態。スライダーやスイッチに注目してほしい

ビルド10041の同環境。検索ボックスの横にピン留めボタンが加わり、各GUIパーツのデザインを変更している

レジストリの動作をSysinternalsの「Process Monitor」で監視すると、HKEYCURRENTUSER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\RecentDocsキーへの書き込みが確認できた。同キーは最近開いたドキュメント名を記録する箇所だが、単にフォルダーを開いてもRecentDocsキーへの書き込みは発生するため、ピン留めボタンとの関連性は薄い。そのため具体的な機能概要はMicrosoftのアナウンスを待つしかなさそうだ。なお、後者のGUIパーツはサインイン画面に並ぶアイコン形式変更と同じく、全体的に丸みを帯びたデザインに統一するためだと思われる。

「Process Monitor」でピン留めボタンをクリックした際の動作を検証したが、ウィンドウを参照する際に記録するRecentDocs\Folderキーへの書き込みがあるのみだった

それでは変更が加わった中カテゴリを順に確認しよう。まず「アプリと機能」はビルド9926における「アプリのサイズ」を改称し、デスクトップアプリのサイズも表示する機能を加えている。テキストボックスによるアプリケーション名の検索や、サイズ順/名前順/インストール日順による並び替え、ドライブベースの対象選択(既定は「すべてのドライブ」)も加わり、全体的な利便性が向上したのが特徴的だ。

ビルド9926における「システム\アプリのサイズ」。Windowsストアアプリのディスク占有率が確認できる

ビルド10041の「システム\通知と操作」。デスクトップアプリも加わり、サイズによる並び替えやドライブの指定、アプリケーション名による検索機能も用意した

「ドライブの指定」の既定は「すべてのドライブ」だが、異なるドライブにアプリケーションをインストールしている場合にも対応する。さらにアプリケーションをクリックして開くと、アンインストールも可能だ

さらに各アプリケーションを選択すると、<アンインストール>ボタンが現れ、アプリケーションのアンインストールも行える。「アプリと機能」はWindows 8.xでアプリケーションの一覧表示やランチャーの機能を持つ「アプリビュー」と、コントロールパネルの「プログラムと機能」を備えたと述べると分かりやすいだろう。

改称や機能変更はこれだけではない。次の「ウィンドウ化」は「マルチタスク」へ改称し、Aeroスナップといったアクションの有無を制御する設定項目が並ぶ。さらにウィンドウやタスクバー上のボタンの動作を変更する「追加のデスクトップ」が加わった。こちらは仮想デスクトップ使用時に、ウィンドウおよびタスクバー上のボタンをアクティブな状態に限って表示するか、各仮想デスクトップに表示するかという設定である。

ビルド9926の「システム\ウィンドウ化」。Aeroスナップに関する設定項目が並ぶ

ビルド10041の「システム\マルチタスク」。「ウィンドウ化」から「スナップ」に改称し、同様の設定が可能だ。さらに「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」ダイアログの<タスクバー>タブに並ぶ「複数のディスプレイ」セクションに似た項目が加わった

こちらは「追加のデスクトップ」の設定を「使用中のデスクトップのみ」に変更した状態。「デスクトップ1」で起動した「Settings」は「デスクトップ2」に現れず、ボタンも状態を示す下線は加わっていない

ちょうどWindows 8.xをマルチディスプレイ環境で使用する際に、「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」ダイアログの<タスクバー>タブに並ぶ「複数のディスプレイ」セクションに似た項目を加えた状態、と述べると分かりやすいだろう。ちなみにビルド10041の項目名から分かるように、Windows Vistaから登場し、Windows 8.xで一部機能を廃止した「Windows Aero」は機能として残るものの、表舞台から消えるようだ。

「マップ」は名称はそのままながらも、地図データの自動更新機能とネットワークが従量制課金だった場合の更新の有無が選択可能になっている。いずれも軽微な変更点のため、詳細な解説は割愛するが、相変わらず日本のオフライン地図データは用意されていない。さらに、ビルド9926では選択できた中国や台湾などは、ビルド10041では見当たらなかった。

ビルド9926の「システム\マップ」。オフライン地図データのダウンロードと更新機能のみだった

ビルド10041では、自動更新機能や従量制課金接続に関する設定項目が加わった。ただし、地図データを追加しても自動更新に関する設定項目はグレーアウトしたままである

ビルド10041の「システム\マップ」からアジア地区の地図追加を試みるが、ビルド9926であった中国や台湾がなくなっている

その他の「システム」の中カテゴリに関しては、「既定」に<リセット>ボタンと<アプリでの既定の設定>が加わり、「Windows Defender」の新設や「オプション機能」の廃止、「バージョン情報」には「関連する設定」という小カテゴリを加えて、<管理ツールの追加><デバイスマネージャー><システム情報>といったリンクを新たに用意している。

「システム\既定」は設定を推奨内容に戻す<リセット>ボタンと、アプリケーションベースで関連付けを変更する<アプリでの既定の設定>が加わった。後者はコントロールパネルの「既定のプログラム\既定のプログラムを設定する」を呼び出す

ビルド10041から加わった「システム\Windows Defender」。Windows 8.xの同アプリケーションに関する設定項目が並び、エンジンや定義ファイルのバージョン情報も確認できる

ビルド9926では存在した「システム\オプション機能」はビルド10041で廃止。これは「時刻と言語\地域と言語」で言語ごとのオプション設定と重複するためだ

個人的に便利に感じるのが「タブレットモード」へ新たに加わった「デバイスがモードを切り替えようとしたときの動作」という設定項目だ。ドロップダウンリストからメッセージ表示の有無や、タブレットモードの切り替え動作が選択できるため、ビルド9926をキーボード脱着可能なPCで使った経験をお持ちの方なら、その煩雑な通知から解放されたのは大きなポイントと言えるだろう。なお、Surface Proにビルド9926からビルド10041へアップグレードした環境の既定値は「メッセージを表示せず、常に現在のモードのままにする」だった。

ビルド10041から加わった「システム\タブレットモード」の設定項目。ドロップダウンリストからメッセージの有無やアクションを選択できる

この他にもビルド10041は多くの変更箇所を確認できるため、次回も「Settings」を中心に変更箇所を報告したい。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第17回) - ビルド10041で加わった音声合成エンジンや無線LAN機能
http://news.mynavi.jp/articles/2015/03/23/windows10/
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