新しく着任したEU(欧州連合)のヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ駐日大使が2月25日に初めて記者会見を開きました。

新しく着任したEU(欧州連合)のヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ駐日大使((C)日本記者クラブ)

EUと日本のFTA(自由貿易協定)、今年末までの締結には相当な努力が必要

EUと日本との関係について、ブドゥラ大使は、

「EUと日本は、すでに多くのテーマや感情を共有しているが、さらに良好な将来を築くために次の4つのキーワードを掲げたい」

「一つ目はConclude(妥結)だ。日・EU自由貿易協定・経済連携協定や戦略的パートナーシップ協定の締結など、将来に向けた政治的・経済的パートナーシップの連携が不可欠と言える。FTA(自由貿易協定)について安倍首相は、今年末までの締結に意欲的だが、望む条件やレベルで妥結するためには、相当な努力が必要であり、時間的にもまったなしと言える」

「二つ目はconsolidate(強化)だ。持続可能な経済成長に向けて、双方に努力の強化が求められる。また、経済や通商はもちろんのこと、そこから波及する分野や、外交や安全保障面においても協力関係を高め、バイラテラル(2国間)の関係を超え、国際社会におけるより深くて広い連携の強化が必要だ」

EUと日本の協力関係、"ガラスのカーテン"を打ち破る必要

「三つ目はcollaboration(協力)だ。戦略的な協力関係を促進し、真の課題を浮き彫りにしていくべきであろう。グローバルなパートナーとして、多国間の秩序を構築するための協力関係を築いていきたい。そのためには、もっと人的な交流も必要だ。お互いをよりよく知るために、各々の社会、政府、大学、メディアが協力し合い、ガラスのカーテンを打ち破る必要がある。ガラスのカーテンによって、お互いの存在や活動が見えているのに、積極的な協力体制を築けずにいるが、今、まさにそのカーテンを打ち破る時期が来ている」

「テロの脅威、中東・アフリカ情勢、高齢化、気候変動など、世界が直面する問題に、各々が対応するだけでは解決しない。日欧のコラボレーションが不可欠なのだ」

「四つ目はchallenge(チャレンジ)だ。これまでの伝統的な日欧関係の限界への挑戦など、古い型を破っていく必要がある。経済関係だけに留まらない戦略的な日欧のパートナーシップにチャレンジしていくことが重要だろう」

と述べました。

ウクライナ情勢、今後も打開に向けて動いていく

また、緊迫化するウクライナ情勢についてブドゥラ大使は、

「ウクライナ情勢が改善する気配は見えない。EUは停戦合意の遵守の重要性や、ロシアの軟化を求めてきた。ウクライナの主権や領土保全をベースとし、政治的な解決に向けて動いている。軍事活動はやめるべきであり、ロシアは冷戦のマインドセットを超えたマインドセットをすべきであろう。EUとロシアはパートナーにもなり得るなか、バランスのとれた対応と、政治的且つ経済的なミックス制裁や全てを網羅した措置が必要となってくる。今後も打開に向けて動いていく」

との見解を示しました。

さらに、アジア情勢については、

「これまで、中国と韓国の大使やEUにおいてアジアとの連携を担当してきた経験があるが、日中韓の安定した関係がなければ、将来の繁栄は難しい。経済共同体でもあるEUは、戦後直後に和解と復興のために設けられた。様々な歴史を持つ国がEUに所属している。欧州・EUが第二次世界大戦後に歩んできた平和・協調・統合の道筋は、アジア地域にとって参考になりうるのではないか」

との意見も付け加えました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。