JRグルーブのダイヤ大改正は毎年3月に実施され、その内容については前年12月20日前後に発表される慣例となっている。今月は北陸新幹線開業ダイヤと、第3セクター鉄道に移行する並行在来線のニュースが目立った。その一方で夜行列車廃止決定など、在来線の動きも大きかった。ここでは鉄道ファン視点で大きな動きを挙げてみた。

来年3月のダイヤ改正で、寝台特急「北斗星」は定期列車の運転を取りやめる

最後の寝台特急ブルートレイン「北斗星」廃止

2015年3月14日のJR全国ダイヤ改正に関するプレスリリースは12月19日、JRグループ各社から発表された。上野~札幌間の寝台特急「北斗星」は、かねてより報じられていた通り、定期列車としての運行終了が決定。車両の老朽化、北海道新幹線開業準備による青函トンネル区間のダイヤ見直しが理由だ。JR東日本の発表では、「今後も青函トンネル作業とのスケジュールを調整し、臨時列車として運行する」という。JR北海道は、「8月下旬頃まで」と時期を明らかにしている。

最後の寝台特急ブルートレイン「北斗星」の廃止はとても残念。臨時列車として運行される場合、定期運行と同じ編成だろうかという疑問も残る。上野~青森間を結ぶ「あけぼの」の臨時列車は編成が短縮され、B寝台の個室と開放寝台となり、A寝台個室「シングルデラックス」は連結されなかった。「北斗星」はA寝台1人用個室・2人用個室、B寝台1人用個室・2人用個室、4人用簡易個室、開放寝台という多様な編成で、食堂車やミニロビーも備えている。むしろ開放寝台車両のほうが少ないので個室は維持されるだろうけれど、食堂車の動向が気になる。

寝台特急「トワイライトエクスプレス」の最終運行日は3月12日に決定

来春の運行終了が発表されていた大阪~札幌間の寝台特急「トワイライトエクスプレス」も、最終運行日が大阪発・札幌発ともに2015年3月12日発、翌13日着と決まった。新ダイヤにまたがらずに身を引く形だ。

一方で、上野~札幌間の寝台特急「カシオペア」は存続。下り列車のJR北海道内での時刻を繰り下げて運行するという。青森~札幌間の夜行急行「はまなす」も、運休や時刻変更はあるものの存続される。ただし、これらの列車も、2016年の北海道新幹線新青森~新函館北斗間開業によって消滅することが噂されている。新幹線の工事や試運転の頻度によっては、その時期が繰り上がるかもしれない。体験するなら急いだほうがいい。

夜行列車の寂しいニュースが多い中で、285系電車の寝台特急「サンライズ」は順調のようだ。女性グループに人気の「サンライズ出雲」は、来年3月のダイヤ改正から伯備線備中高梁駅にも停車する。同駅は「天空の山城」と呼ばれる備中松山城の最寄り駅で、観光客の人気が高まっているという。日中の特急「やくも」も全列車停車している。

出発駅に戻ってくるクルーズトレインもいいけれど、寝台特急の良さは「さまざまな事情や用向きの客が、同じ列車で同じ目的地へ向かうこと」。そこにある「出会いや孤独の入り混じった感覚」も旅情のひとつ。鉄道の旅は少しずつ薄情になりつつある。

高速バスに負けた房総特急

2015年3月14日のダイヤ改正は、上野東京ライン開業や北陸新幹線に接続する特急列車のデビューなど、在来線にも華やかな話題が多かった。しかし一方で、役目を終えていく列車もある。ここでは大胆に整理される房総方面の特急列車に注目。

東京~鹿島神宮・銚子間(成田線経由、佐原駅から普通列車として運転)の特急「あやめ」2往復は廃止。総武本線経由で東京~銚子間を結ぶ特急「しおさい」も減便され、新宿駅乗入れも取りやめとなった。高速バスが日中10~30分おきに出発し、所要時間はほぼ同じで、料金は高速バスのほうが安いから、定期客以外はバスに流れてしまう。

特急「さざなみ」も減便され、運転区間が短縮される

内房線経由の特急「さざなみ」は、最大6往復から下り5本・上り3本に減便。館山行は廃止し、君津駅までの運転となる。外房線の特急「わかしお」も最大13往復から最大12往復に。臨時の特急「新宿さざなみ」「新宿わかしお」は存続される。わずかな減便ともいえるけれど、アクアライン経由の高速バスと所要時間が変わらず、運賃はバスのほうが1,000円以上も安い。休止される特急列車に代わって快速やホームライナーが設定されており、事実上の「値下げ対抗策」といえそうだ。もっとも、ライバルのバス便の中には、JR東日本グルーブのジェイアールバス関東の運行もある。

ジェイアールバス関東は東京駅~成田空港間の格安バス「THE アクセス成田」にも参入しており、その影響か、JR東日本の特急「成田エクスプレス」は早朝の1往復を休止し、日中に1往復を増やす。これはJR東日本とジェイアールバス関東のグループ内競争というより、旅客の多様化にともなう「列車の大量輸送」から「バスの頻繁運転」への切替えといえそうだ。列車で採算が取れないならバスで。地方のローカル線問題のような状態になってきた。少子高齢化や旅行者の多様化によって、この流れは他の列車にも及ぶかもしれない。

北陸新幹線開業で第3セクター5社が起動&再起動

北陸新幹線の開業ダイヤは各メディアで大きく報じられたので、ここでは新たに誕生する並行在来線の第3セクター鉄道に注目したい。石川県内はIRいしかわ鉄道、富山県内はあいの風とやま鉄道、新潟県内はえちごトキめき鉄道の3社が運行開始。長野県内はしなの鉄道が引き受け、北しなの線として開業する。どの路線も特急列車は北陸新幹線に譲り、ダイヤのゆとりを普通列車の見直しに当て、地域重視のダイヤとなった。

旧北陸本線区間の金沢~富山間の運行本数は現状維持。ただし、特急列車との退避がなくなるので所要時間が短縮される。快速列車も新設し、平日に金沢~富山~泊間で5本、富山~泊間に1本の運行となる。停車駅は金沢駅・石動駅・高岡駅・小杉駅・富山駅・滑川駅・魚津駅・黒部駅・入善駅・泊駅。これは現在の特急「はくたか」「サンダーバード」などとほぼ同じだ。現行特急並みの速度なら、普通運賃のみで利用できてサービスアップといえそうだ。

あいの風とやま鉄道とえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインは、自社線内で増発を実施し、両社をまたがる泊~糸魚川間の運行本数はほぼ現状維持。基本的にはえちごトキめき鉄道の列車が泊駅まで乗り入れ、同一ホームであいの風とやま鉄道の列車に乗り継げる。直江津駅では日本海ひすいラインと特急「しらゆき」との接続が図られる。

北越急行では新たに超快速列車「スノーラビット」がデビュー

旧信越本線区間は、えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインとしなの鉄道北しなの線に継承される。直通列車はないが、両線とも普通列車を増やし、妙高高原駅で同一ホーム乗換えとなる。

北しなの線では現行通り、JR飯山線の列車が長野駅まで乗り入れ、運行本数も維持される。また、北しなの線・しなの鉄道線の直通列車が3本設定される。妙高はねうまラインでは、新潟方面からの特急「しらゆき」や快速列車が乗り入れ、北しなの線は飯山線の観光列車「おいこっと」が乗り入れる。華やかな印象だ。

北陸新幹線開業の影響を受ける第3セクター鉄道といえば、北越急行「ほくほく線」も忘れてはいけない。来年3月のダイヤ改正で、ドル箱だった特急「はくたか」が消えるけれど、新たに超快速列車「スノーラビット」を1往復設定した。東京~直江津間で北陸新幹線経由と所要時間がほぼ同じで、運賃は安くなる。ほくほく線内の普通列車についても、特急「はくたか」の退避がなくなるため、所要時間が短縮される。

どの路線も、「長距離列車の呪縛」が解かれ、地域に貢献できるダイヤになった。収入面で不安は大きいけれど、運行本数を維持、あるいは増発できるよう頑張ってほしい。

大阪環状線に新型車両、ホームドア導入への布石!?

12月はダイヤ改正以外にも、車両関連の動きとして、JR東海371系が富士急行へ譲渡されるニュースや、大井川鐵道の「きかんしゃトーマス号」が来年も運行され、新たに「ジェームス号」が追加されるニュースなども興味深かった。その中でも注目は、大阪環状線の新型車両323系の発表だ。

JR西日本はこれまで、国鉄時代の電車をリフォームして長く使う傾向があった。しかし、老朽化対応にも限界がある。そこで広島地区の227系導入に続き、国鉄時代からの車両を置き変えることになった。大阪環状線では2013年度から全体的なリフォームに取り組んでおり、新型車両投入はその象徴的な施策となる。運行開始が楽しみだ。

ところで、新型車両323系は片側3扉タイプとなった。置換え対象となる103系・201系は4扉で、扉数の減少は乗降時間の増加につながりそう……と思うかもしれない。ただし、大阪環状線に乗り入れている阪和線、関西本線(大和路線)からの快速は片側3扉車だ。JR西日本としては、大阪環状線を片側3扉車に統一し、各ホームの乗車位置をそろえ、整列乗車や将来のホームドア導入に備えたいとの意図があるのだろう。なお、323系では混雑対策として、大阪駅での天満方先頭車の出入口を拡大するとのこと。

「東京駅開業100周年記念Suica」騒動 - 事故ととらえて対策を

12月20日、JR東日本は東京駅で「東京駅開業100周年記念Suica」を発売した。ところが、前夜から待機していた人、当日に始発列車で到着した人などで列が乱れ、大混乱となった。集まった人数は少なくとも9,000人を超えていたという。この騒動に対し、警察が東京駅に事態の収拾を要請し、「東京駅開業100周年記念Suica」の販売を打ち切り。怒った人々が駅員に詰め寄るなど騒ぎが拡大した。

記念Suica発売のプレスリリースには、「販売時間は22時まで」「在庫がある場合は丸の内南口みどりの窓口で翌日以降も販売」とある。つまり、JR東日本は記念Suicaの人気に関して、見込みを誤ってしまったと思われる。また、前日から待機する人があり、徹夜禁止の掲示や構内アナウンスを行ったにもかかわらず、前夜待機の人数が増えた。警察の指導で待機組を駅構内に誘導するなど、対応が一貫していなかったという。

この騒動では、JR東日本の不手際や「転売屋」の問題などが浮かび上がった。ネット上では、JR東日本や当日並んでいた人々に対する非難や擁護の論争が続いた。JR東日本は2日後の22日、記念Suicaに関して、「希望者全員に販売」「インターネットまたは郵送のみ受付」と発表。騒動は収束した。

当初、JR東日本は完売に自信がなかったように見える。それが、「在庫があれば翌日も販売」「1人3枚まで」と保険をかけたような案内文になった。自信がないならもとより受注販売でもよかったし、枚数限定ではなく、「これから1年間、東京駅で販売するSuicaはこのデザインになります」でもよかった。もっとも、こんなことは後からなんとでも言えることで、不毛な議論かもしれない。

筆者としては、上からの方針が定まらないまま苦情に対応せざるを得なかった現場の駅員さんを気の毒に思う。しかも駅員さんがボール紙で手作りした東京駅舎の模型が破壊されてしまったと聞き、心が痛んだ。

東京駅は2012年のプロジェクションマッピングでも、観客増加で打ち切りにするなど騒動を起こしている。その教訓が生かされていない。この部分に関しては責任を問われるべきだ。日本の鉄道は悲惨な事故の数々から、ATSや防護無線など、さまざまな対策を発明し、世界に誇る安全なシステムを築き上げた。今回の騒動は幸いにも死傷者はいなかったようだが、「繰り返してはいけない事故」としてとらえ、今後の教訓としてほしい。

記念Suicaをめぐり騒動となった12月20日は、東京駅開業100周年の記念の日でもあった

12月はこんな締めくくりで嫌だなあ……と思っていたところ、月末ギリギリになってJR山田線復旧決定のニュースが入ってきた。東日本大震災で線路が破壊され、地元が鉄道による復旧を強く要望していた釜石~宮古間について、JR東日本は復旧させた上で沿線自治体に譲渡、三陸鉄道への移管を提案していた。この提案を沿線12市町村が合意し、JR東日本に伝えたという。

JR東日本は同区間を復旧させた上で、さらに地元に支払う移管協力金として30億円を提供する。復旧後も地域活性化のために協力していくという。これについては、「JR東日本は頑張ったなあ」という印象だ。ただし、只見線など復旧を待つ区間はまだまだある。この際だから、記念Suicaをたくさん売って費用に充てたらいいのに、とさえ思う。