ワコムは、東京・新宿のベルサール新宿グランドにて、ペンタブレット「Intuos」を用いた初心者向けのフォトレタッチセミナー「Wacom Creative Seminar Vol.18」を開催した。

「Wacom Creative Seminar Vol.18」会場の様子

「Wacom Creative Seminar」は、同社がクリエイティブに携わる方々のために定期的に開催している無料のセミナー。第18回は、女性に人気のカメラ女子、やわらかで明るいトーンで撮影をし、写真関連書籍も多いゆるかわ写真家の川野恭子(きょん♪)氏(http://camera.na-watashi.com/)が登壇した。

セミナーの第一部は、川野さんが撮影時や普段心がけていることや、作品作りに対するスタンス、レタッチに対する考え方などを交え、作品についての解説が行われた。第二部は、ペンタブレット「Intuos」を用いた、初心者から始められるフォトレタッチの方法や実際にレタッチを行いながらの解説&レクチャーも行われ、これからカメラやフォトレタッチに挑戦したい人にピッタリの内容が展開された。ここでは、川野氏の作品を紹介しながら、セミナーの様子をお届けする。

撮影テーマは「野の花から、キッチンまで」

川野氏の作品

「私は元システムエンジニアだったこともあり、写真もロジカルに細かく組み立てながら撮っています」と自己紹介した川野氏。しかし、「ガチガチに撮影業界で活動していたわけではないこともあり、写真はもっと自由に考えて、見せたいところを見せられればいいんじゃないかと思っているので、白飛びとかも気にならないですし、無視しちゃいます(笑)」と、写真を撮る上での意識を語った。

説明をしながら「Intuos pen&touch」で実演を行う川野さん

そして、「想像をかきたてるような、感想をつけたくなるような写真を撮れたら素敵じゃないですか。自由に撮ることを楽しんでもらえればいいんじゃないかな思います」と続けた。実にざっくばらんというか、肩書通り、ご本人もまさに「ゆるかわ」。というか、ふわりとした印象だ。にこにこと話をする様子にいつのまにか引き込まれてしまう。

「日常を切り取ったような身近なものの写真が好きで、パステル調の写真をよく撮影する」という川野氏。彼女が撮影時に気をつけているのは「光と色」だという。「夕暮れの柔らかい光は暖かみや透明感、表情が出やすくていいですね。光や色に気をつけると、写真はもっとドラマチックに仕上がります」とも語った。日常を撮りながら現実感をなくしていく。それが川野さんの世界観のひとつでもある。

ゆるかわ写真のポイントは?

川野氏が手がける"ゆるかわ"な写真の雰囲気は、いったいどのように出されているのだろか。彼女は、「やわらかさを出す仕組みは、コントラストを下げる事でつくれます。色の差を埋めていくようなイメージですね」とその秘訣を解説した。

続けて、「やわらかい写真は画面の中に、明るいものと暗いものを混在させないことが絶対条件です。明るめに撮影しますが、その分、色を大切にしたいので、鮮やかさは上げてあげるといいかもしれません。光の向きは被写体そのものの色がしっかり出てくるので、横からあたるサイド光、もしくは順光で撮影することが多いですね」と、具体的なコツを次々と披露。「だれもが見ている景色から『ワタシにしか見えない景色』を見つけ出して撮る。そういう発見が、撮影を楽しむポイントかもしれません」。しっかりと光や彩度を計算しながらも、写真を楽しむことを忘れない姿勢が垣間見えた。

レタッチは「作品の完成度を高める」作業

「基本的には極力完全な状態でシャッターを切るので、なるべくレタッチをしないように撮るのが好き」という川野氏。その一方で、「展示やフォトブックなど作品の完成度を高めるためにレタッチは必要だと思います。一冊の中に何十枚の写真をおさめるわけですから、写真同士の色合いを合わせたりすることも重要。自分の作風を統一させる効果もあるので、そのためには活用してほしいと思います」と、そのメリットを強調した。

川野氏が作例として用いたレタッチ前の写真(左)、レタッチ後の写真(右)。上部に写り込んだ不要な植物をレタッチで消去したのが分かる

また、「細かい修正をする時には、やはりペンタブレットがあると圧倒的に便利ですね」と、レタッチツールとしてのペンタブレットの利便性にも言及。「レタッチにさえ慣れてしまえば、Intuosはとても使いやすいです。特に画面をなぞるような感覚で使えるIntuos pen&touchは、ペンに付いているボタンに機能を割り当てられるのが魅力ですね。初めてで何を選んでいいか分からない、という方はまずこの機種から始めてみるといいと思います」ともコメントした。

会場では川野さんの写真を使用し、「いらないものを消していく」、「写真を部分的に明るくする」、「部分的にぼかす」といった作業を、実際にIntuos pen&touchを用いて行う方法がレクチャーされた。ちなみに、気になる川野氏のカスタマイズは、「デフォルトではスクロールになっている部分を、Photoshopで使う場合に「command+Z」のショートカットに割り当てたりしています」とのことだ。

講演の合間には、ワコムによるペンタブレットを使うメリット解説の時間も。実はマウスに比べて手や腕の疲労が少ないなど、初めてペンタブレットを使うという参加者にもわかりやすい内容が展開された

会場にはプロフェッショナル向けペンタブレット「Intuos Pro」はもちろん、液晶ペンタブレット「Cintiq」シリーズなどのワコム製品のタッチ&トライができるコーナーが設置された

なお、2015年1月20日まで、Intuosを購入した人全員がアスカネットの「MY BOOK」を無料で作れる「Intuosで作った作品をフォトブックに残そう!」キャンペーンも実施中だ。これは自身のパソコンからオンラインで本が作れるサービス。自分で撮影した写真データを編集して入稿するとわずか10日で世界で一冊だけのフォトブックがつくれるので、Intuosでレタッチした作品で本を作ってみるのも楽しいだろう。

写真集が簡単につくれるアスカネットの「MY BOOK」のサンプルも展示(写真集サンプル:「ゆるかわ」風に撮影してみました)

中面の仕上がりも大変美しく、市販されている写真集と比べても遜色は感じない