写真集『みさおとふくまる』(伊原美代子・リトルモア刊)は、畑仕事に精を出すみさおおばあちゃんと、白猫・ふくまるの日常を写し取った一冊。まるで言葉が通じ合っているかのように、みさおおばあちゃんとふくまるが仲良く寄り添う姿が収められている。

写真集『みさおとふくまる』(伊原美代子・リトルモア刊) (C)伊原美代子

1人と1匹のふれあいや、四季折々の懐かしい風景の美しさが話題となり、昨年にはオール白黒写真の続刊『みさおとふくまる さようなら、こんにちは』(伊原美代子・同社刊)が刊行。今回は著者であり写真家の伊原美代子さんに、ふくまるとの出会いや写真を撮り始めたきっかけなどをうかがった。

みさおおばあちゃんとふくまるの「日常」とは?

――みさおおばあちゃんとふくまるをテーマに写真を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。

「写真学校に通っていたとき、練習台として祖母を撮影していました。ふくまるが生まれたのは、撮影を始めてから3年後くらいのこと。それから、一緒に撮るようになったのです。

祖母は写真を撮られることに慣れていなかったので、最初は私がカメラを構えると動きが止まっていました。でも、毎日のように私が撮影しているうちに、今では慣れてカメラを向けても普通に生活をしています」

――ふくまるとの出会いについて教えてください。

「納屋に住み着いていた野良猫が子猫を4匹産みました。その中の1匹がふくまるです。母親はトラ柄なのですが、子供たちはすべて白猫でした。

残念ながらほかの3匹は死んでしまって、生き残ったのはふくまるだけ。弱っていたので祖母が育てることになったのですが、親猫と引き離すことで食事をしなくなってしまい、一度親元に戻しました。しかし、目の病気などになっていることがわかり、再び家で飼うことになりまして、それからはずっと、祖母と一緒に暮らしています」

赤ちゃんのときのふくまる (C)伊原美代子

――ふくまるはすぐに人に慣れましたか?

「まだ赤ちゃんだったので、人間が怖いということはなかったようです。親猫は全くなつかず、鳥などを捕って外で生活していたんですけどね(笑)」。

――写真集では、みさおおばあちゃんとふくまるはいつも一緒ですが、やはり実生活でも常に一緒に行動していますか?

「だいたい一緒に居ます。畑へ行くときにはふくまるがくっついていくなど、行動を共にすることが多いですね。まるで夫婦のように寄り添っています」

――普段のふくまるは、どのように暮らしていますか?

「祖母と畑に行ったときには虫や鳥を追いかけていますが、あとの時間は寝ていることが多いです。ビニールハウスがお気に入りで、そこで寝ていることもあります。家でのお気に入りの場所は縁側です。

ふくまるはさみしがり屋なので、一人になると鳴いていますね。小鳥を飼っていたときには、祖母がいないとカゴの近くにいることも多かったです。

ふくまるは耳があまりよくないのですが、困った様子はなさそうですね。常にマイペースに暮らしています」

ふくまるが畑に行くときには、いつもみさおおばあちゃんと一緒 (C)伊原美代子

日常風景から感じられる「幸せ」

――最初の写真集である『みさおとふくまる』は、インターネットでも話題になりました。読者からの反響はいかがですか?

「自分のおばあちゃんを思い出す、飼い猫とふくまるの姿が重なるといった声を頂きました。近所の方たちも、ふくまるが有名になったことで『盗まれちゃいけない』と見張ってくれます(笑)」

――続刊の『みさおとふくまる さようなら、こんにちは』はすべてモノクロ写真で構成されていますよね。モノクロ写真にしようと思ったきっかけなどを教えていただけますか?

「もともとモノクロのネガで撮影していたんですよ。続刊は10年間ほど撮りためたものを1冊にまとめており、前作の『みさおとふくまる』の方が短期間で撮影しています。

ふくまるは10月で11歳になるのですが、続刊にはふくまるが子猫のときの写真からシニアになった最近の姿まで収められています。そのため、記録した時間の経過も感じていただけるのではないでしょうか。モノクロならではの光の美しさ等、写真としての細部も見ていただけるとうれしいですね」

――『みさおとふくまる さようなら、こんにちは』には、みさおおばあちゃんとふくまるがキスをしているような写真も収められていますよね。このような決定的瞬間を撮影するにはどのようなコツがあるのでしょうか?

「毎日必ず写真を撮ること。シャッターチャンスを狙うのではなく、ひたすら写真を撮ります。猫の動きは速いですし、『いまだ!』と思ったときにカメラを構えても間に合わないんですよね。猫のかわいい写真を撮りたいと思ったら、とにかく撮影することをおすすめします。私はあまりにも撮りすぎて、カメラのシャッターが壊れたこともありました」

みさおおばあちゃんとふくまるの日常が収められている (C)伊原美代子

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

「この作品のコンセプトは『日常』。これは祖母とふくまるだからというわけではありません。特に何かがあるわけではないけれど、毎日生きられることはとても有り難くて幸せなことだと思います。四季を通した暮らしを感じながら、写真をみてもらえたらうれしいですね。

写真集に登場する風景は珍しいと思われるかもしれませんが、特別なものを撮ったつもりはありません。いまでも、地方へ行けば日本によくある光景だと思います。そんな昔ながらの日本の風景を大切にしていきたいですね」

――ありがとうございました。

『みさおとふくまる さようなら、こんにちは』(伊原美代子・リトルモア刊) (C)伊原美代子

(C)伊原美代子

■伊原美代子
1981年生まれ。02年日本写真芸術専門学校報道学科卒業。樋口健二氏に師事。人々や海、風景、海女など、日本の風土をテーマにドキュメンタリー写真を撮り続けている。11年に写真集『みさおとふくまる』(リトルモア)、13年に『みさおとふくまる さようなら、こんにちは』(リトルモア)を刊行した。清里フォトアートミュージアムに作品が収蔵されている。 伊原さんの公式サイトはこちらから。