「アルバイト経験」は最大の武器として有効か

就活における自己PRでアルバイト経験について語るという就活生は多いようで、3月に行ったモニター調査でも、エントリーシートに記載したエピソード・題材で「アルバイトについて」という回答は54.9%に上っています。そこでアルバイト経験と内定率の関連について見てみることにします。定期的なアルバイトをしている就活生の内定率は45.6%(対全体比+2.1pt)で、していない就活生の内定率 39.5%(対全体比-4.0pt)とそれほど大きな差は出ませんでした。しかし、文理男女別で見ると、理系は男女ともアルバイトをしているかどうかで差が出ないのですが、文系は大きな差が出ています。

アルバイトや自由に使えるお金と内定率

※図掲載以外の回答数(n)
・自由に使えるお金「1万円未満(n=178)」

ここで視点を変え「就職活動における最大の武器」という質問で「アルバイト経験」と回答した就活生の内定率を見てみると 37.3%(対全体比-6.2%)とやや低くなっていました。就職活動において「アルバイト経験」を活用するのは良いのですが、「最大の武器」としては弱いので、それ以上の「武器」と言えるものが何かあったほうが良いようです。なお、アルバイトの種類や日数、アルバイト収入の多い・少ないはあまり内定率に影響しませんでした。

アルバイト収入といえば、ライフスタイル調査では、奨学金、仕送り、自由に使えるお金のアンケートも採りましたが、これらはほぼ内定率に影響していませんでした。唯一影響が出たのが、1カ月に自由に使えるお金が1万円未満の就活生の内定率で、28.7%(対全体比-14.8%)でした。これは就活にかけられるお金(4月のモニター調査によると4月の1カ月間の平均で26,570円)に影響が出たためだと考えられます。

スマホやSNSの活用…LINE派は内定率が高い!?

就活生のスマートフォンやSNS活用について、内定率に影響するものがあるか見ていきます。まず就活生の93.1%が持っているスマートフォンについて。スマートフォンを持っていない就活生の内定率は23.8%(対全体比-19.7pt)とかなり低くなっています。就活中「企業セミナーの予約、確認(82.6%)」「企業からのメッセージ確認(70.6%)」「面接の予約、確認(60.4%)」といった場面で活躍するスマートフォンは、まさに就職活動における必携ツールであると言えるでしょう。 

スマートフォン/ソーシャルメディア・SNSと内定率

※図掲載以外の回答数(n)
・SNSの活用「積極的に利用(n=109)」「あまり利用していない(n=454)」「利用する予定はない(n=494)」
・友人との主なコミュニケーションツール「LINE(n=1080)」「携帯メール(n=282)」

次にSNSの活用についてですが、就職活動における利用状況の4段階で見ると、「積極的に利用(内定率 46.8%)」でも「あまり利用していない(内定率 44.9%)」でも内定率に変わりはないのですが、「利用する予定はない」就活生は、内定率 37.5%(対全体比-6.0pt)とやや低くなっています。よく利用しているSNSでも、どのSNSを利用していてもそれほど内定率には影響はないのですが、「SNSは利用しない」就活生は内定率27.4%(対全体比-16.1pt)となりました。SNSは積極的に使って内定率に影響するものではありませんが、まったく使わない場合は影響が出るようです。なお、友人との主なコミュニケーションツールで1位(73.9%)となったLINEと、2位(15.2%)だった携帯メールでは、LINE派の内定率が 47.4%(対全体比+3.9pt)、携帯メール派の内定率は 30.1%(対全体比-13.4pt)と大きな差が出ました。

今回の結果について思うこと

  ここまで内定率に影響する就活生の特徴について見てきましたが、内定率100%または内定率0%となった項目は1つもありませんでした。よって、「スマートフォンを持っていないと内々定をもらえない」とか「スポーツ系のサークルに入れば内々定がもらえる」とかいったことで言えることは一つもないということになります。ただし就活生にとっては、「コミュニケーション能力を鍛える」とか、「アルバイト経験以外に就活の武器になるものを身に付ける」とか、「清潔感のあるファッションを心がける」といったことが、内々定獲得の早道になる可能性はあると言えるでしょう。

企業の採用担当者の方々の側から考えられることとしては、今回内定率を左右したような項目が何らかの形で自社の選考に影響している場合、それが評価基準として妥当であるか再考する余地はあるかもしれないということです。

例えば、職務内容にコミュニケーション能力がそれほど必要ない場合、受験者のコミュニケーション能力不足によりその良さを引き出せず、選考で落としてしまっているのであれば、改善の余地があると言えます。ファッションに関しても、入社後の指導で「もう少し気を使うよう」改善できればよいのなら、見た目の印象で優秀な人材を逃がしてしまうのは避けるべきでしょう。実際、「優(A)を獲得した割合」「授業に出席している時間」「予習・復習の時間」といった、その就活生のまじめさや専門能力の高さにつながりそうな項目の内定率への影響はそれほど大きくありませんでした。面接等での選考基準を見直す機会がありましたら、今回紹介した内容をぜひ参考にしていただければと思います。

(石田力)

  ※今回対象となる就活生の内定率について 今回対象となる就活生(=両方の調査に回答した学生)の4月末の内定率は、内定率調査の全体の値よりやや高い43.5%となっています。また文理男女別では、下の表の通りとなり、特に文系男子の内定率が高く出ています。本文中の「比較的内定率が高い」「比較的内定率が低い」という表現は、下図の数値を基準としています。

スマートフォン/ソーシャルメディア・SNSと内定率

※本文中に記載の割合(%)について 内定率以外の割合(%)は、特に注記がない限りライフスタイル調査からの引用によるものです。