世界保健機関(WHO)は毎年5月31日を世界禁煙デーと定めている。「喫煙をしないことが一般的な社会習慣となること」を目指し、世界規模の活動を行っているのだが、この世界禁煙デーとはどういったものなのか、我が国ではどのような取り組みがなされているのか、厚生労働省健康局がん対策・健康増進課たばこ対策専門官の野田博之氏に聞いた。

厚生労働省健康局がん対策・健康増進課たばこ対策専門官 野田博之氏

――まずは、日本における喫煙状況について教えて下さい。

「厚生労働省の実施している国民健康・栄養調査のデータを見てみますと、平成15年に現在習慣的に喫煙している人の割合が27.7%だったものが平成24年では20.7%となっています。男女別では、男性が平成15年では46.8%、平成24年では34.1%、女性は平成15年では11.3%、平成24年では9.0%となっています。このことから、喫煙者は減少傾向にあると言えます。

ですが、別の見方をすると女性の喫煙率の減少幅がやや少ないようにも思われます。今後の課題としては、たばこの女性への害についても周知を図っていくことが必要だと考えております」

――今後も継続した周知が必要ということなのですね。では、世界禁煙デーとはどういった取り組みなのでしょうか?

「世界保健機関(WHO)の総会において、昭和45年にたばこ対策に関する決議が採択され、たばこの健康被害への諸問題に対する本格的な取り組みが始まりました。平成元年には毎年5月31日を世界禁煙デーと定めて毎年スローガンを発表し、たばこによる害の周知、禁煙にむけた支援などの活動を世界規模で行っています。2014年はRaise taxes on tobacco(たばこに関する税金を上げよう)という標語が掲げられています」

――日本国内では、過去にはどういった取り組みをされているのでしょうか?

「日本では平成4年より、5月31日の世界禁煙デーからの1週間を禁煙週間と定め、能動喫煙や受動喫煙による健康被害などの周知に努めています。また、世界禁煙デー当日は記念イベントとして禁煙大使の任命、企業・団体によるブース出展などを行ってきました。一番重要なのは禁煙の支援や受動喫煙の害に対する情報の提供と啓発活動です。厚生労働省内でも建物内の全面禁煙はもちろん、たばこの自販機を一時停止とする、福利厚生の一環として専門家による禁煙カウンセリングを実施するなど、身近なところからも禁煙の推進を行っております」

――今年の取り組みについて教えて下さい。

「本年は「オールジャパンで、たばこの煙のない社会を」という禁煙週間のスローガンを設定しました。このオールジャパンという言葉には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてたばこ対策の機運を高めていこうという意味合いが込められています。

諸外国ではたばこに向けられる目は日本国内よりもかなり厳しいものがあります。特に受動喫煙の問題などは外国から日本を訪れるお客様にとっても重大な問題となっています。東京オリンピック・パラリンピックを成功させる一助となるよう、公共の場における受動喫煙の諸問題への啓発活動は今後より強く進めていく必要性を感じております。

2014年度世界禁煙デーのポスターには安藤美姫さんが起用された

また、本年は安藤美姫さんを禁煙大使として任命して、禁煙啓発のポスターの制作、配布といった活動を行っています。このポスターは各地の保健所や病院などを中心に配布しておりますが、厚生労働省のホームページ上からPDFファイルをダウンロードすることもできますし、お申し込みを頂けば、どなたにも郵送をしています。すでに現時点で去年を上回るお申し込みを頂いています。

5/31の世界禁煙デー当日には東京ミッドタウンにて記念イベントを開催します。禁煙デーの基本テーマであるたばこフリー(たばこの無い環境)について、広く国民に訴求することを目的に、安藤美姫さんの禁煙大使任命式、禁煙大使としての意気込みと今後の活動についてのトークショー、企業・団体ブースによる展示や禁煙相談、肺年齢チェックなどのイベントを行う予定です」

喫煙率が徐々に低下しているという点で見ると、日本の禁煙啓発は一定の成果を収めていると言えるだろう。ただ、今日も街の、オフィスの喫煙所では白煙が立ち上っている。野田氏が言うように、あの喫煙所の光景を東京オリンピックで来日した外国の皆さんが見たらどう思うだろうか。禁煙啓発は浸透してきているとはいえ、まだまだ道のりは長いとも言えそうだ。

煙草を止めたい、でもなかなか止めることができないという人も多いと思う。ニコチン依存症は治療が必要な「病気」だ。もし、煙草を止めたいと思っているのであれば、今は病院での禁煙外来、ドラッグストアで購入できる禁煙補助薬など、根性や意思の強さ以外で煙草を止める方法も出てきている。これを機会に、禁煙をしてみるというのも手かもしれない。あなたはどう思うだろうか?

(塩田純一)