ラーメン通の間ではたびたび話題にのぼる、隠れたラーメンの名所・山形県新庄市。ここで2002年に誕生した名物が「とりもつラーメン」だ。このラーメンが食べられる新庄・最上には、9店舗で構成している「愛をとりもつラーメンの会」なんてものも存在している。

「とりもつラーメン」とはどんな一品なのか!?(写真はイメージ)

このラーメンはもともと、地元で食されていた郷土料理の「とりもつ」と、昔風のあっさりラーメンが合体したオリジナルの一品。じわじわと中毒性を発揮してファンを増やしているというが、現地ではどう食されているのか。潜入レポートを敢行した。

ザ・中華そばに食感が楽しい鳥モツが

まず足を運んだのは元祖のひとつと言われる「一茶庵支店」だ。昭和25年(1950)頃から新庄駅前に店を構えており、とりもつラーメンは「一茶ラーメン」といって600円で提供している。ちなみにこちらは本店もあるが、本店にはとりもつラーメンはない。

「とりもつラーメン? 昔はウチしかやってなかったんだよ。で、2002年に開催された『やまがた花咲かフェア』のとき新庄名物を何か作らんとっていう話になって。それでとりもつラーメンを新庄名物で売り出すことにしたんだよ」と言うのは主人の元木敏雄さん。

元木さん自身も旅行の食べ歩きが好きだそうで、「やっぱり旅行に行くとご当地名物を食べたくなるもんでしょ。その気持ちが分かるから」と答えてくれた。

「一茶庵支店」の「一茶ラーメン」は600円

念願のとりもつラーメンのファーストインプレッションは、「こりゃまたトラッドなラーメンだ!」というものだった。麺は白くて中太ちぢれ、スープは上品な醤油ベース。トッピングは鳥モツの他、メンマとネギだけと超シンプルだ。ひと口食べると、予想を裏切らないトラッドな中華そば。そこに鳥モツをひと口。これもまたやさしい味だ。

念のため説明しておくと、鳥モツは鳥の内臓のこと。「砂肝やレバー、卵管、キンカン、ハート(心臓)などを醤油味でごった煮で煮込んでいる」とのことである。チキンならではのさっぱりとした味に、コリコリとかサクサクとかいろんな部位の食感が楽しめる。鳥モツとネギの相性が抜群で、そこに醤油味のスープが味をまとめている。さすが老舗の味わいである。

●information
一茶庵支店
新庄市鉄砲町10-3

みんなが好きな鳥モツを載せて

次に向かったのは、こちらも人気店の「急行食堂」だ。新庄駅の駅前にあって、いつも多くの観光客でにぎわっている。「とりもつラーメン」は550円で、食べてみるとラーメン自体のポテンシャルもさることながら、鳥モツにクセがない。これなら内臓系が苦手な女性でも食べられそうな味だ。

「とりもつラーメンは、山形新幹線が開業(1999年に山形~新庄間で延長開業)した頃から出しています。最初は内蔵をみんな入れていたんだけど、観光客の人の中には内臓の味がダメって人も結構いて。だから、今は好き嫌いの分かれるレバーとキンカンは外した鳥モツを作ってるんですよ」と、店主の本間誠一さん。

ちなみに、「鳥モツそのもの」がダメと言う人は「1,000人に1人くらいですかねアハハ」とのこと。レバーとキンカンを外したことにはもうひとつ理由があるそうで、「鮮度の持ちが悪いんですよね。特に夏場はね」。なるほど。

「急行食堂」の「とりもつラーメン」は550円

ちなみに本間さんによると、「とりもつラーメンは最初は料亭が出していて、それをラーメン店が継承したという話を聞いたことがあります」という。果たして真相やいかに?

●information
急行食堂
新庄市沖の町2-21

スタミナの塊のような一品

最後に訪れたのは「36年間、同じ味を守っている」と言う「末広」だ。ここのとりもつラーメンは、その名も「スタミナ」。なんとも精力が付きそうではないか! しかもお値段500円とリーズナブルなのもうれしい。

スープをすすればあっさりと奥深い味わいがすーっと身体に染み込む。文字通りスタミナの塊のような鳥モツは、内臓のいろんな部位が入ったごった煮だ。「味のこだわり? 普通に煮込んで作ってるだけだよ」と笑う御年なんと87歳の「隠居ばあちゃん」だった。

「末広」の「とりもつラーメン」は500円

●information
末広
新庄市末広町1-36

以上ざっと駆け足で紹介した山形県の「とりもつラーメン」。内臓系のグルメが好きな人も好きじゃない人も、ぜひ一度は口にしてほしい。個性ゆたかなご当地ラーメンなのである。

※記事中の情報・価格は2014年3月取材時のもの