秋田には、「油パン」の愛称で昔から親しまれているパンがある。呼び名だけ聞くと、ギトギト油ギッシュな重たいパンを想像してしまうが、実際のところは、あんこがたっぷり入ったほっこりやさしい味のパンである。

ぎっしり詰まったあんと薄皮の組み合わせが絶妙! 「アンドーナツ」(139円)

工場まで直接買いに来る客も!

製造しているのは、昭和38年(1963)創業の山口製菓店。地元・秋田の素材をふんだんに使用して、一つひとつの商品を丁寧に手作りし続けている名店だ。この店の看板商品ともいえるのが、「アンドーナツ」(通称:油パン)である。近年、人気番組「ごきげんよう」でおやつとして取り上げられたり、映画のワンシーンにも登場したりしたこともあり、人気に火がついたという。

「弊社は実店舗はなく工場なので、直接買いにいらっしゃるのは地元のお客様が多いのですが、全国各地のスーパーなどでお買い求めになられたお客様が、ご旅行の際に立ち寄ってくださることもありますね。

ありがたいことに、北は北海道から南は鹿児島まで、たくさんのお客様にいらしていただいています。地元スーパーでお買い上げくださったことをきっかけに、メールやハガキでご連絡くださる方もいます」。

教えてくれたのは、同社代表の山口嘉則さん。山口さんによると、同社の商品は先代の常松さんに倣い、今なお手作りにこだわっているという。

「アンドーナツ」ファンは北海道から鹿児島まで

手作りならではのやさしい味

「製造数は10年前に比べて2倍に増えていますが、あん包みも練りも全て手作業で行っているため、作業が深夜におよぶことはしょっちゅうです。繁忙時は、あん包みに約8時間、揚げに約10時間、あん練りに約10時間を要します。それと、原材料になるべく余計なものを使用しないことに関しても、先代の教えを守り続けています」。

ところで実はこのアンドーナツ、会社よりも古い歴史を持つのだという。

「先代がまだ若いころ、東京のお店で修業した際に作り方を覚えたそうです。修行時には既にお店に行列ができていたと聞いていますが、残念ながら現在はその店は存在せず、店名も覚えていないようです」。

50年以上前から行列ができるほどの味だったとは恐れ入る。たっぷりと愛情を込めて作っていることが、商品を口にした客の心にまでしっかり届いているという証拠である。

同社webサイトには、「手間とひまを惜しまず、食べた瞬間においしさと満足が広がる、そんな商品づくりを心がけております」(原文ママ)とのメッセージが記されているが、まさに有言実行といえよう。

時間のかかる揚げやあん練りなども、一つひとつ丹精込めて行っている

常松ファンからダイアリー更新の要望も!?

ちなみにwebサイトでは、「ほぼ日刊じぃ」なる常松さんのダイアリーも読むことができる。

「糸井さんの『ほぼ日』からヒントを得て(笑)、私の姉が制作したコンテンツです。お客様からご注文をいただく際、『ほぼ日刊じぃの更新楽しみにしています』とのコメントをいただくことも多く、隠れファンの多さに驚いています(笑)」。

常松さんのほのぼのダイアリー、気になる人はチェックしてみてほしい。もちろん、アンドーナツのチェックもお忘れなく。その他にも、養鶏農家から直接仕入れた比内地鶏の卵を使用した「とっとぷりん」など、見た目もかわいく心が和む商品が目白押し。仕事帰りや休日に、手作りの味に癒やされたい人は是非お試しあれ。

「キャラメルとっとぷりん」(234円)

「さつま芋とっとぷりん」(234円)

「とっとぷりん」(234円)

※記事中の情報・価格は2014年3月時のもの