サンディスクは5日、世界初となる容量128GBのmicroSDXCメモリーカードや、日本では再参入となるUSBメモリ製品を発表した。新製品の記者発表会も開催し、新製品の披露とともに、新ジャンル製品の予告を行った。発表された新製品の概要は、以下の別記事を参照いただきたい。

サンディスク、世界最大容量128GBを実現したmicroSDメモリーカード
サンディスク、ライト最大240MB/sのUSB 3.0対応128GB USBメモリなど

今回の発表会では、米SanDiskより、リテール製品マーケティングディレクターのスーザン・パーク氏に加え、バイスプレジデント リテール製品マーケティングおよび新興国市場担当のディネッシュ・バハール氏が来日。両氏とも熱のこもったプレゼンテーションを行った。まずはバハール氏が壇上に立ち、サンディスクの概要と新ジャンルの製品についてについて説明した。

米SanDiskのディネッシュ・バハール氏(写真左)。サンディスクは売り上げの約1割を開発研究資金として投入し、結果として5,000件近い特許を保有。会社としての収益の38%が、リテール分野で得られている(写真右)

リテール分野の売り上げは大まかに、USBメモリ、モバイル用microSDカード、イメージング用のSDカード/CFカードの3ジャンルで1/3ずつを占める。業界的に見てもナンバーワンの地位を保持しているとした

開発研究に多額の資金を投じているだけでなく、「サンディスクの社員全員が、常に人々とのかかわり方をテクノロジーで変えようと、日々考えているイノベーティブな会社」(バハール氏)であるとし、今回発表する製品群もすべて新たなイノベーションを起こすと述べて出席者の興味を引く。

また、イノベーションが生活を変える一例として、現在21歳になるというバハール氏のご子息について言及。「現在、息子は世界旅行に出かけていて、電話やメールでの連絡はないものの、息子が今どこで何を見ていたか、Instagramにアップロードされる写真で分かる」(バハール氏)という。確かにスマートフォンの普及がなければ、一般の人が写真を広く簡単に公開することは考えられなかった。

サンディスクはテクノロジーによって人々のかかわり方を変えようとしている。フラッシュメモリがなければ、デジタルカメラ、スマートフォン、Ultrabookも存在しえない

そしてサンディスクのイノベーションとして、シルエットで4つの製品群を見せた。

今回の発表を含め、4つの製品ジャンルをシルエットで紹介。右の2つはシルエットだけで分かるだろう

最初に説明したのは、「SanDisk Connect」と名付けられたブランドの、ワイヤレスフラッシュドライブとワイヤレスメディアドライブだ。前者の見た目は普通のUSBメモリだが、無線LAN(Wi-Fi)を内蔵。電源ボタンを押すと、モバイルデバイスなどからのWi-Fi接続によって、外部メモリとして利用できる。後者は、本体内蔵のフラッシュメモリに加えて、SDカードスロットを備えたモバイル/PC向けの外部ストレージだ。

Wi-Fi接続の外部ストレージ製品は、まだ日本に投入する作業が終了していないという(日本での発売は未定)。一方で、発表会の中で大きく取り上げ、体験コーナーも用意しているなど、発売意図が強く感じられる

ワイヤレスメディアドライブ(写真左)、ワイヤレスフラッシュドライブ(写真右)

32GB/64GBの内蔵メモリのほか、SDメモリーカードスロットを装備。無線LAN(Wi-Fi)はIEEE802.11b/g/n、内蔵バッテリでの連続駆動時間は最大8時間。同時接続のクライアント数は最大8台で、5台までのクライアントで同時ストリーミング再生が可能

こちらはワイヤレスフラッシュドライブ。Wi-Fi接続によって、スマートフォンなどのモバイル機器から外部ストレージとして利用できる

次の新製品はUSBメモリ。サンディスクは以前、USBメモリ製品を日本市場でも販売していたが、景気の減退(時期的には2008年のリーマン・ショックと重なる)、フラッシュメモリ製品の価格下落を受けて、発表会当日の時点(2014年3月5日)では日本国内で製品を出荷していない。しかし、サンディスクのブランドイメージに見合う高性能のUSBメモリ製品が開発できたため、市場の製品種類を拡充すべく、日本市場へ再投入となった。

サンディスクは一時期、日本市場のUSBメモリ製品から撤退(という表現は使っていないが)。ホームページの製品ジャンルからも、USBメモリが消えていた。今回、高速転送の高性能製品で日本市場へ再参入となる(写真左)。今回発表されたUSBメモリ製品は3種類。写真右の右上から、USB 3.0に対応した「エクストリーム プロ USB 3.0フラッシュメモリー(128GB)」と「エクストリーム USB 3.0フラッシュメモリー(16/32/64GB)」、USB 2.0だが超小型の「クルーザー フィット USBフラッシュメモリー(16/32/64GB)」だ

「エクストリーム プロ USB 3.0フラッシュメモリー」は最大読取り速度が260MB/秒、最大書込み速度が240MB/秒と、「USB接続ながらSSDに相当する速度」(ハバール氏)の高パフォーマンスとなっている。下位製品となる「エクストリーム USB 3.0フラッシュメモリー(16/32/64GB)」も、最大読込み速度なら245MB/秒と高速だ。また、今回発売するUSBメモリには、AES-128bit暗号でファイルを保護する「SanDisk Secure Accessソフトウェア」が同梱されており、安全性にも寄与するとした。

フラッグシップ製品となる「エクストリーム プロ USB 3.0フラッシュメモリー(128GB)」は、SSD並のスピードで写真や動画の高速転送をアピール

モデルさんが「エクストリーム プロ USB 3.0フラッシュメモリー」のモックアップを抱えて登場。バハール氏は実物を手に「実際にはこんなに大きくありません」(写真左)。USBメモリ製品には、ファイル暗号化ツール「SanDisk Secure Access V2.0」を同梱(写真右)

ついに出た、待ってた。128GBのmicroSDXCメモリーカード

ここで、イメージングとモバイルを担当するパーク氏にバトンタッチ。イメージング分野、おもにデジタルカメラは、撮像素子の高画素化とビデオ撮影への対応が進んでおり、よりよいメモリカードの条件として「大容量かつ高速度」を挙げた。サンディスクの具体的な製品としては、カメラと映像のイベント「CP+ 2014」で発表した世界最速の「サンディスク エクストリーム プロ SDHC/SDXC UHS-IIカード」を紹介した。

米SanDiskのスーザン・パーク氏(写真左)。イメージング部門(SDカードとCFカード)に関しては高速で大容量、そして「ビデオ記録への最適化」がキーワードとなっている(写真右)

2014年2月13日~16日に神奈川県・パシフィコ横浜で「CP+ 2014」にて、サンディスクは世界最速のSDカードを発表

一方、モバイル製品においては、スマートフォンの猛烈な普及によって、写真や動画、アプリケーションに必要とされるファイルサイズ(ストレージ容量)が急拡大。人々の第一欲求は「まず大容量」であるという。

そこで新たに投入されたのが、「サンディスク ウルトラ プラス microSDXC UHS-Iカード(128GB)」だ。ハイパフォーマンスの「エクストリーム」製品ではないが、現在市場で最大容量のmicroSDXCメモリーカードとなる。

待ち望んでいた人も多いであろう、128GBのmicroSDXCメモリーカード(写真左)。ここでもモデルさんがモックアップを持って登場。パーク氏が実物を持って並び、やはり「こんなに大きくありません」(写真右)

メモリカードを買う理由(写真左)。iPhoneなど一部を除いて、大抵のスマートフォンはmicroSDスロットを持っている。大きさに制限のあるmicroSDカード、ユーザーの第一欲求は「まず大容量」。NANDフラッシュの種類について「TLCかMLCか」という質問が飛んだが、「企業秘密」として明らかにされなかった。今のところ、サンディスクが持っている最大容量の64GbitメモリチップはTLCである…という点だけ補足しておく

さて、大容量を実現する技術革新となったのが、microSDカードサイズで利用できるNANDフラッシュメモリ(64Gbitチップ)×16枚を重ねる実装技術だ。従来は8枚までしか積層できなかったが、二倍になったことでトータル容量も倍増した。

最大のポイントといえるのは、あの薄い薄いmicroSDカードの厚みの中に、16枚のメモリチップ(とフラッシュメモリコントローラー)を詰め込んだところ。写真を見る限り、メモリチップを「くの字」に積み重ねてワイヤボンディングで配線したようだ

「サンディスクは2003年に128MBのmicroSDカードを投入しており、そこから約10年、128GBのmicroSDXC製品を発表することができた。10年で容量が1,000倍になった」(スーザン氏)と語った。

今回は純粋な新製品以外に、直近で発表された製品と将来の製品を含めて、サンディスクのコンシューマー製品をほぼ網羅した発表会となった。新製品となるUSBメモリは3月下旬、microSDXCカードは4月からの発売となり、これによってサンディスクのコンシューマー製品のラインナップは大幅に強化される。(なお、コンシューマーイメージングで今回語られていないCFカードに関しては、2013年11月に新製品発表会を開催済み。)

ということで、今回はすでに発表済みと未発売の製品を含めた4ジャンルと、かなり充実した内容だった。メモリカードを購入する多くのきっかけは「空き容量がなくなった」か「壊れた」なので、「壊れる前に通知」してくれるイノベーションに期待したい