第86回アカデミー賞の授賞式が3日(現地時間2日)、アメリカ・ロサンゼルスで行われ、映画『ゼロ・グラビティ』が監督賞をはじめ、最多7冠に輝いた。注目された作品賞は、ブラッド・ピットがプロデューサーとして参加した『それでも夜は明ける』が受賞。その『ゼロ・グラビティ』が早くも4月23日から「dビデオ powered by BeeTV(以下、dビデオ)」で配信をスタートする。

映画『ゼロ・グラビティ』 (C)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

同作は、最多10部門にノミネートされていたこともあって、作品賞のゆくえに注目が集まっていた。入社2年目、dビデオの宣伝担当・Y氏もその一人。「数ある賞の中でも、人々の"見たい"という欲求を最も刺激するのは作品賞。dビデオで配信が確定している唯一のアカデミー作品賞ノミネート作品だからこそ、ここはなんとしても受賞してもらわないと困るんです」と鼻息荒く語っていたY氏。しかし、授賞式当日。中継にかじりついて見守ったY氏には、"絶頂"と"転落"が待っていた。

「絶対、受賞しますよ。だって、10部門ですよ、10部門」と自信満々に語っていたY氏。どうせならば、身も心も"ゼロ・グラビティ"状態になって応援してもらおうと、アメリカから仕入れた宇宙服を進呈した。「なんですか! これは!?」と驚きつつ、「なかなか着心地いいですね」とお気に入りの様子。「よし、これなら僕の願いも届くと思います! ありがとうございます!」と意気揚々と中継に見入った。

宇宙服のサプライズプレゼントに驚くY氏

これで身も心もゼロ・グラビティ応援隊

最初に受賞したのは、視覚効果賞。続けて録音賞、音響編集賞、撮影賞、編集賞、作曲賞の受賞が決まると、Y氏は「ほら! ほら! 間違いないですもん」と余裕すら感じさせる口ぶり。そして、監督賞で同作の監督を務めたアルフォンソ・キュアロンの名が読み上げられると、「っしゃー!」とテンションは最高潮に。「これだけ受賞しているんだから、作品賞にたどりつかないわけがない」と予測していたが、主演女優賞を逃すと「あれ…」と雲行きが怪しくなる。結局、同賞は『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットが受賞。期待されたサンドラ・ブロックは惜しくも逃した。

「…まぁ、ケイト・ブランシェットなら仕方ありません。納得です」と冷静を装うY氏。そして、いよいよ作品賞の発表を迎えた。「ふぅ…緊張しますね」と祈るようなポーズで画面を凝視。緊張が張り詰める中、プレゼンターからの「12 Years a Slave(『それでも夜は明ける』)」というアナウンスが室内にむなしく響くと、ガッツポーズを決めに入っていたY氏は「めえぇぇぇー! うそ!? うそでしょ!?」と声を上げ、最後は「マジか…」と力なく膝から崩れ落ちた。

無重力空間を思わせるほど、水を打ったように静まり返った室内。Y氏は膝から崩れ落ちるどころか床に伏せてしまい、あおむけになりながら「………」と無言。中継の合間に時折聞こえる宇宙服(布)の擦れる音が、気まずさに拍車をかけた。このままそっとしておこう。そう思った時、突然Y氏がむくっと起き上がり、「ついて来てください」と部屋を飛び出した。

やっぱりそっとしておこうとも思ったが、自暴自棄になっていないか心配になったので様子を見に行くと、そこにはパソコンを開いて誰かと電話をするY氏の姿が。通話を切ると、「最多の7冠なんです。作品賞を受賞しようがしまいが、名作であることは間違いないんですから、僕が腐っていても仕方ありません」といつになく饒舌なY氏。どうやら、きちんと現実を受け止めた上で、自信をもってこの作品を宣伝する覚悟ができたようだ。

空を見上げながら、「今日は天気いいなぁ。宇宙からもきれいな青に見えるんですかね」とつぶやくY氏。おもむろに紙を取り出し、そこに"ゼロ・グラビティ アカデミー作品賞ならず!!"と書き上げた。そして、「dビデオのことは置いといて、まずはこの事実を皆さんに知ってもらわないと。ちょうど今日はこんな格好ですしね(笑)」と晴れ晴れとした笑顔を見せ、「こんな男が街中に出てくるぐらいの話題作だったということが世間に伝われば、宣伝担当としては本望です。本当にすばらしい作品なので、ぜひ皆さんに見てもらいたい」と引き締まった表情を見せた。

「では行きましょう!」と颯爽と街中に歩き出したY氏。心なしか猫背だった姿勢もピンと伸び、その立ち姿には頼もしさすら感じさせる。今度こそ、そっとしておこう。Y氏が遠くに見えなくなるまで、その後ろ姿を見届けた。

惜しくも作品賞とはならなかったものの、前評判通り最多7冠を飾った『ゼロ・グラビティ』。dビデオでは、ブルーレイ&DVDのリリース日と同日の4月23日から配信をスタートし、価格は400円(税抜き)。視聴可能期限は決済から30日間となり、初回の再生から48時間以内は何度でも視聴することができる。果たしてY氏の願いは人々に届くのか。引き続き、見守りたい。


dビデオでは個別課金の作品に加えて、見放題作品が充実。過去のアカデミー関連作をまとめた特集ページも展開されており、グラディエーター、シカゴなど名作が月額500円(税抜き)で見放題。