女優の松浦雅が、杏主演のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で、杏演じるめ以子の娘・ふ久役に抜てきされた。2012年6月の「第1回JUNONプロデュースガールズコンテスト」でグランプリを受賞し、華々しく芸能デビューを飾った松浦。しかし、この大役を射止めるまでには挫折と苦悩があったという。撮影の合間を縫って、松浦が取材に応じた。

1995年6月14日生まれ。兵庫県出身。身長160cm。O型。2012年6月に第1回JUNONプロデュースガールズコンテストでグランプリを受賞し、芸能界デビュー。これまで、西原理恵子演劇祭2013の『女の子ものがたり』(2013年7月)と『ぼくんち』(2013年8月)、『鬼切姫』(2013年11月)などの舞台に出演。2013年9月のミュージカル『セーラームーン』ではセーラーマーキュリー役を務めた。 撮影:大塚素久(SYASYA)

――まずは、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』のレギュラー出演決定、おめでとうございます。初のレギュラードラマが、NHKの朝ドラというのはなかなかすごいことですよね。

ありがとうございます。11月から撮影に入っています。最初にお話を頂いた時、私でいいのかなって(笑)。朝ドラは、もっといろんな役をやって下積みを築いた上でやらせていただくものだと思っていたので、すごくビックリしましたし、うれしかったです。

――初めて現場に入る時はどのような心境でしたか。

ちょうど、舞台『鬼切姫』の稽古中だったので、同時進行になることが自分としては不安だったんですが、杏さんやムロツヨシさんがすごく和ませてくださって。リラックスして撮影することができました。「楽しかったー!」って言って帰ったのを覚えています(笑)。その日以降も緊張感はしてるんですが、あまり構え過ぎたり自信をなくしたりしてもしょうがないので、堂々と演じることを心がけました。

――2013年は3本の舞台に出演しましたね。現場の空気感も、ドラマとは違うと思いますが。

舞台は稽古期間があって、1つのことをずっと繰り返す現場です。楽屋もなくて稽古場で一緒に過ごす時間が多いので割と共演者の方と仲良くなりやすいんですが、ドラマは楽屋があると聞いていたので仲良くなれなかったらどうしようと思っていました。でも、楽屋以外にロビーがあって、そこに皆さんいらっしゃるので、お話ができるんですよ。

――松浦さんが演じる「ふ久」はどのような役柄なのでしょうか。

物理にしか興味がないオタクです。それ以外に興味があるものがなくて…というか人間に興味がまったくないんです(笑)。人と接することも苦手なので、周囲ともなじみにくい存在。幼い頃から、「普通じゃない」と言われて育った女の子です。父の悠太郎(東出昌大)さんに似ている部分もありますが、好きなことに熱中するところは母のめ以子(杏)さんにそっくりで。物語が進むにつれて、その母と似ている部分が徐々に出てくるのかなと思います。

――そんな彼女が、弟・泰介の友人で野球部ピッチャーの諸岡弘士(中山義紘)に恋心を抱くわけですよね。

そうなんです! そこが見どころですね(笑)。

――2012年の「第1回JUNONプロデュースガールズコンテスト」でグランプリを受賞。デビューから1年半ほど経過しましたが、振り返ってみていかがですか。

はじめはうまくいかなくて、何にもなかったんです。オーディション受け続けて、落ち続けて…。そんな毎日が、ずっと続いていました。その時は、何にも努力してなかったんですよね。グランプリを受賞したから、勝手に売れるものだと安心している部分があって。そういう時期があってから、なんとかはいあがったというか…たくさん映画を見て作品に触れたりして、お芝居の勉強に対して意欲が出はじめた時に西原理恵子演劇祭の舞台が2本決まったんです。

そこでお芝居が好きという気持ちが、変わりました。それまでは、ただ「好き」とか、ただ「やりたい」とか、その程度だったのが、「これしかできるものがない」という状態になったんです。デビューしてすぐにつまずいて、どん底まで行ったので…その時期は時間がすぎるのも長く感じましたね。舞台が決まってから、オーディションにも受かるようになって、ここ最近は充実しています。

NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で松浦雅が演じるふ久

――早めに挫折を知ることは、ある意味で幸せなことですよね。

そんなに甘いものじゃないというのを自覚できたことと、自分が努力しないと何も動かないというのに気づけたことは貴重だったと思います。

すごい完璧な人がいたとして、でも全く努力していなかったら、みんなは見たいと思わないですよね。そのことを身をもって感じることができました。きっと、グランプリ後が順調だったら、ひねくれた人になってるんじゃないかなって(笑)。