セミナーに参加した為末大さん(左)と川口美喜子教授

みそ健康づくり委員会は11月22日、「みそ汁の価値、再発見」と題するセミナーをホテルオークラ東京にて開催した。当日は元陸上選手の為末大さんらを招いたトークショーや"日本一のみそ"を味わえる試食会などが行われた。詳細をレポートする。

みそには高い機能性がある

基調講演では大妻女子大学家政学部の川口美喜子教授が「栄養治療におけるみそ汁の価値~一杯のみそ汁が、ヒトの体と心の痛みを癒す~」と題して登壇。最近は減塩をうたったみそも多く販売されているが、川口教授は「減塩することはみそ汁やみその使用を減らすことではない」と持論を展開。みそには高い機能性があり、栄養的にも優れていることを指摘しながら、自身が考案した野菜だしをもとにした「みそスープ」のレシピを紹介。経腸栄養の入院患者88人にみそスープを投与したところ、71人に下痢の改善傾向が見られたなど、みそが持つ機能性について報告した。

講演する川口教授(左)はみそ汁は9割以上の人が好きというデータを紹介

オリンピックの選手村のみそ汁はおいしくない?

トークショーでは、川口教授と為末さんが対談した。2000年のシドニー、04年のアテネ、08年の北京と3度の五輪に参加した為末さんによると、アスリートが五輪期間中に過ごす選手村の食堂には、北京五輪からみそ汁がメニューとして出てきたという。だが、選手村のみそ汁は「あまりおいしくない」そうだ。それを見越してか、「マイみそ」を持ち込むアスリートも多いという。

「スポーツ選手は、最後の数日間で(これまでの調整が)失敗する可能性もある。だから、(競技の直前は)ふだん食べているものを食べる選手が多いですね。僕の場合は和食が最後に食べたくなる。炭水化物とか塩分を摂(と)りたくなる。おにぎりとみそ汁、漬物。簡易だけれど、日ごろ食べているものがいいですね」(為末さん)。

昨年に現役を引退した為末さんだが、2020年の東京五輪はやはり気になるよう。日本勢の活躍を問われると、日本のおいしいみそ汁が選手村に並ぶことを理由に「日本人には有利になるでしょうね」と、会場の笑いを誘った。

笑顔でトークショーを行う為末さん(左)と川口教授

トークショーの最中には、川口教授お手製のトマトのみそ汁が振舞われた

全国434のみその中から選ばれた6つのみそを試食!

最後は実際にみそのおいしさを知ってもらうための試食会が行われた。会場に用意された6種類のみそは、「第56回全国みそ鑑評会」において、日本全国から集まった434点のみその中から「農林水産大臣賞」を受賞した特筆の品だ。

出品されたみそは「甘みそ、甘口みそ、淡色系・辛口・漉(こ)しみそ、淡色系・辛口・粒みそ」などのように細かく12種類に区分される。そこから「味・色・香り・組成・その他~原料臭や異臭、異味がないこと」に関して審査員が採点。各種類で優秀なみそを選び、最後に上位みそを比較するという。

左から「むらた蔵 白みそ」「信州マルミヤみそ」「越後 久二 味噌屋常七」

左から「山高 粋熟」「極」「フンドーキン 生詰無添加麦」

今回、栄えある6品に選ばれたのは村田味噌「むらた蔵 白みそ」、宮入醸造「信州マルミヤみそ」、奈良橋醸造「越後 久二(久という字の下に二が入り、きうに) 味噌屋常七」、山高味噌「山高 粋熟」、イチビキ「極」、大分みそ協同組合「フンドーキン 生詰無添加麦」だ。

ふだんみそ汁を作らないアラサー独身男性記者は、この6種類を野菜スティックで食べたときにどれが一番自分に合うか食べ比べてみた。ちなみに記者は赤みそ文化で育ち、合わせみそを好む。

「むらた蔵 白みそ」(米/甘みそ)……甘みそだけあって、しっとり甘いみその味が口の中で広がりながら、最後に大豆のうまみを感じることができる。あっさりしていて、いりこのような香りもする。

「信州マルミヤみそ」(米/淡・辛・こし)……辛みそだけあって、塩味が結構強めだ。ただ、クセはなくすっきりとした感じの中にもコクを感じることができる。

「越後 久二 味噌屋常七」(米/淡赤・辛・粒)……やや塩味が強めだけれども、まろやかな味わい。かす漬けのような独特の風味を感じた。米の粒が残っているので、食感も楽しめる。

「山高 粋熟」(米/赤・辛・粒)……「越後 久二 味噌屋常七」と似たような味わいだが、それよりも塩味が強く、まろやかさ以上にコクが感じられた。

「極」(豆/赤だし)……口に入れた瞬間に豆の味と香りがしっかりと感じられた。一番慣れ親しんだ味わいだ。水分が少ないためしっかりとかむ必要があるが、そのかむ行為がより一層、豆の味わいを感じやすくさせてくれる。

「フンドーキン 生詰無添加麦」(麦/淡)……やや甘口で口当たりがまろやか。麦の形がそのまま残っているため、食感もぷちぷちと気持ちよく、麦独特の風味が感じられる。焼酎などの酒の肴(さかな)に合いそうな気がした。

6社のみそを食べ比べてみたら……

アラサー独身男性の口に一番合ったのは……

6種類の味を比較すると、最初に食べた「むらた蔵 白みそ」(米/甘みそ)が一番気に入った。まろやかな甘みと塩味が野菜本来の味を引き立ててくれて、何本でもスティックを食べられそうな気がした。だしで溶いてみそ汁にしたらまた違った結果になっただろうが、直接食べるには甘みそが自分の口に合った。

セミナー終了後、6種の中から気に入った3種のみそをいただけるとのことだったので、迷わずに「むらた蔵 白みそ」を選択。12月に各蔵元(くらもと)からのみそが編集部まで届くことになっているので、当面はこのみそで野菜をバリバリ食べようと思う。