東京ガスとパナソニックは、マンション向けの家庭用燃料電池「エネファーム」を共同で開発。東京ガスは2014年4月1日から販売を開始すると発表した。燃料電池ユニット、貯湯ユニット、バックアップ熱源機のすべてを、マンションのパイプシャフト内に設置できるマンション向け専用家庭用燃料電池であり、世界初の製品となる。
基本的には、新築マンション向けとしているが、「条件が整えば既存のマンションにも設置できる」(東京ガス 燃料電池事業推進部・穴水孝部長)という。
新製品は、戸建て住宅に比べて設置条件に制約があるマンション向けに開発したものであり、外装パネルの厚みを0.8mm(従来は0.6mm)に増加させたほか、機器本体の気密性を20m3/h以下へと高めたのが特徴。
また、排気などの吹き出し口を一カ所に集約することで、開放廊下側のパイプシャフト内に燃料電池を設置。マンションの設置基準に対応させるため、機器本体をアンカー固定する脚部の強度を向上させ、日本建築センター指針の1.0Gを確認するなどの耐震性を高めるとともに、高層階への設置を実現。給排気構成の変更や機器内部への風圧影響低減策の実施などにより、ガス3社基準の風速毎秒30mへの対応を確認するなど、強風時でも運転ができるように耐風性を高めた。
バックアップ熱源機に標準型とスリム型を用意しており、様々な設置パターンに対応。燃料電池ユニットと隣接して設置しても統一感のある排気部構成を実現した。
また、視認性が高いカラーリモコンも標準装備している。
パナソニック アプライアンス社スマートエネルギーシステム事業部・清水俊克理事は、「2012年度の新築住宅着工戸数は、日本全体では3分の1が集合住宅となっているが、東京都内では3分の2が集合住宅であり、神奈川県内でも約50%が集合住宅。都市部での燃料電池の普及拡大には、マンションへの設置対応が不可欠。また、マンションは戸建住宅と比べて一戸あたりの太陽光パネルの搭載可能容量が小さいため、エネファームに期待する声があった。だが、スペースや設置上の制約が多く、戸建て向けモデルをそのまま設置するのは困難であり、マンション専用機の製品化が求められていた。今回の製品はそうした課題を解決できるものになる」と位置づけた。
パナソニックの試算によると、マンション向けエネファームを導入すると、3人家族の場合、ガス急湯暖房機を使用しているのに比べて、年間約1トンのCO2排出量を削減。さらに年間で3~4万円の光熱費を削減できるという。
今回のマンション向け燃料電池により、東京ガスでは2014年度には500台の受注を計画している。すでに総合地所、東急不動産が、それぞれ自社分譲マンションにおいて採用を決定。2物件で456戸に導入される予定だ。
東京ガスでは、2009年5月にエネファームの一般販売を開始しており、2013年9月までに2万4,000台を販売。それを含めてパナソニック全体では3万1,000台を出荷しているという。
東京ガス 燃料電池事業推進部・穴水孝部長は、「今年6月に閣議決定した日本再興戦略では、2020年までに140万台のエネファームの普及を目指しており、2030年には全世帯の約1割を占める530万台の導入目標が掲げられている。東京ガスでは2020年までに30万台のストック(累計出荷)を目指している。そのためにはマンション向けの製品が重要であり、今回の製品により、販売に弾みがつく」とした。