2013年10月17日、Microsoftは予定どおりWindowsストア経由でWindows 8.1アップデートの配布を開始した。本稿が掲載される頃には公開から4日も経つため、多くのWindows 8ユーザーがWindows 8.1へ移行していることだろう。だが、OS(オペレーティングシステム)のアップデートは必ずしも順風満帆とは行かず、開発したMicrosoftも予想し得ないトラブルも発生するものだ。

奇しくもiPhoneなどのOSとしてリリースされたiOS 7と、同じく新発売されたiPhone 5sの組み合わせで、青画面によるシステムクラッシュ「BSoD(Blue Screen Of Death)」が話題になっている。このように必ずしもイニシャライズリリース時で、すべてのバグを取り払うことはできない。筆者の環境では検証に至らない軽微な誤動作を除けばWindows 8.1は安定している。しかし、サードパーティーベンダーの対応は決して迅速とはいえず、筆者が普段から使用しているデバイスのなかには起動しないものもあった。メーカーのWebページを確認すると、現行モデルは数日内にリリースが予定されていたが、筆者が利用しているのは発売終了モデルのため、対応デバイスドライバーの提供は11月中を予定しているとのこと。

Windows 8のデバイスドライバーの基本的な構造はWindows 8.1にも引き継がれているので、一部修正で事足りるはずだが、同スキャナーは常駐プログラムをフックとして利用するタイプ。このプログラムがWindows 8.1上では誤動作し、使えない状態。本件はレアケースと思われるが、それでも各種事情を伴い、Windows 8.1に対するハードウェアベンダーの対応に差が生じている印象を覚えるのは筆者だけではないだろう。各社には早期対応を期待しつつ、今週はWindows 8からWindows 8.1へアップデートする際に注意しておきたいポイントや、トラブル発生時の対応、そしてGA(General Availability version:一般提供版)版となったWindows 8.1の印象をまとめたレポートをお送りする。

"Rapid Release"の必要性とWindows 8.1の注意点

2012年10月26日にWindows 8をリリースし、約1年でアップデート版となるWindows 8.1を2013年10月17日にリリースしたMicrosoft。過去にない早急なアップデートは、さまざまな憶測を生み出しているが、本を正せば開発者向けカンファレンス「Build 2013」で同社CEO(最高経営責任者)であるSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏の発言「Rapid Release(ラピッド・リリース)」が始まりだ(図01)。

図01 Build 2013のキーノートで講演を行うSteve Ballmer氏

同キーワードは文字どおり"(Windows OSを短い間隔で)急速にリリース"することを指す。数年に1回という過去のリリースタイミングでは、目まぐるしく進化するIT技術やユーザーニーズに応答できないため、大幅なアップグレードを目指すのではなく、その場に応じて適切な改善と機能追加を行うというものだ。

本レポートでも何度か述べてきたように昨今のトレンドは、デスクトップ/ノート型といった従来のパーソナルコンピューターから、タブレットに移りつつある。UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)が大きく異なるコンピューターに対し、既存の環境と現在および将来のOSシェア(市場占有率)を維持するための回答が、Windows 8およびWindows 8.1なのだろう。

この対応は決して性急なものではない。例えば他社製OSを見渡せば、OS Xはバージョン10.6 Snow Leopard(スノーレパード)以降、ほぼ1年間隔でOSをアップデートしている。スマートフォン/タブレット向けOSであるiOSやAndroidもほぼ同様、もしくはより短い間隔のアップデートリリースを実行中だ。Windows 8.1がリリースされたばかりだが、過去の例を見ると現行OSをリリースした直後から、次期OSの開発が始まるのがMicrosoftの習わしだ(図02)。

図02 今年秋頃にリリースされる予定のOS X 10.9 Mavericks(マーベリックス 同社Webサイトより)

既にMicrosoftウォッチャーとして著名なMary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー)氏が、9月末に「ZDNet」へ寄稿した記事では、"2014年春に次期アップデートが予定されている"と述べている。さらに続報記事によると、"リリーススケジュールを見直し、2014年秋、もしくは2015年春に次期アップデートがリリースされる"という。

確かにコンピューターを利用する際の基盤となるOSが、頻繁かつ大規模の更新を行うことに違和感を覚える方も少なくないだろう。しかし、前述したようにIT技術の進化スピードは加速し、1990年代初頭は好事家や一部の企業だけが利用していたインターネット環境も、現在は生活インフラ(インフラストラクチャー)に数えられるようになった。このような実状に対応すると同時に他社製OSと競い合うMicrosoftとしては、他の選択肢が用意されていないのである。

そのWindows 8.1だが、Windows 8ユーザーはWindowsストア経由で無償アップデートが可能。Windows 7やWindows XPなどのユーザーは家電量販店やオンラインショップでパッケージ版を購入するか、Microsoft Storeなどでダウンロード版を購入することで、アップデートが可能になる。ただし、Windows 7はアップグレードインストールが可能ながらも、Windows Vista/XPは新規インストールしか用意されていない(図03)。

図03 Microsoft StoreによるWindows 8.1の販売ページ

図04はWindows 8以前からWindows 8.1へのアップデート/アップグレードパスを表にまとめたものだが、いくつか注意点がある。「*1」のWindows 8からWindows 8.1へのアップデート時は、すべてのデスクトップアプリ情報が保持されるわけではないので注意が必要だ。Microsoftもすべてのアプリケーションを検証していないらしく、日本マイクロソフトの説明によれば"大半のアプリ"という表現を用いている。筆者の場合は一部のオンラインソフトを再インストールしなければならなかった(図04)。

図04 Windows 8.1へのアップデート/アップグレードパス

また、「*2」のWindows 7からWindows 8.1にアップグレードインストールする際、各アプリケーションの保持するためには、一度Windows 8にアップグレードインストールしなければならない。わざわざWindows 8のライセンスを購入しなければならないことを踏まえると、デスクトップアプリの保持はあきらめた方がいいだろう。さらにOffice 2010以前をお使いの場合、再インストールおよびアクティベーション操作が必要となる。Office 2013の場合もMicrosoftアカウントによる再サインインを求められるという。

筆者が試した限りでは、任意のOffice 2013アプリを起動すると、「Officeの更新プログラムをインストールしています」というメッセージと共にビジー状態となってしまった。更新完了後は再サインインなどは求められなかったが、更新プログラムはWindows Updateにも列挙されなかったので、時間的余裕がある時にあらかじめ更新することをお勧めする。また、プレインストール版Office 2013の場合は再インストールおよび再アクティベーション操作が必要だという(図05)。

図05 Windows 8.1アップデート後のOffice 2013利用時は更新プログラムのインストールが必要だった