炬火(きょか)セレモニーを行う、左から佐藤選手、猪瀬都知事、清水選手

“障害のある方もない方も、一緒にスポーツを楽しもう”というコンセプトに基づいたイベント「ユニバーサル・ジョグ in 新宿」が10月10日、都庁周辺にて行われ、猪瀬直樹都知事や陸上の佐藤真海選手、ボクシングの清水聡選手、タレントのAKB48らが一般者とともにジョギングを行った。詳細をレポートする。

「国民体育大会」と「全国障害者スポーツ大会」をつなぐ

同イベントは、10月8日まで行われていた「国民体育大会」と、10月12日より開催される「全国障害者スポーツ大会」をつなぐための取り組みの一つとして行われたもの。猪瀬直樹都知事やアスリートの佐藤真海選手、清水聡選手、タレントのAKB48、トータルテンボスさん、アントキの猪木さん、なすびさんが一般ランナーとまじって走り、スポーツのすばらしさや楽しさを発信していくという試みだ。

ジョギングに先立ち、炬火(きょか)セレモニーが行われ、清水選手から猪瀬都知事、佐藤選手へと順番にトーチに火が灯(とも)された。

夜風に当たりながら、都庁周りを楽しくジョギング

そして、いよいよジョギングスタート。著名人とともに走るのは、総勢571人(ハンディキャップをもたれているランナー18人含む)の一般ランナー。人数が多いため、3グループに分けて東京都庁周辺を、皆でジョギング。都庁と東京都議会議事堂の間の道路付近に設けられた、特設会場をスタート及びゴール地点とし、都庁南、議事堂南、議事堂北、都庁北をぐるりと回るコースで、ランナーは各々の体力に合わせて1~3周のジョギングをした。

夜の19時スタートだったということもあり、当日は夜風が気持ちよく、ランナーの多くは心地よい汗をかきながら、知人・友人や並走する見知らぬランナーたちとの会話を楽しんでいた。そのジョギングを楽しんでいる姿は、ハンディキャップのある、なしに関わらず「ユニバーサル」だった。

皆でジョギングを楽しむ

清水選手「誰も気づいてない」、佐藤選手「この輪が広がれば」

ジョギングを終えた著名人は、スタート・ゴール前にある広場でトークショーを行った。

ロンドン五輪ボクシングバンタム級銅メダリストの清水選手は、毎日の練習で相当の走り込みをしているだけあり、3周のジョギングを終えても息一つ切らしていない様子。「やっぱり、スポーツの秋ですね。走りやすかった」と話した清水選手だが、肝腎の他のランナーとの触れ合いに関しては「3周走ったけれど、話したのは一人だけです。誰も僕に気づいてなかったのでは……」と苦笑いを浮かべていた。

アテネ、北京、ロンドンのパラリンピックに出場した陸上の佐藤選手は「子供たちと一緒にスタートできたのが良かった。こういう輪がもっと広がっていけば。東京から発信して、日本全体へと広がっていけばいい」と話した。

AKB山内さん「人の温かさを感じた」、北原さん「家族で参加、素敵」

走り終えたタレント陣も、トークでジョギングを終えた参加者を盛り上げた。

総勢5人が参加したAKB48の北原里英さんは「家族で参加できるイベントは素敵ですね」と気持ちよさそうに語った。北原さんと一緒に第2グループで走った山内鈴蘭さんは「人の温かさを感じました」と、大勢のランナーたちと走れたことに感激の面持ちだった。

トータルテンボスの大村朋宏さんは「夜の新宿のビル郡を走るのは、相当気持ちよかった。フルマラソンも夜にやったらいいのに」と気持ちよさそうに汗をぬぐい、相方の藤田憲右さんは「今日の楽しさ、ハンパねぇ!」と、自身の持ちネタとかけて、感想を語った。

都知事の「ユニバーサル宣言」、プロジェクションマッピングで終演

そして、イベントはいよいよフィナーレへ。特設会場で猪瀬都知事が「東京ユニバーサルスポーツ宣言」を行った。「スポーツには力がある」と切り出した猪瀬都知事は、「スポーツを楽しみ、連帯の輪を広げることで、心のバリアフリー」が実現できる社会へ向けてまい進していくことを誓った。

そして締めくくりとして、ユニバーサルスポーツをイメージさせる、あでやかなプロジェクションマッピングを東京都議会議事堂の壁に施すと、会場に居合わせた参加者らは、その美しさに圧倒されていた。

佐藤選手「このムーブメントが長く続けば」

10月12日から14日まで、「全国障害者スポーツ大会」が開催される。折りしも、2020年夏季の東京オリンピック、パラリンピック開催が決まったばかり。イベント終了後、佐藤選手は「このムーブメントが今後も長く続けばいいなと思います。今回は(東京への)招致が決まった後の最初の大会。2020年に向けての第一歩となれば」と振り返った。

そして、自身の思いを集約した最後のコメントがとても印象的だった。

「『ユニバーサル・ジョグ』という言い方がなくなる(ぐらい、分け隔てなくスポーツを楽しめる)のが理想。2020年には『そんな言葉があったね』というくらいになっていれば」。