アルゼンチンで開催された第125次IOC総会にて、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催地が東京に決定した。招致活動を知らせるポスターなどで、色鮮やかな花輪のようなロゴマークを目にしてきた人も多いと思うが、あのロゴを誰が、どのようなプロセスでデザインしたのかご存じだろうか? 本稿では、招致ロゴの図案の解説と携わった著名クリエイターたち、そしてデザインにこめられた思いに迫っていく。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 招致ロゴ

五輪をふたたび日本に迎えるための"桜のリース"

この招致ロゴは、2011年11月に発表されたもの。日本を象徴する花である「桜」がモチーフで、一枚一枚の花びらが集まって、世界をつなぐひとつの大きな輪となっているような"桜のリース"の図案となっている。日本では主にクリスマスの装飾として知られているリースには「再び戻る」という意味があり、この桜のリースには「日本で1964年以来のオリンピック・パラリンピックを開催し、スポーツを通じてこの国に勇気と活気を取り戻したい」という強い願いがこめられているという。

また、ロゴの配色には、五輪を象徴する色である赤、青、黄、緑に加え、東京を表す色「江戸むらさき」を使用。ちなみに、この色は、東京スカイツリーの2パターンある通常のライティングデザインのひとつ「雅」のテーマカラーともなっている。

佐藤可士和に選ばれ、榮久庵憲司に監修された公募ロゴ

このロゴは、数多くの著名クリエイターに選ばれ、育まれる形で実現した公募作品だ。ヤンマーユニクロおよびGUセブンイレブンなどのブランドを手がけてきたアートディレクターの佐藤可士和、そして人気ご当地キャラ「くまモン」の生みの親である放送作家・脚本家の小山薫堂が参加した審査委員会により選ばれたのは、女子美術大学4年(当時)の島峰藍さんの作品だった。

また、このロゴの特異な点は、選出後にブラッシュアップが加えられた点にある。GKグラフィックス・久田邦夫によるアートディレクション、そしてGKデザイングループの創設者である榮久庵憲司による監修の下、島峰さん本人が最終形のデザインを制作したという。GKといえば、戦後の復興期より60年にわたり、日本のデザインを牽引してきた存在。そんな著名なデザイン集団と前途ある学生との協業によって作られたロゴのデザインには、歴史を次代へ繋ぐ意思がこめられているように思われる。

なお、東京五輪の実現のために掲げられてきたこのロゴは、あくまで「招致」を象徴するもの。このたび東京での五輪開催が正式決定したため、街中で目にすることができるのは、大会のエンブレムが発表されるまでの間となりそうだ。デザインを手がけた島峰さんは、自身のロゴが選ばれた際のコメントとして、「今回のグランプリ受賞は非常に嬉しい出来事ではあるが、自分の作品の受賞以上に東京へのオリンピック・パラリンピック招致の実現を願っていた」と語っている。この機会に、彼女や著名デザイナーたちの思いがこめられた招致ロゴを、あらためて見てみてほしい。