サンライズのアニメーション作品を一挙上映するイベント「サンライズフェスティバル2013星彩」が、8月10日よりテアトル新宿、新宿ピカデリー、舞浜アンフィアシアターにて開催された。これら3会場ではサンライズが誇る名作や最新作のセレクション上映、一挙上映が行われており、その数は20作品以上。その中で、トークショー「宇宙世紀のガンダムを語る」が8月17日、東京・新宿ピカデリーにて行われた。
トークショーには、ネェル・アーガマをはじめ、『機動戦士ガンダムZZ』の色が濃い目に現れている『機動戦士ガンダムUC』のストーリーを担当する福井晴敏氏、『機動戦士Zガンダム』、『ガンダムZZ』のプロデューサーでもあった現サンライズ社長の内田健二氏、そして『ガンダムUC』プロデューサーの小形尚弘氏の3名が登場。司会は、アニメ評論家・藤津亮太氏が務め、『ZZ』のイベントらしい、破天荒なネタが飛び出すトークショーとなった。
ZZをなかったことにはできない
まずは司会の藤津氏と福井氏、小形氏が登場し、『ガンダムUC』と『ガンダムZZ』の繋がりについてのトークが始まる。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の後でありながら『ZZ』の設定を引き継いでいるのはなぜなのか? という藤津氏の質問に、福井氏はこう返す。
福井氏:例えば日本史が好きだ、という場合に信長は好きだけど、秀吉は嫌いなので秀吉はナシの方向で次は家康、というのはありえないじゃないですか。だから『ZZ』がどうこうじゃない。事実としてそこにあるんだからしょうがない。
藤津氏:しょうがない(笑)。
福井氏:みんないい大人なんだから、好き嫌いしないで食べなきゃだめですよ。
さらに福井氏は「最近ZZのプラモなんかもここぞとばかりに出るんですけど、ドーベン・ウルフとか、ユニコーンバージョンって書いてある。先にオリジナルを出せよと! ドライセンも出たけど、何でこれ袖ついてんの」と苦言を呈す。しかしながら『ZZ』の商品は苦戦するケースも多く、それによってますます『ZZ』は触れる機会が減っていく悪循環があるという。それじゃダメだ、毛嫌いせず全部食べてこそ宇宙世紀がわかるんだと、福井氏は力説する。
小形氏は、当時中学受験で『Z』と『ZZ』がリアルタイムで見られず、『ZZ』の最終話でよくわからないがカミーユが笑って走っていたのが印象に残っていて、その後再放送で見たという。福井氏も『ZZ』時代は年齢的にアニメを見る時期を過ぎていて、そういう意味では特別『ZZ』に思い入れがあるから『ユニコーン』に出した、というわけではないということになる。
福井氏は、『ユニコーン』執筆前に『ZZ』を見て、シャングリラの子どもたちのいてもいなくてもいい感じ、本筋からそれた話が続くなど気になる点もあるが「言われているほど悪くない」と感じたそうだ。富野由悠季監督もよく『ZZ』のことはあんまり覚えてないと言う割には斧谷稔(富野監督の別名義。絵コンテ、脚本、演出時に使われる)の名前がよく出ていることから、ちゃんと手を入れているし、やろうとしてることも伝わってくると評価。一方の藤津氏は、過去に『ZZ』の脚本を担当した遠藤明吾氏にインタビューした際に、コンテは富野監督がかなり手を入れているが、脚本は遠藤氏、鈴木(裕美子)氏に割と自由にやらせていたという話を聞いたという。『Z』の時はそうではなかったそうだが、福井氏は、「『Z』はあんなもの誰かに作っとけなんて言ってもできるわけがないよね」と言い、ほぼ満場一致の同意を得ていた。
ZZの位置づけと特殊性
そして、『ZZ』では両親との対決が描かれていない、という特殊性を福井氏は指摘する。それも含め主人公のジュドー・アーシタが葛藤する、という要素が全排除されていて、ゆえに他の作品と比べて食い足りないと語る。だが、それくらいやらないと『Zガンダム』のグリプス戦役の後始末というのは1年やっても終わらなかったのではないかと考察している。
藤津氏は「ジュドーは周りの大人に恵まれていて、ある意味大人に守られていたと感じた。あの子どもが楽園で遊んでいるような世界観は、大人が作ってくれたものではないか、カミーユとの扱いが全然違う」と投げかけるが、福井氏は「カミーユは狂うためだけに作られた人だからね。だから『劇場版Z』は、結局何がしたいのか全然わからないで終わっちゃったね」とチクリ。また、大人の事情抜きで福井氏は『ZZ』の良かった部分に「強化人間のあたり」を挙げている。……続きを読む