福井氏:プルがお風呂から出てきてプルプルプルプル~ってやり始めた時は、さすがに仕事とはいえ見続けるのが苦痛だったけど、プルツーが出てきて、強化人間(クローン)という、命の根幹の部分を人間がいじっちゃうことについて、『Z』でのフォウとロザミアでは消化しきれなかった部分を『ZZ』でちゃんとやりきったのはよかった。『ZZ』は単体ではなく、他の作品とからめて見ないと。あの狂った『Zガンダム』の後を描いたということを意識すると、すべてがわかる。
藤津氏:『Z』と『ZZ』はコインの裏表みたいな。
福井氏:そうです。『Z』で尖りすぎていた部分とバランスをとって、平均化するために『ZZ』は苦労している部分があって、それがあの『ZZ』の序盤ですよね。それである程度平均化ができたところで『ZZ』もちょうどいいバランスのガンダムらしいガンダムに戻ったかなというね。だから『ZZ』だけで見るとおかしく見えるんでしょうね。
小形氏:富野さんは何かに対するカウンターとして、作品を作る傾向があると思うんですが、『ZZ』は『Z』のカウンターで、という感じはしますよね。
福井氏:仮想敵が『Z』でね。
マリーダというプルシリーズを『ユニコーン』に出したのは、『ZZ』を見て決めたのか? という質問に対し、福井氏は『ZZ』以外は前に見たことがあって、『ZZ』だけ『ユニコーン』執筆直前に見たので、印象に強く残っていたというのはある、と語る。また、強化人間の物語は、『ZZ』でもまだ描き残した部分があるんじゃないか、ということで、『ユニコーン』は過去の宇宙世紀作品をそのままではなく、それを見た者として俺はこう思う、こう感じたというものを出していこうというコンセプトがあるという。
福井氏:ガンダムは人間の進化の物語でもあって、では人間とは何なのかを描くうえで、強化人間というもの、プルとプルツーという対になっているものというのは、重要だった。
このイベントでは福井氏がセレクトしたZZの話数から8本が上映された。その内訳は
2話:シャングリラの少年
12話:リィナが消えた
19話:プルとアクシズと
35話:落ちてきた空
36話:重力下のプルツー
44話:エマリー散華
46話:バイブレーション
47話:戦士、再び……
となっている。ご覧のとおり、全体的にプル、プルツーに関係するエピソードが多い。
ユニコーンのZZリスペクト要素
『ユニコーン』では、モビルスーツ(MS)の描写やエフェクトなどを過去の作品をリスペクトして意図的にやっているという。例えばZZガンダムのハイメガキャノンやアプサラスのメガ粒子砲などがそれにあたる。MS戦に関しては、メカ作監の玄馬宣彦氏が積極的にアイディアを出してくるらしく、ドライセンなどは最初まったく出る予定がなかったのに、気がつくと玄馬氏が描いていたとか。「なんでドライセンがいるの?」と訊くと、玄馬氏は「ドム好きな人がいると思って」と答え、それに対して福井氏たちは脚本上ドライセンは出てこないものの、勘で「この人のいうことはきいておいた方がいい」と判断して出すことにしたという。
そして福井氏は、『ユニコーン』で『ZZ』の要素が目立つ理由は『逆襲のシャア』があまりにも『ZZ』なんてなかったかのように振る舞いすぎたからだ、と語る。
福井氏:アクシズが出てきたんだからアクシズにいたMSはいっぱいあるはずなのに、全部ギラ・ドーガになってる。あれは何でかって、ファンに訊かれたことがあったんだけど、それは俺が訊きたいよ、って言いそうになった時にとっさに答えとして出たのが、「シャアはハマーンの匂いのするMSを使いたくなかった」って。
藤津氏:買い換えろと(笑)。
福井氏:全部捨てろ! って(笑)。でもメカマンとかみんな、ええ~って思って、こっそりアクシズの中に隠してあってね、最後アクシズが地球から逸れていく、あの中に全部入ってた。
藤津氏:あの中に(笑)。
福井氏:それをあとで袖付きが持ってきて使ってると。
藤津氏:う~ん、つじつまが合ったような(笑)。
福井氏:僕はよく「福井さん『ZZ』好きですよね」って言われるんだけど、そうじゃない! これが自然なんだって!
小形氏:『ユニコーン』にMSを出すとなると、『逆襲のシャア』の登場機体を除けば、『ZZ』が直近になるわけですから、モブのMSとして『ZZ』から出してくるのは当たり前ですよね。
福井氏:『ZZ』のMSも『逆襲のシャア』に参戦してたのかもしれない。でもそれはたまたま富野カメラに映ってなかっただけなんだ。
藤津氏:福井カメラがあったら、映っていたと?
福井氏:そこは、等分にいきましょうよと、ね。……続きを読む