クワガタ姿でUST中継、機長姿で新卒説明会、内定式でファラオ…数々の伝説を残した社長がいる。ホスティングサーバー「ロリポップ!」をはじめとして、「JUGEM」「グーペ」「ブクログ」「ザ・インタビューズ」などのインターネットサービスを数多く展開するpaperboy&co.の代表取締役社長 佐藤健太郎氏だ。JASDAQ上場会社の社長が一体どうしてこのようなコスプレをしているのだろうか。
--そもそものきっかけはありますか?
佐藤社長「昔から、新しいサービスが始まるときにくす玉を割るなどして祝っていたんです。そのときに、私もはっぴを着て太鼓をたたいていたんですが、だんだん"はっぴ姿でくす玉を割る"という行為が日常化してしまって。もっと意外性がほしいと思ったことから、今のような形になっていきました」
佐藤氏が社長に就任したのは2009年。既にその前から、片りんをうかがわせていたことになる。社長就任後に始めたUstreamでクワガタ姿を披露すると、じわじわインターネット上で有名になっていったが、2010年にUstream中継を引退、同時にクワガタも引退。
--ちなみに、クワガタの行方は…
佐藤社長「クローゼットの中で眠っています。一度家でかぶったら、4歳の娘に泣かれてしまいました」
好きなコスプレTOP3
--ほかに、どのような場面で披露されているのですか?
佐藤社長「例えば、社員の卒業式。弊社の社員が退職するときに、任意で行っているイベントですが、そこで"健八先生"というキャラクターになって卒業証書を渡しています」
あの超有名ドラマの先生に扮(ふん)している! バリエーションが豊富なのは、そのときの社員の方にあわせて変えているから。
佐藤社長「ほかに新卒の説明会や、新規プロジェクトを生み出すための"お産合宿"、新卒社員の内定式、社内の業績発表イベントなどで披露をしています」
--せっかくなので、お気に入りTOP3を教えていただけないでしょうか。
佐藤社長「3位は、2012年10月に新卒の内定式で披露した"ファラオ"です。内定式に参加するはずだった学生が1人来れなくて、理由を聞いたらエジプトに行くという話だったんですよ。それで『ファラオだ!』と思いつきました」
このファラオは、Twitterで話題にもなり、Webのニュースにも掲載されたという。
佐藤社長「2位は…2012年の説明会で披露した勇者ですね。これはもともと持っていたのですが、なかなか着る機会がなくて」
--就活生の反応はどうだったんですか!?
佐藤社長「ポカーンとしていました。社長だとはっきりと言わなかったので、誰だろうと思われていたかもしれません」
--今も着ていただいていますが、完成度が高すぎて、まさか社長とは思わないかもですね…。
佐藤社長「1位は、2011年の説明会で披露した宇宙飛行士です! ステージ上にスモークをたいて宇宙服で登場しました」
--説明会がワンツーフィニッシュですね!
佐藤社長「500名ほど入れるホールで説明会を行っているので、インパクトがほしいと言うのが1点。やっぱり意外性がないと面白くないと思うんです。それから説明会という場では特に、会社のカルチャーを伝えたいので、わかりやすいかなと(笑) だんだん、やる方のハードルが上がってしまっているのですが…」
同社の理念は「もっとおもしろくできる」…その理念を十分すぎるほどに伝えられる手段が、社長のコスプレだったのかもしれない。説明会の様子はTwitter実況もOKで、「#ペパボ新卒 」というハッシュタグがトレンド入りしたこともあるという。
佐藤社長「ただ、あんまりコスプレに意味を持たせたくないですね。やっぱり意外性があるものとか、唐突なものの面白さを出したい。今年の説明会は機長姿で出てきたんですが、来年やるならもっと意味のないものがいいと思っています」
--確かに機長姿だと、「社員はクルー」といったメッセージがありそうに見えますね。
佐藤社長「そうなんです。今あたためているのは、人外のもので…ケンタウロスですね。健太郎ともかかっています」
むしろ新しいプレゼンの形
--社員の方の反応はどうなんですか?
佐藤社長「どうなんでしょう…"ないと物足りない"という反応はされます。最近は、少しずつ手伝ってくれる、弟子のような社員も出て来ましたが、まだちょっと甘いですね…。役の気持ちになりきってない(笑)」
--最近他の社員の方とコラボした例はありますか?
佐藤社長「年末の全社会議を"ペパっていいとも!"というセットで行いまして、そのときは青年隊に参加してもらいました。これは舞台演出の方にもお願いして、台本も作って、セットも作って、電話で友達を呼ぶような形式で、1年の業績をいろんな社員に報告してもらいました」
会社の全体会議や業績報告、重要な会議だが正直退屈に感じるという人も多いだろう。こういったイベントになれば「楽しいから参加したい」と思える。これは、新しいプレゼンの形なのかもしれない。
--今後やってみたいことはありますか?
佐藤社長「個人のユーザーさんに向けた新サービスリリースイベントなど、社外に向けたイベントですね。あとは、株主総会で帝国劇場ばりのフライングで登場するとか…。もちろん、形式が決まっているものなのであまりおちゃらけられないのですが、できる範囲でサプライズを仕掛けたいです」
佐藤社長のエンターテイメント精神は、今後も会社の中で生きていくのだろうと感じた。いつかリリースイベントが行われる際には、ジョブズを別路線から超えていくようなプレゼンと新サービスを披露してくれるに違いない。