前回までにお届けした実売価格1万円台、および実売価格3万円台の注目のスピーカーに続き、実売5万円前後のお薦めスピーカーを一挙に紹介していこう。今回は音楽のリスニング用途のみならず、音楽制作用のモニターとしても活用できる定番モデルをピックアップしてみた。本価格帯では、ステレオ一体型のコンパクトな製品は少なく、より良いステレオ感や音像感が得られるやや大ぶりなスピーカーも多くなってくる。再生能力が増す反面、スピーカーを設置する際のスペースは、あらかじめよく検討しておく必要がありそうだ。

JBL PROFESSIONAL LSR2325P(実売価格:3万9,800円)

リスナーが実際に聞き取る音を音響心理学を応用して計算し、ミックスポジションにおける正確な音像定位と忠実な音質を実現するJBL独自のLSR(Linear Spatial Reference)理論を導入したスタジオモニター・スピーカーシステム。低域用55W/高域用35Wのパワーアンプを内蔵したバイアンプ方式を採用し、クラスを超えた高音圧と広い再生帯域を実現。シネマやHDTVなど、ダイナミックかつ繊細な描写が求められる音楽制作シーンはもちろん、PC用オーディオスピーカーとしても優れた能力を発揮する。バランスXLR、標準フォーン(TRS)、アンバランスRCAの各種入力コネクター、クリック付の回転式レベルコントローラー、高域用と低域用のトリムコントロールなどを装備している。

YAMAHA MSP5 Studio(実売価格:4万2,400円/ペア)

制作スタジオでの大定番となっていた同社「NS-10M STUDIO」などのヤマハスタジオモニター開発チームにより設計されたニアフィールドモニター。5インチコーンウーファー/1インチチタンドームツイーターによるバイアンプ構成のスピーカーは、コンパクトながらも音の立ち上がりが良く、分解能・耐久性にも優れる。バランス型のXLR入力端子とフォーン入力端子を併装し、ミックスするソース特性などに応じた補正を実現するTRIMコントロール「LOW」(4ポジション)、「HIGH」(3ポジション)の各コントロールも搭載する。6.5インチコーンウーファーを採用した大型モデル「MSP7 STUDIO」、180Wの大出力アンプを搭載したクイックレスポンスのパワードサブウーファー「SW10 STUDIO」も用意されている。

KRK VXT4 (実売価格:6万4,000円/ペア)

丸みを帯びたユニークなエンクロージャーデザインと、黄色い4インチ・ケブラー繊維ウーファーが、目を惹くスタジオモニター・スピーカー。45ワット(HF: 15W、LF: 30W)のバイアンプ設計となっており、歪みを抑えた伸びやかなローエンドと透明感のあるサウンドを実現する。設定されたスレッショルドを超えたときに回路を保護してくれる「リミッター」、オーディオ信号の入力を検知し自動的にスタンバイ状態の制御を行う「オートミュート」機能も搭載。6インチウーファー採用の「VXT-6」、8インチウーファー採用の「VXT-8」もラインナップされている。なお、ツィーターとウーファーを保護する専用グリルも別売されており、リビングなどで使用する際にも便利だ。

GENELEC 6010BPM (実売価格:3万4,515円/1台)

重量わずか1.4kg(181×121×114 mm)という軽量・極小のライトメタル・ボディーに、同社の持つスタジオモニターに関する様々なノウハウとテクノロジーを凝縮したウルトラ・コンパクト・サイズの2ウェイ・コンパクト・アクティブ・スピーカー。同社製品ではお馴染みのメタル・ドーム・ツイーター、設置面への振動をカットしてスピーカー本来の鳴りを実現する専用ベースマウンタ「Iso-Pod」も採用。RCAピン・ジャック入力端子を装備し、パソコンのオーディオ出力、携帯型オーディオ・プレーヤーのイヤホン端子、プリアンプ出力などからダイレクトに接続することが可能となっている。設置スペースのシチュエーションに合わせて、低音域に関する微調整が行える「DESKTOP CONTROL」および「BASS TILT」機能もサポートする。

FOSTEX NF-01A(実売価格:5万9,800円/ペア)

優れたサウンドと高いコストパフォーマンスに定評のあるFostexによる、大型コンソールトップからコンパクトなプライベートスタジオまで幅広いシーンに対応可能なパワード・ニアフィールド・スタジオ・モニター。、ボックス部に15mm厚、バッフルに18mm厚のMDF材を採用した存在感のあるエンクロージャーに、バイアンプ駆動(LF:50W 、HF:50W )の13cmHPダイアフラム・ウーハー、およびソフトドーム・ツィーター、さらにHPサウンド・リフレクター2個などを内蔵し、原音を忠実なサウンドを再現することが可能となっている。XLRタイプ(+4dBuバランス)とフォーン(-10dBVアンバランス)入力を装備しており、様々な機器との接続が手軽に行える。

本レポートにて紹介したスピーカーの再生能力は、いずれの製品も甲乙つけ難く、それぞれに特徴を持った素晴らしいサウンドが楽しめる。自分の好きな音楽ジャンルや、制作する音楽スタイルに合わせて、サウンドのディテールや低高域のバランス、ボディーサイズ、デザイン、コストなどを総合的に判断して、自身に最適なスピーカーを選択しよう。気になるスピーカーは、ぜひ楽器店やオーディオショップにて実際のサウンドを自分自身で試聴してみることぜひお薦めしたい。

内山 秀樹(uchy)/ウチヤマ ヒデキ
ライター/サウンドクリエイター/ITコンサルタント

10代の頃より、楽器メーカーの製品開発やインストラクションなどに参加。既存の製品にも多くのコンテンツなどを提供する。現在はフリーランスとして、PC誌/音楽誌への執筆活動をはじめ、作曲、編曲、WEBプロデュース、ITコンサルティング、ゲームサウンド製作、学校講師など多岐にわたる幅広い活動を展開中。