「あそこだけはヤバい!」と誰もが恐れる全国えりすぐりの心霊スポットを訪れ、霊を大声で罵倒したり「俺を呪え!」と挑発したりと、文字通り"殴り込み"をかけて心霊現象をカメラにとらえるべく奮闘する心霊ドキュメンタリー『怪談新耳袋殴り込み!』シリーズ。命知らずな野郎どもで結成された通称"殴り込みGメン"の勇敢かつチキンな姿と、説明不可能な心霊現象を収めた映像が話題を呼び、ニコニコ生放送では延べ50万人以上もの来場者を記録した超人気シリーズである。

その最新作である『怪談新耳袋殴り込み! 劇場版<魔界編 前編><魔界編 後編>』が7月13日から公開される。今回の舞台は沖縄。果たしてどんな恐ろしい現象が彼らを待っているのか。メンバーの一人であり、書籍版『新耳袋殴り込み』シリーズの著者でもあるギンティ小林氏に話を聞いた。

ギンティ小林
1971年5月5日生まれ。東京都出身。洋泉社の倉庫でアルバイトをしていた際に、町山智浩氏に見いだされ、映画雑誌『映画秘宝』(洋泉社)でライターとしてデビュー。同誌で欠かせない名物ライターとなり、現在はさまざまな雑誌で記事、コラムを執筆。28歳から14年間もの間、心霊スポット取材を行い、心霊スポットルポ『新耳袋殴り込み』シリーズを多数執筆。この夏、角川ホラー文庫より、新たなエピソードを加筆した文庫版「新耳袋殴り込み」シリーズが2冊発売される。

――まずは沖縄本島へ殴り込みをかけた<前編>の見どころを解説いただけますか。

そもそも行きたくなかったですんですよ、沖縄(笑)。2年前にもこの企画で訪れてすでに恐ろしい目に遭っているので、この話を聞いた時は絶望的な気持ちになりました。でも、行くなら前作を越えなければならない…。

『Kの塔』は2年前、昼間に行ったにもかかわらず薄暗いし、人の気配はないし、あまりの怖さにGメン一同『何もここで死ぬことはないだろう』ということで中止したというくらい怖い場所です(笑)。

『福の神の家』と呼ばれる廃虚では、僕は一人で潜入させられて壁に描かれた巨大な女性の顔の絵と向かい合い、わら人形のわら入りのハブ酒を酌み交わしたんですが、ひと口飲むごとに『もう社会復帰はできないな』と、自分の中で何かが壊れていきました(笑)。

――では、<前編>の一番の見せ場は何でしょう?

なんといっても沖縄の誇る巨大廃虚『N高原ホテル跡』ですね。その日はずっと天気が良かったんですけど、いざ行こうとしたらいきなり土砂降りの雨になって。しかも、現場に着いて準備をしていたらメンバー全員の携帯電話が「撮影をやめろ」といわんばかりに突然、一斉に鳴り出したんですよ。

――本編映像にも出てきますが、そこには心霊現象などの怖い話に造詣の深い作家・平山夢明さんの指令を受けて向かったんですよね。

はい。平山さんに言われて探した"穴"というのがまたスゴくて、地下3階分くらいの深さの、ものすごくデカい穴が垂直に空いてるんですよ。石を掘っただけの階段があるんですけど、どう見てもまともに降りられない。そもそもそこは御嶽(うたき=琉球信仰における神が祀られている場所)ですので、ものすごく力のあるユタ(=民間霊媒師 / シャーマン)が修業する場所なんだなって思いました。

――そんな神聖な場所に無謀にも殴り込みをかけたわけですね(笑)。

そこで平山さんに言われたミッションにトライするのが<前編>の山場でしたけど、その内容があまりにもフザけすぎてるんですよ。『龍神に取りつかれたギンティをバロム市(※平山氏が本作のために考案したオリジナル・ヒーロー)に変身した力夫が倒す』『穴に降りたギンティが、♪はぁ~、ちょっちゅね~ と言ったら、他のメンバーが♪ちょっちゅね~ と返す』という…。

で、現場で「本当に、そんな危険なことをやるのか…?」って緊急会議になったんですけど、そもそも聖域の前でそんなことを話し合っている時点で十分な挑発行為じゃないですか(笑)。そしたら、僕らしかいないはずの穴の前で人が歩く音や声が聞こえてきたんですよ…。なので、みなさんも御嶽には絶対行かない方がいいです! って、行ってる僕らがどうかしてると思いますが(笑)。……続きを読む。