潘は当時のエピソードとして、実は「ジーク・ジオン!」は5人ぐらいでやっていて、その中に潘とミライ役の白石がいて、あの「ジーク・ジオン!」は男3人女2人でやっていたという衝撃の事実を披露。「私は一生懸命低い声でジーク・ジオン! ってやってて、チャコさん(白石のこと)はあのかわいい声でジーク・ジオン! って(笑)。その時池田さん外でタバコ吸ってたでしょ!」……と、笑ってうなずく池田。確かに、シャアには「ジーク・ジオン!」にまざっていてほしくないところだ。

そして誰もが聞きたいであろう「アムロ役の古谷徹さんとは当時どんな話を?」という質問には……

池田:「古谷という男がまたつまんない奴でね!(力説) あ、30数年前の話ですよ? 酒は呑まない、付き合いは悪いで」

潘:「おはぎが大好きだったよね(笑)」

池田:「連邦でもブライト役の鈴置くんとは歳も近いしよく呑みに行ったんだけど……そういうのも含めて(アムロを)本気でやっつけてやろうと思ってたんだけど」

そういう関係が自然と役作りにも役立っていた(?)様子。ちなみにシャアとアムロの間で板挟みになるララァ役の潘は、「池田側、古谷側どっちにも行けないで、ひとりで仕事してました(笑)」と、これまたララァらしい位置におさまっていたという。なお、最近の古谷については、池田が「今は酒も呑めるようになってきて、呑みはじめたのが遅いから肝臓もまだしっかりしてるんですよ。それから最近ゴルフも始めて、(腕が)追いついてきている。追いついてくるなよ! って思ってるんですけどね(笑)」とまるでシャアに勝ちたいと戦士として成長していくアムロ状態に今なっているという。『Zガンダム』時代に一度は共闘するクワトロとアムロのようだ、と思ったのは筆者だけではないだろう。

また、池田は半分冗談で「ガンダムの主人公はシャアだよと言っていたりもするものの、作品を通してみればアムロ・レイという役はラストシーンなんかを見てもそうなんですけど素晴らしい役で、最後のセリフで、ああ、結局あいつに持っていかれたなという気分になりました。そういう意味で素敵なライバルです」(場内笑)と、アムロと古谷に対する想いを語る。気安くリップサービスで称賛せず、今なお鎬を削り合うような意識を持っている役者魂というものなのか、そういう強い情念がキャラクターに吹き込まれているからこそ、『ガンダム』の登場人物たちの存在感はひと味違うのかもしれない。

「シャア・アズナブル展」には、もちろん『Zガンダム』時代のクワトロ・バジーナも

一方で、池田と潘の親交というのは、潘いわく20周年ぐらいで何かの収録の時(話にGacktが出てくるので『劇場版Zガンダム』のあとぐらいだろうか? よくわからないが五反田だったらしい)に深まったという。シャアとララァのセリフ録りが2~3行なのに、時間が遅れてしまったことでサンライズのスタッフが「すみません、何でもします!」と言うので、潘が「じゃあGacktと会わせて!」と言ったら「それは無理です」とNG。その時池田がGacktの電話番号を本当は教えてはいけないにもかかわらず、「ララァには借りがあるから」と教え、それがきっかけになったそうだ。なお、池田がGacktに「あとでララァから電話がいくかも」と初めてGacktに電話をかけて留守電に吹き込んだところ、その後潘が電話をかけた時にGacktは通常は知らない番号からの電話には出ないはずだが「これはララァだと感じましたね」と電話に出たという、嘘か真か分からない逸話が生まれたとか。それから池田、潘(&娘さん)、Gacktで一緒に食事をして、親交が深まったそうだ。

潘:「私(ララァ)が貸した力が蘇ってきたね(笑)」

池田:「いやあ~、ララァへの借りというのはこれからまだ一生引きずるのかなと……憂鬱です」(場内爆笑)

シャア、ララァ、アムロ、演じる役者さんたちも面白いです。

2人の好きなシーン&セリフは? シャアとララァの微妙な関係

それぞれ好きなシーンとセリフを挙げ、演じてもらうコーナーで池田はテキサスコロニーでのアルテイシアへの言葉を選択。

シャア:「アルテイシア、すぐに木馬を降りろ。地球に降りられるだけの金塊を残していく。私がマスクをしている訳がわかるな? 私はお前の知っているキャスバルではない。シャア・アズナブルだ。過去を捨てた男だ」(※劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』のセリフ)

戦闘シーンの合間での、こういった静かな想いを語るシーンが好きだ、と池田は語る。「ララァへの言葉じゃないんですね」と司会からツッコミを入れられ、さらに潘も「うちの犬はララァっていうんですけど、池田さんの犬もララァなのかなって思ったら、セイラっていうんですよ。やきもちやきますよね~」(場内笑)と追い打ちをかけられる。池田は「いや~、「早死にされちゃうのはね~。だからセイラにしました(笑)」と答えていた。

一方、潘が選んだシーンは、アムロとの精神感応で対話するシーンで、池田に「お互い違うじゃないか(笑)」と、何ともおかしなシャアとララァだった。

ララァ:「なぜ、なぜ遅れて私はあなたと出会ったのかしら? あなたに出会ってどうなるの? どうにもならないわ、どうにも」

選んだ理由は、ニュータイプとして初めて恋愛を感じてしまったシーンだからだそうだ。潘はこのララァが散る戦いを「6分間も戦い続けるんです。そのあと極道の妻が一瞬でロミオとジュリエットになった」と面白いたとえで説明。これは会場のコアなガンダムファンたちもすぐには理解できていなかったようだが、演じる側の心理がこうも一瞬でガラリと変化するのはそうそうあるものではなくて、アニメならでは、あるいはララァという人物と戦死する瞬間に生まれた心と魂の解放……のようなものが表現されているのだ――ということを表現されていたのではないかと思われる。ガンダムという作品では数多くの死が描かれているが、その中でもララァの死はやはり特別だなと、改めて感じた。このシーンチョイスについてコメントを求められた池田は「アムロに任せます(笑)」と一言。やはりララァは、シャアの手には負えない人物だったのだろうか。……続きを読む