2001年にリリースしたMicrosoftのコンシューマーゲーム機である「Xbox」は、2005年に後継機として「Xbox 360」をリリース。そして8年目を数える今年5月、次期Xboxの詳細が明らかになると言われている。

言わずもがなXboxシリーズはゲーム機器だが、インターネットの普及により、デジタル放送やブロードバンド放送をテレビで視聴可能にするSTB(セットトップボックス)化し、スマートテレビのような使い方も現実的になってきた。そこでXboxシリーズの流れや次期Xboxの可能性と合わせて、「Next at Microsoft」で取り上げられたKinect for Windowsの利用例から、物理環境と仮想環境の結合に関する実験例の紹介を今週はレポートする。

5月22日に明らかになるであろう次期Xbox

図01 「Xbox, A New Generation Revealed」と題したページでは、5月21日午前10時(日本時間で22日深夜2時)からストリーミング放送を行うと紹介されている

本誌でも既報のとおり、次期「Xbox」を情報を公開すると思われるイベントを行うと発表し、既にイベント告知ページも用意されている。同イベントから約半月後となる6月からは、世界最大のゲームイベントであるE3(Electronic Entertainment Expo)が開催。Microsoftは慣例だったE3での発表に先駆け、自社イベントで発表することを選択した(図01)。

同社の発表では「新世代のゲーム、テレビ、エンターテイメント」という単語を使っていることから、映像や音楽サービスのハブ(中継装置)という役割を狙っているのだろう。次期Xboxのスペックもこのタイミングで発表されると思われるが、ネット上では先行発表された「PlayStation 4」に合わせてくると言われている。プレスリリースによると、PlayStation 4のスペックは、8コアAMD製CPUにRadeonベースのGPUを組み合わせたカスタムプロセッサに、8ギガバイトのGDDR(Graphics Double Data Rate)5を搭載。少なくとも次期Xboxも、同等もしくはこれ以上のスペックを期待していいだろう。

ここでコンシューマーゲーム機に興味を持たない方向けに、Xboxの歴史を駆け足で紹介したい。「初代Xbox」がリリースされたのは2001年11月15日(日本は2002年2月22日)。筆者も記憶が曖昧だが、2001年末あたりに日本マイクロソフト調布技術センターでDirectXと連動した技術説明会が行われたように記憶している。会場で説明されたように、Xbox本体は我々が使用するコンピューターとほぼ同等。OSもWindows 2000のカーネルを軽量化したものを搭載し、DirectXをAPI(Application Programming Interface:簡潔にプログラムを記述するためのインターフェース)として採用している。

図02 現行モデルである「Xbox 360 S」

ちなみに、PlayStation 2が日本で発売された2000年3月4日の数日後にXboxの正式な発表が行われた。初代PlayStation、PlayStation 2の成功例はご存じのとおりだが、Windows OSとOfficeスイートでコンピューター市場を席巻(せっけん)していたMicrosoftにとって、ゲーム市場は“チャレンジャー”として挑まなければならなかった。Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が訪日するなど大々的な広報活動を行ったが、プレイ時に光学メディアを傷つけてしまうという問題はイメージダウンにつながり、一定のシェアを確保するにとどまっている。

初代から4年後となる2005年11月22日に発売されたのが、現行版である「Xbox 360」だ。IBMと共同開発した3コアCPUとATI製GPU、512メガバイトのGDDR3をメモリとして搭載。ハイビジョンやドルビーデジタル5.1chサラウンドに対応し、一定のクオリティを保持している。その後もHDMI端子を搭載したモデルやHDD(ハードディスクドライブ)搭載モデルなどをリリースしているが、興味深いのはWindowsマシンとの連動だ。同マシンをサーバー、Xbox 360をクライアントとして運用し、画像や映像、音声ファイルをXbox 360経由でテレビに映し出すことができる(図02)。

残念ながらXBOX 360にもハードウェア的問題が発生した。内部に不具合が発生すると本体正面のLEDランプが赤く光る「レッドリング(Red Ring of Death)」があまりにも有名。Microsoftはレッドリング問題が発生した場合は、保証期間を1年から3年に延長し、保証期間外の有償修理したユーザーには修理代金を返還している。この他にも排熱不足による本体の過熱問題や、光学メディアの損傷などハードウェア面のトラブルは枚挙に暇がない。

このようにネガティブな面も多いのは事実だが、現行のXbox 360がゲームプラットフォームとして一定レベルのクオリティを維持している点は評価したい。ユーザーニーズに伴ったインターフェースやデバイスの搭載、多種多様な周辺機器、定期的なシステムアップデートなど、よりよいプラットフォームに近づけようとしているMicrosoftの努力は評価に値する。また、Kinect for Xbox 360をセットアップすることで、ジェスチャーや音声操作による操作はNUI(ナチュラルユーザーインターフェース)は、近未来的を実現する環境として群を抜いている(図03)。

図03 Xbox 360上でNUIを実現する「Kinect for Xbox 360」

その一方でスマートテレビ的に利用されている点にも注目したい。そもそもスマートテレビとは、通常のテレビでインターネットと連動し、オンラインメディアやなどを楽しむ環境である。Xbox 360では既に実現した機能だが、次期Xboxではスマートテレビ的機能を強化してくるのは確実だろう。ハードウェアスペックもMicrosoftの方向性も発表されていない状態では推測の域を超えないが、「IllumiRoom(イルミルーム)」のような楽しみ方も期待できる(図04~05)。

図04 「IllumiRoom」の紹介ビデオから抜粋。ディスプレイの周りにFPSゲームの背景や敵からのビーム(?)がリアルタイムで描かれている

図05 ダンジョン内の背景やモノクロで映し出されている。より、ゲームの世界に集中できる演出だ

海外で囁(ささや)かれている噂だが、次期Xboxは2013年11月前半にリリースされると言われている。筆者はコンシューマーゲーム機はハードウェア的興味で購入しているが、Xboxシリーズだけはタイミングを外して購入していない。ゲーム自体はあまり興味を持たなくとも、IllumiRoomによるプレイ感やスマートテレビもApple TVや噂されているAmazonのSTB(セットトップボックス)に対抗する機能を備えるのであれば、食指が動く方も多いだろう。いずれにせよ興味のある方は5月22日の発表を心待ちにしてほしい。