Surface RTは日本のタブレット市場に「ハマる」か?

さて、日本マイクロソフトによるSurface RTの概要は前記のとおりだが、気になるのは「Surface RTは既存のWindows RT搭載コンピューター以上のアドバンテージを備えているのか」という点だ。

そこで、日本マイクロソフトのWebページで「お勧めのWindows RT PC」と紹介されているASUSの「VivoTab RT TF600T」とNECの「Lavie Y」と比較する(図10)。

図10 Windows RT搭載マシンの主なスペック比較表

図10をご覧のとおりプロセッサやメモリー容量はすべて同一。ちなみにNVIDIA Tegra 3は1.3GHz駆動の4コアだ。記憶領域として使用するフラッシュメモリーはSurface RTの場合、32GBと64GBの選択肢が用意されている。きょう体サイズや重量はディスプレイによって差が生じているが、機能差に至るほどではない。

なお、表には含めていないが内蔵センサー機能など細かい部分の差は生じている。例えばSurface RTは光センサー/加速度センサー/ジャイロスコープ/コンパスを備えるが、VivoTabはNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)やGPSを搭載。Lavie Yの仕様ページには、内蔵センサーに関する記述はないので詳細は不明だが、Windows RT搭載マシンの選択ポイントとしては小さくない。

その一方で重要なのが価格設定だ。図10に示したのは、いずれも自社オンラインショップで示されたものを並べている(Surface RTのみ発表価格)。ただし、Lavie Yは3年間のメーカー保証が付いた特別パッケージのため高く感じるかもしれないが、本体のみの実売販売は5万円台。TF600Tも各オンラインショップでの平均価格は4万円台だった。Surface RTの価格は前述のとおり4万9,800円/5万7,800円(32/64GBモデル)だが、文字入力などを行うにはTouch Coverが事実上必要であることを踏まえると、5万7,800円/6万5,800円という価格と捉えるべきだろう。

樋口氏が述べるとおり、Surface RTが「タブレット市場を盛り上げる一石」になるのは間違いない。だが、既に国内ではiPadやNexus 7といった先行組のタブレット型コンピューターが市場を席けんしつつあり、安価なタブレットという意味では3月12日発売予定のKindle Fire HD 8.9の存在感は大きい。2万4,800円/2万9,800円(16/32GBモデル。いずれもAmazon.co.jpの提示価格)という安価な価格設定はユーザーにとっては魅力的だ。

ノート型コンピューターとキーボードレスのタブレット型コンピューターの間に位置するSurface RTが、どのようなユーザーニーズを満たすのか判断することは難しい。日本マイクロソフトが掲げたキャッチコピーのように、ユーザーがSurface RTに良い意味で"ハマる"のかは、リリース後に触れて満たないと述べることはできない。そこで筆者は個人的にSurface RTを注文することにした。その評価は3月15日以降までお待ち頂きたい。

阿久津良和(Cactus