ゲーマーとしてこだわりたいスイッチ

キースイッチにはCHERRY MXスイッチを採用する。マイナビニュースの読者の方なら、改めて説明する必要がないかもしれないが、CHERRYのキースイッチは現在ZF Electronics Corporationが提供するメカニカルスイッチで、反発力、クリック感などキータッチの違いを軸の色で区別している。

CHERRY MXスイッチを採用

「Quick Fire Pro」シリーズでは、赤軸を採用したモデルと黒軸を採用したモデルの2種類を用意する。どちらもクリック感はそれほどないが、黒軸は反発力が強く重めのキータッチで、赤軸は軽めのキータッチとなっている。このほかにCHERRYのキースイッチには、クリック感が強い茶軸やキータッチが最も軽いとされる青軸などがある。

PCにおける入力インタフェースとして、キーボードにこだわるユーザーは多い。自分に合ったキーボードを使うことで、キー入力におけるストレスを軽減して、作業の効率化を実現することができる。

ゲームについても同様、あるいはキー入力が勝負を分けることもあるだけに、よりこだわりたいユーザーもいるだろう。古くからゲームセンターや家庭用アーケードスティックに対して、やれ三和製レバーがいい、あるいはセイミツ製のレバーがいいといった具合にそれぞれの好みが語られてきた。

PCゲームでも状況はそれほど変わらず、自分の好みに適したデバイスを選択することが重要だ。ゲーミングキーボードのラインナップから推測すると、タッチが軽くボタンを押しっぱなしにしていても、つかれない赤軸や青軸がゲーマーには人気であるようだ。

実際にタイピングをするとやはりタッチは軽く、すっとキーが入っていく。筆者の場合、ある程度反発力がある方が好きなので、好みからは外れてしまうのだが、打ち疲れないキーボードだという印象を受ける。クリック感がないので、メカニカルキーボードのイメージにありがちな過度なキータイプ音もない。オフィスで使うには少々派手かもしれないが、通常のキーボードとしても使っても違和感はないだろう。

ゲームプレイ時にうれしいWindowsキー無効

ポーリングレートの切り替えも可能

USB接続ながら全キー同時押しを認識する

さて、「Quick Fire Pro」シリーズの最大の特徴は、USB接続ながら全キー同時押しを認識する点だ。日常的なPC利用について、同時押しを意識することはあまりないだろう。せいぜいショートカットを利用するときなど2~3キーの同時押しに対応していれば特に問題ないといえる。

一方で、ゲームの場合には同時押しが必要とされる場面が多い。例えば、FPSやアクションゲームで移動しながら攻撃するという場合、あるいはピアノを模した音楽ゲームでは、複数キーの同時押しに対応していなければ演奏できる曲が限られてしまう。このようにプレイするゲームの種類や内容によるところが大きいが、ゲームにおいて同時押しは非常に重要なファクターである。筆者はかつて同時押しの数が少ないキーボードを使っていたことがある。STGで自機が斜めに移動できずに、上下左右の動きだけで敵の攻撃をかわすという苦行を行っていたのだが、あのときほど「キーボードはいいものを買わなければならない」と思ったことはない。

しかし、同時押しに対応するには課題がある。USB接続のキーボードの場合、同時に認識されるのは6キーとなっている。これはUSBの仕様で一度に送信できるデータ量が「8bytes」であるため。しかし、「Quick Fire Pro」では特殊なドライバを必要とせずに全キー同時押しを認識する。

「Quick Fire Pro」では、独自に搭載する「FN」キーを押すことで「FN」モードになり、メディアキーやWindowsキー無効化、ポーリングレートの切り替えといった操作が行える。この「FN」モードの状態で[N]+[Insert]キーを押すと6キー同時押しを認識する6Nキーモード、[N]+[Delete]キーを押すと全キー同時押しを認識するフルNキーモードとなる。

「FN」モードの状態で[N]+[Insert]キーを押すと6キー同時押しを認識する6Nキーモード、[N]+[Delete]キーを押すと全キー同時押しを認識するフルNキーモードとなる

フルNキーモードになると、PCが複数のHIDキーボードデバイスを認識する。複数のキーボードデバイスとして使うことでより多くのキーの同時押しを認識させているようだ。

デバイスマネージャ

4Gamer.netが公開しているキーボードチェックツール「4Gamer Keyboard Checker」で同時押しのチェックをしてみた。人間の指には限りがあるので、手のひらや腕を使ってできるだけ多くのキーを押してみたが55キーは認識しているので、おそらくは全キー同時押しといってもいいのではないだろうか。

4Gamer Keyboard Checkerで確認したところ。なお、余談だが頑張ってキーを押している間、筆者の頭には「ツイスターゲーム」がよぎっていた

普段使いでも十分満足できる高品質キーボード

さて、「Quick Fire Pro」を見てきたが、「人間の指には限りがあるのに、全キー同時押しを認識するのに意味はあるのか」と問われると、正直なところ回答に困る。しかし、「自分の使っているデバイスはこんな機能がある」という自己満足が、デバイスへの信頼感につながり、快適でストレスフリーなゲームプレイができればそれが1番だと思っている。

「Quick Fire Pro」は、単純にキーボードとしてみてもなかなか品質が高い。ボディはしっかりとしているし、キースイッチも好みの差は出るが快適だ。特にゲーム用途に限定しなくとも、手ごろなフルサイズキーボードを探すときに、選択肢の1つとして加えたい製品の1つである。