各分野の専門家の方にお勧めの書籍を紹介していただいている本企画。今回は、要求定義に精通する三輪一郎氏に紹介をお願いしました。

初めて要求定義を行うビギナー向けのものから、専門家が注目する最新トピックスを紹介するものまで、幅広く取り上げていただいているので、ぜひ参考にしてください。

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プロフィール

三輪一郎(MIWA Ichiro)


株式会社プライド チーフ・システム・コンサルタント。

東京都市大学(旧・武蔵工業大学)経営工学科を卒業後、株式会社プライドに入社。システム開発方法論の普及に努め、ユーザー各社の標準化と方法論を中心とした教育・研修を行う。また、システム構想・企画段階のコンサルティングにも従事。2005年度、内閣府CIO補佐官を務めた。

著書に『SEのための26の交渉テクニック』、『はじめての上流工程をやり抜くための本』(共に翔泳社刊)がある。JUAS講師、PMP、ITコーディネーター。

『開発のためのCMMI 1.3版』(こちらのWebサイトから無料ダウンロードできる)

『開発のためのCMMI 1.3版』
 ―― 著者 : CMMI成果物チーム、翻訳 : 日本SPIコンソーシアム CMMI V1.3翻訳研究会

CMMI for Developmentは、プロセス、エンジニアリング、プロジェクトマネジメントを3本柱とする、物作りをする組織の能力成熟度統合モデルです。5レベルで定義されたモデルのLevel2に要求管理(Requirements Management)、1段高いLevel3に要求定義(Requirements Development)が位置づけられています。

示された要求を「管理」するだけでなく、自ら積極的に引き出して「定義」することは、より高い能力として位置づけられているのです。CMMIの各レベルに位置づけられたその他の能力と併せて理解することは、身に付けるべきスキルを俯瞰する際の重要な指針になります。

『要求工学知識体系』

『要求工学知識体系』
 ―― 編集 : 情報サービス産業協会REBOK企画WG、発行 : 近代科学社

要求定義のあるべき姿は、著者によって範囲や流儀が異なっています。今の自分が理解しやすいものだけを読んでいると、見落としがあるかもしれません。

そこで、これまでに提示された多くの主張を分析・整理してまとめられた要求工学の知識体系、REBOKをお勧めします。学術的な面が強く抽象的で、読み物的な楽しさはありませんが、個人の経験を超えた多くの考え方が対比されたスーパーインデックスとして参考になります。

BABOKやSQuBOKといった周辺の知識体系における要求定義も併せて知ることができる日本発のREBOKをぜひ理解しておきましょう。

『品質展開入門』、『品質展開法(1)』、『品質展開法(2)』
 ―― 著者 : 赤尾洋二ほか、発行 : 日科技連

日々成熟度の高まるIT産業に従事する我々は、誰から学ぶべきか。要求定義の先端技術者は今、品質機能展開(QFD)という手法に着目しています。

品質機能展開は、トヨタをはじめとする製造業の世界で普及した要求定義の手法です。この3冊は、顧客の要求を把握することから始まり、設計・製造・テスト、そしてコスト管理までを視野に入れて要求を定義・継承し、実現するための具体的な方法を示しています。

代用特性とマトリクス、この2つのキーワードで要求を品質に結び付けるための原理と手法を情報システムの世界にどう応用するか。エンジニアとしての技量が試されます。

『品質展開入門』

『品質展開法(1)』

『品質展開法(2)』

『はじめての上流工程をやり抜くための本』

『はじめての上流工程をやり抜くための本』
 ―― 著者 : 三輪一郎、発行 : 翔泳社

要求定義の中心となるシステム化企画フェーズから要件定義フェーズまでは、実際に経験できる場面が少なくなっています。このシステム化企画フェーズの考え方を、主人公の体験を通じてわかりやすく紹介しているのが本書です。

経営戦略のWhyを聞くこと、投資のステージを意識すること、そして業務とシステムのWhatを明らかにすること。またそのために、顧客から何をどうやって引き出すのかといったインタビューのテクニックにも本書は言及しています。

自分の著書で恐縮ですが、システム化企画フェーズの考え方と進め方を具体的にイメージしたい方にお勧めします。

『手戻りなしの要件定義実践マニュアル』

『手戻りなしの要件定義実践マニュアル』
 ―― 著者 : 水田哲郎、発行 : 日経BP社

要件定義フェーズのイメージを掴みたい方には、この本をお勧めします。

本書は「実施計画の定義」や「現行業務の問題の把握」、「問題分析と課題の決定」といったステップを踏んで、若手エンジニアが成果物を作っていくというストーリーです。

企画と計画、問題と課題、目的と手段、業務機能とシステム機能といったバラバラに扱われることの多い必須かつ一連の観点を網羅し、結局何を作ればよいのかという疑問への答えも、架空の案件の事例を通じて見やすく紹介しています。

業務とシステムを別のレイヤーで捉える考え方は、REBOKに示された要求の階層モデルにも通じます。