各分野の専門家の方にお勧めの書籍を紹介していただいている本企画。今回は、ネットワークやクラウドに造詣の深いネットワンシステムズの藤田雄介氏(ビジネス推進グループ 第2製品技術部 クラウドソフトウェアチーム リーダー)に書籍を紹介していただきました。パケット解析といった基本から仮想化技術を扱う書籍、製品戦略を論じる書籍まで幅広く選んでいます。ぜひ参考にしてください。

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プロフィール

藤田 雄介(Fujita Yusuke)


ネットワンシステムズ株式会社所属。CCIE #8777、VCAP5-DCAを保持し、VMwareのアワードであるvExpert2013を受賞。ネットワークをベース・スキルとして、仮想化テクノロジーの道に到達したインフラ系エンジニア。

現在は、ネットワークを把握出来るクラウドエンジニアとして日々活動を実施。

『実践パケット解析 第2版』
――著者 : クリス・サンダース、発行 : オライリージャパン

『実践パケット解析 第2版』

ネットワークに携わるエンジニアは、その中を流れているパケットやトラフィックのフローを目視し、どのような流れになっているのかを確認する必要があります。トラブルが発生したときも、最終的な要因を判別するためにはパケットのキャプチャが重要になります。ネットワーク・エンジニアの仕事は、パケットのキャプチャに始まり、パケットのキャプチャに終わると言っても過言ではありません。

本書では、WireSharkというソフトを使い、実際にパケットをキャプチャする方法や、キャプチャした内容を読み解く手順を紹介しています。パケットのキャプチャができ、その内容を読み解くことができて初めてネットワーク・エンジニアとして活動することができます。その意味では、本書はすべてのネットワーク・エンジニアに読んでいただきたい1冊です。

『CCIE Routing and Switching Certification Guide』
――著者 : ウェンデル・オドム他、発行 : シスコプレス・ドットコム

『CCIE Routing and Switching Certification Guide』

CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)とは、シスコシステムズの認定する最上位の資格です。この資格の対策本が本書です。

ベンダー資格の対策本ではありますが、ネットワークの幅広い知識を紹介しており、それらを総括して復習したい人にも役立ちます。

具体的にはスイッチングやルーティングなどの技術について説明しています。ルーティングを実現するEIGRPやOSPFといったプロトコル、また、通信の優先順位付けをするQoSという仕組みについても、その方式ごとに細かく記載しています。

英語の書籍しか出版されていませんが、CCIEをすでに取得している方や、これから目指すような上級者は、ぜひ本書でトライしてみてください。

『VMware vSphereクラスタ構築/運用の技法』
――著者 : ダンカン・エッピング、フランク・デンネマン、発行 : 翔泳社

『VMware vSphereクラスタ構築/運用の技法』

VMwareのサーバーの環境について、可用性を高める方法を論じた1冊です。

3.11以降、データセンター全体の可用性を高めたいという要望が増えてきています。ネットワークを司るエンジニアも、サーバーやストレージといったシステムにも目を向け、そのようなシステムに対して、どのようなネットワークが必要になるのかという観点が重要になっています。

近年のシステムは、ネットワークやサーバー、ストレージ、クラウド、仮想化といったものが密に連携しています。そのため、ネットワークスキルのみならず、視野を広げることで、スキルのステップ・アップや、お客様のシステムの全体像をデザインすることが可能となります。エンジニアとしての視野を広げる意味でもお勧めできる1冊です。

お客様にシステムを提案するプリセールスのエンジニアや、実際にシステムの構築に携わるエンジニアの方は手に取ってみるとよいでしょう。

『NFSバイブル』
――著者 : カラハン・ブレント、発行 : アスキー・メディアワークス

『NFSバイブル』

個人的に思い入れがあり、非常にディープな内容の書籍です。

私は、エンジニアの出発点として、ネットワーク・エンジニアとして活動してきましたが、あるときストレージ・エンジニアに転身することとなりました。その際に、ストレージ・ネットワークの重要性に気づかされました。

サーバーからストレージに対して接続するためのストレージ・ネットワークの接続の手法のひとつがNFSです。この歴史の長いNFSというプロトコルに関して、非常に詳細に記載しており、NFSに関するほとんどの知識を把握できます。

トラブルが起こったり、性能に問題があった場合に、この書籍の内容を知っているかいないかでは雲泥の差が生まれます。ネットワークから次のフェーズに足を踏み出したい人、エンジニアリングの幅を広げたい人、サーバーやストレージのネットワークに関わるエンジニアの方にお勧めします。

現在は日本語訳の書籍が発行されていますので、非常に読みやすいと思います。

『ブルー・オーシャン戦略』
――著者 : チャン・キム、レネ・モボルニュ、発行 : ランダムハウス講談社

『ブルー・オーシャン戦略』

テクノロジーも重要ですが、どのような市場に対して、そのテクノロジーやソリューション(製品の組み合わせ)を展開していくかも重要です。本書では、競合のない市場に対してソリューションを展開する考え方やフレームワークを記載しています。

ブルーオーシャンと対比してレッドオーシャンという考え方があります。競合他社がひしめく市場に同じような製品を投入すると、否応なく価格競争に入ります。この血みどろの戦いを表す言葉がレッドオーシャンです。

そうではなく、競合他社のいない平穏な市場に製品を投入することをブルーオーシャン戦略と呼びます。この平穏な市場を見つけるための分析方法や、市場を見つける手順を示しているのが本書です。

どのような市場に対してどのようなソリューションを提供すると価値が高まるか、それを考えることは非常に重要です。こうしたことを見通すのは今後のエンジニアに求められるスキルのひとつだと思います。