2013年3月23日から兵庫県立美術館で開催される「超・大河原邦男展 - レジェンド・オブ・メカデザイン - 」の発表会が19日、都内で行われた。
ガンダムやザクをデザインした人、と言えば大抵の日本人にはその凄さが理解できるであろう、日本のメカデザインの第一人者。それが大河原邦男である。日本で初めてメカニックデザインという肩書きを持った人物であり、そのデザインの素晴らしさは今なお生産が続くガンダムのプラモデルを筆頭に、枚挙にいとまがない。
メカニックデザインというものは通常、美術館に展示される絵画や彫刻などは、少し違ったアートワークだといえる。自由な個人創作とは違ったオーダーやニーズがあり、それを形にするという特殊性、またデザインを元にさまざまな制作物、商品が生まれるという面白さがある。ゆえに展示もただ制作物を並べる、というものとは違ったものになるのである。発表会ではそのあたりも含めて、兵庫県立美術館館長の蓑豊氏、担当学芸員小林公氏、そして大河原邦男氏の3名が展示について語った。
開催にあたり、蓑豊氏は海外でも大河原邦男デザインは有名であることを語る。国内でもデザインの世界では著名であっても、仕事の性質上、一般的には知られることが少ない、ということなのだろう。しかしアニメという歴史のまだ浅いアート、文化を語る上で、非常に重要なものであることは間違いない。蓑豊氏は「海外でもアメリカやカナダでも『ガンダム』というデザインを知らない人はいないくらい。しかし『ガンダム』という名前は誰もが知っているとしても、産みの親である大河原さんを知らない人もいます。それを是非この機会に知ってもらいたい」と本展覧会への意気込みを述べる。
続いて、主役である大河原邦男氏が語る。タツノコプロに入社してまもなく、異例の抜てきを受けてメカデザインの仕事に就いたというあたり、やはりただものではなかったのだろう。次のように話している。
「1972年にタツノコの美術部に入りまして、美術部というのは背景を描く部署で、最初3カ月は背景の練習をするものなんですが、1972年10月からガッチャマンの仕事が始まり、綿密なメカものをやるということで、やってみないかと言われて、メカデザインの仕事と出会いました。ガッチャマンが終わったらまた背景の練習に戻るはずだったんですが、現在まで背景に戻ることはありませんでした(笑) 当時のメカデザインの重要性、時代のマーチャンダイジングの対象がおもちゃで、いろんなプロダクションから(仕事を)求められるようになりました」
忘れてはならないのは、アニメのメカデザインはそれがおもちゃになるということである。当時の玩具メーカーがアニメの主要なスポンサーだった時代において、メカデザインがいかに重要なものであったか、そして今なおそのデザインがオールドトイのファンを魅了してやまないことを考えると、その価値は計り知れないものがある。
今回の「超・大河原邦男展」の展示内容は、7つの章で構成されている。
1章:「メカニカルデザイナー誕生」タツノコプロ時代の、メカニックデザイナー黎明期
2章:「ロボットアニメの黄金時代」 初の主役ロボット『ゴーダム』や『トライダーG7』など
3章:「兵器としてのロボット」『ガンダム』『ダグラム』『スコープドッグ』など
4章:「カワイイメカ もう一人の大河原邦男」タイムボカンシリーズや超力ロボガラットなど
5章:「リアリズムの拡張 大河原ブランドの洗練と進化」『ラウンドバーニアン』や『SPT』など、より洗練されたデザイン
6章:「ロボット・ヒーローの復活 もういちど子供のために」『勇者エクスカイザー』から『勇者王ガオガイガー』まで
7章:「大河原邦男の今」『フリーダムガンダム』や『一発必中!!デバンダー』など2000年以降の作品
全時代の大河原デザインを網羅する、「超・大河原邦男展」の名に相応しいラインナップ。40年の歴史を考えればこれでも足りないぐらいではないだろうか。さらに、質疑応答では、大河原氏は次のように展示の見どころを語った。
「メカデザインというのはオファーがあって、それをキャラクタライズしていくもので、完成に至るまでに多くの人間の意見が入っているものです。誰が作ったとか、誰のデザインだとかいったことは関係ないんですね。アニメはフィルム、放映されたものがすべてで、それ以外の(設定資料や完成稿になる前のもの)ものは日の目を見ません。それを今回展示していただくということで、メカデザインという仕事がどういうものか、知ってもらうことができる大変有意義なものになると思います」
また、最後のスコープドッグの模型を交えた写真撮影中に大河原氏は「ガンダムよりスコープドッグの方が好き。メカメカしいからね。ガンダムはカッコよくないといけない。あ、展示されるスコープドッグの右側面からの写真を撮って送ってください。仕事で使うので」と記者を笑わせた。そんな大河原氏の個展は「超」のつくとおり、史上最大の展示となる。それは単なる作品の展示ではなく、メカニックデザインという仕事の第一人者がその仕事の内容を一般に公開するという貴重な機会である。役割としては裏方、縁の下の力持ちともいえる存在が日本のトップコンテンツをどのように支えてきたのか、この機会に是非知っていただきたい。
また、「超・大河原邦男展 - レジェンド・オブ・メカデザイン - 」の企画者である兵庫県立美術館の担当学芸員、小林公氏の当展示にかける熱い意気込みを次ページで紹介する。こちらも必見である。……続きを読む