──まさか『ゴセイジャー』が機会を作ったとは……娘さんにも感謝ですね
「はい。それで分からないなりに動こうと思ったらあるご縁をいただいて、権利元さんにお話を持って行けたのです。それと、直接関係はないですが、バーで呑んでいる時に"ザクで豆腐"をやりたいんだと熱く語っていたら、お台場のガンダムを作られた関係会社の方と出会いまして。信じていればできるから、あきらめんなよと言われて」
──背中を押されたわけですね
「ええ。でも、権利元さんもそうでしたが、誰に"豆腐とガンダム"って話をしても拒否反応というか、"……えっ?"ってリアクションをされるんですよ。何言ってんだお前、白しか共通点がないじゃないかって。おそらく『ガンダムとうふ』で企画を持っていったら、誰も話を聞いてくれなかったと思うんです。ガンダムとコラボすれば売れると考えたんだろうって受け取られる。それだと私の魂と、熱い想いというのは理解してもらえなかったでしょう」
──そうじゃない、違うんだと
「そうです。違うんですよ。"ザクと豆腐"は同じ量産型だということやどんな料理にも合うこと、主役ではなく名脇役なんだということ、いろんな共通点を持っている。だからこれは『ザクとうふ』でなければダメなんだと。そうやって話すと聞き手も"ザクで!?"となるわけです。『ガンダム』を知らない人でも"ザクって何? ガンダムじゃないんだ?"と興味を持ってくれるはず、という強い確信はありました」
──社長の熱意は相当なものだということはわかりましたが、実際に社内から反対はなかったんでしょうか?
「そこが社長のいい所です。一体誰が反対するんですか?」
──今、社長がギレン総帥に見えました(笑)
「気に入らなければ地球連邦軍に行ってもらえばいいんじゃないですか(笑)」
──ギレン総帥といえば、プロモーション映像の銀河万丈さんの演説は凄かったですね。あの台本は誰が書かれたんですか?
「書いたのは私です」
──えっ!
「あれは絶対やっていただきたかったのは、"諸君が愛してくれたガルマ・ザビは死んだ、なぜだ!"の一節で、"諸君らが愛してくれたザクとうふの次なる戦線は鍋だ!"って言ってほしかったんです。これを思いついた時はもう、絶対銀河万丈さん(※『機動戦士ガンダム』に登場するギレン・ザビの声優)にやってもらおうと。断られるかとも思いましたが、何とかやっていただけました。"ジークジオン"には私も参加しましたよ。3テイク目には声が出なくて"いかん! これでは負ける!!"と焦ってしまったほどです」
──ガヤまでやられたんですか(笑)
「ガヤどころか全部自分でやりましたから。交渉もパッケージ作りもプレゼンも発表会の時の進行シートも全部。ですので、社内に内心では反対の社員がいたとしても、その人のお世話になることも、迷惑をかけることもないわけです。それと『ガンダム』が好きな人間というのは目立たなくてもいるものですから、社員のモチベーションアップにはものすごくつながりましたね」
「鍋用! ズゴックとうふ」のプロモーションムービー
「鍋用! ズゴックとうふ」は"青い豆腐"になる可能性もあった!?
──デザインのこだわりも、発表会で話しておられましたよね。ボツ案が4つほどあったとか
「実はボツ案はもっとあったんですよ。ズゴックというのは、設定画の通りにそのまま作ってもカッコよくない。ですが、カッコいいズゴックとはどういうものかを説明するためのうまい言葉がないわけです。パッケージを作ってくれた会社の社長も同世代なので『ガンダム』は知ってるんですが、設定画そのままを再現しようとするんですね。当然です。見比べて、ほらそのまんまじゃないかって。いや、そうじゃないんだと。ズゴックっていうのはこう水中から出てきて、ちょっと前屈みで……と言うのですが、そのちょっとが伝わらない。それであの25.9度"ズゴック度"なんだよという説明を加えて、これでやってくれと発注したら"ああ、そうなんですか"と。そうなんですかじゃねえよ!っていう(笑) そういうやりとりをしながら完成させていったんです」
──大変な作業です(笑)
「(パッケージを手にして)この『ザクとうふ』のデザインを見てください。モノアイって本当は丸じゃないですか。でもこれ、違うでしょ?」
──確かに違いますね
「私がカッコいいと思うのはこの半月のモノアイなんだと!」
──(笑) こういう見え方になってないと、ということですよね。そこはどう伝えたんですか?
「絵で描きましたね。鉛筆で。ここはこうなんだ、違うだろと。そういえば(ボツ案で)このズゴックのモノアイを真ん中にした人がいて、それはないだろ! 何考えてるんだ!と思ってしまいまして」
──デザインは相当な苦労があったんですね
「パッケージを作ってくれたメーカーさんは偉いです。普通はここまでやってくれませんからね。先方の社長さんとも、これは気心が通じていたからここまでやってくれたんだと思っています。ありがたいですよね。でも向こうの会社にも『ガンダム』好きな方がいまして、パッケージを製造してこう、機械で流れてくる大量のズゴックを見て"うおお!"ってなったらしいですよ」……続きを読む