以前から報じられていたように、Microsoftは以前からInternet Explorer 10をWindows 7へ提供する予定を計画していた。しかし、開発の遅延から正式な発表は10月中旬頃となり、既報の通り、その一カ月後である11月13日(米国時間)にリリースプレビュー版が公開された。そこでWindows 7向けInternet Explorer 10リリースプレビュー版をインストールし、その概要をまとめたレポートをお送りする。

最新のIE 10をWindows 7へ提供開始

過去のInternet Explorerと同じく、最新のWindows OSに最新のInternet Explorerをバンドルすると同時に、他のWindows OSにも追加提供してきた。前バージョンであるInternet Explorer 9はWindows XPを、Internet Explorer 10はWindows Vistaを提供対象外にするなど、提供状況が変化しつつある。

Internet Explorer 10もWindows 8やWindows Server 2012専用になるかと思われていたが、10月中頃にMicrosoftはリリースすることを発表した。そして2012年11月13日(米国時間)に、Windows 7用のInternet Explorer 10のリリースプレビュー版が公開されたのである。

今回は特別なWebページを用意せず、Internet Explorer 10のパフォーマンスや能力をアピールするデモサイト「Internet Explorer 10 Test Drive」の一コンテンツとしてダウンロードページを設けている。

世界各国のバージョンを用意し、日本語版はWindows 7 Service Pack 1 32/64ビット用とWindows Server 2008 R2 Service Pack 1の三種類を用意。システム要件は以前ダウンロードページが一時的に公開された時と大差はない。基本的にWindows 7が快適に動作するコンピューターであれば問題なくインストールできるだろう。なお、インストール完了後はコンピューターの再起動が必要だった(図01~02)。

図01 Windows 7用Internet Explorer 10リリースプレビュー版は「Internet Explorer 10 Test Drive」からダウンロードする

図02 Internet Explorer 10リリースプレビュー版のシステム要件

あらためて述べるまでもなく、最新版となるInternet Explorer 10は、Chakra(チャクラ)JavaScriptエンジンやWindows OSのハードウェアアクセラレーションを実装し、パフォーマンス面の向上が図られている。その一方でHTML5やCSS3への対応を強化することで、表現性の高いWebページに対応。トラッキング防止機能である「Do Not Track」を搭載するなどセキュリティ面の強化も行われた(図03)。

図03 Windows 7上で動作するInternet Explorer 10リリースプレビュー版。バージョン番号などはWindows 8版と同じだ

気になるのはWindows 8の標準搭載版と今回のリリースプレビュー版の相違点だろう。外観的にもオプションダイアログの項目もほぼ同等。Internet ExplorerチームのブログであるIEBlogでグループプログラムマネージャーであるRob Mauceri(ロブ・モーセリ)氏が、「Windows 7でも高速かつ滑らかなInternet Explorer 10を楽しめる」と述べているとおり、基本的な相違点はないと考えた方がいいだろう(図04)。

図04 Windows 7版Internet Explorer 10リリースプレビューのオプションダイアログ。<詳細設定>タブなどを確認したが、Windows 8版と相違点はなかった

また、同ブログでは、Windows 7版Internet Explorer 10リリースプレビューと、Google Chrome 23.0、Mozilla Firefox 16.0.2を使用し、TestDriverの「Mandelbrot Explorer」を使用し、ベンチマークを行っている。その結果が図05だが、ご覧のとおりMozilla Firefoxの一歩先という結果を打ち出した。同ベンチマークはJavaScriptエンジンとグラフィック描画機能が左右するため、予想どおりの結果と言える(図05)。

図05 Windows 7版Internet Explorer 10リリースプレビューや、サードパーティ製Webブラウザーとのベンチマーク比較(公式ブログより)

どのWebブラウザーが優れているのか、というWebブラウザー論争につながるような話ではない。そもそも以前のInternet Exploreと最新版を比較すると、JavaScriptエンジンとJIT(Just-in-Time)コンパイラを連動させ、多くの面を最適化しているのは、既に報じられているとおりだ。ロジックを詳しく知りたい方はIEBlogの「Advances in JavaScript Performance in IE10 and Windows 8」を一読することをお勧めしたい。

Internet Explorerは単独のアプリケーションではなく、Windows OSのコンポーネントとして組み込まれているため、最新版がWindows 7へ提供されるのは、Windows 8への移行をためらっている多くのユーザーにとって、大きなメリットになるはずだ。本誌のニュース記事でYoichi Yamashita氏が報じているように、RTM版(Release To Manufacturing version:製造工程版)の提供時期は不明だが、このままWindows 7を使い続けるのであれば、RTM版提供開始後に導入することをお勧めしたい。

阿久津良和(Cactus