100年以上の歴史と人気を誇る十勝銘菓「バナナ饅頭」

全国的に名高い製菓メーカーが多い北海道十勝地方に、100年以上にわたり人々愛され続けておる「バナナ饅頭(まんじゅう)」という銘菓がある。シンプルな材料を使用した素朴な味は、昔から変わらずお土産として人気が高く、全国では模倣品も結構出回っているらしい。誰にでも作れそうで作れない、歴史ある庶民のお菓子を紹介しよう。

バナナを食べられない時代に出回ったバナナ味

バナナ饅頭は1905年あたりから、十勝の池田町という小さな町で売られ始めた。開拓が進んでいた当時、釧路から伸びてきた鉄道が池田町まで開通し、駅が完成。そして、この駅の利用客を相手に、地元で呉服などを扱っていた「米倉屋」が駅弁などの販売を始めた。その商品のひとつとして売り出したのがバナナ饅頭だ。

商品名に採用しているバナナは入っておらず、小麦粉、砂糖、鶏卵、はちみつなどの原材料のほか、バナナの香料を使用している。当時のバナナは庶民にとって高嶺の花。大変ぜいたくな食べ物だった。そういう時代に「せめてバナナのようなお菓子を提供したい」という思いでバナナ饅頭を売り出した米倉屋の愛情が伝わってくる。

口いっぱいにやさしい風味が広がる

できたてを手にする喜び

池田町の隣町である浦幌(うらほろ)町出身の知人は、「たまに母に連れられて鉄道を利用する際、このバナナ饅頭を買ってもらうのが人生最大級の楽しみだった」という。ちなみに、そう話してくれた彼女は今年80歳。まだまだ食糧事情も悪く、お菓子がぜいたく品だった子ども時代を過ごしたであろうことは想像に難くない。

その知人によると、タイミングよく焼きたてを購入できたときの喜びはひとしおだったらしい。半生菓子のバナナ饅頭は毎日店頭で焼かれるため、たまたま焼きたてのバナナ饅頭に出合った日には、心までほくほく温かくなったという。

コーヒーのおともにもぴったり!

午前中の焼き上げる現在のバナナ饅頭

米倉屋は現在、米倉商店に社名を変更している。創業当時と同じ池田町で「レストランよねくら」を経営しており、ステーキ丼やビーフカレーなどの料理を提供している。そのレストランの裏手にあるのが、バナナ饅頭の工場だ。焼きたてのバナナ饅頭を購入できるのはここだけ。毎日午前8~12時に焼き上がるが、時間は定まっていない。

正午少し前ぐらいの時間に行ってみると、焼きたてに遭遇しやすいかもしれない。とはいえ、現在も焼きたてのバナナ饅頭を入手するのはなかなか困難なようだ。バナナ饅頭は十勝全域で購入できる。

十勝以外では、札幌駅構内の「どさんこプラザ」で購入できるが、こちらは毎日在庫確保してはいないのでご注意を。また、電話注文することも可能なので、全国どこにいても十勝の素朴な味を楽しむことができる。

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よねくら