コラアゲンはいごうまん
1969年9月29日生まれ。京都府出身。
1988年にNSC7期生で入学し、翌年、オール巨人に弟子入り後、吉本興業所属として活動。1999年にフリーとなり上京し、様々なお笑いライブに出演。2001年にワハハ本舗の喰始と出会い、芸風をノンフィクションスタンダップコメディーに変更する。2010年『人志松本のすべらない話』の出演を機に、知名度を上げる。

ワハハ本舗の社長、そして演出家でもある喰始(たべ・はじめ)から出される無理難題の指令を遂行し続けて10年。芸人・コラアゲンはいごうまんは、その体験取材をもとにした話芸から”日本唯一の体験ノンフィクション漫談芸人”とも呼ばれ、フジテレビ系列「人志松本のすべらない話」の出演をきっかけに一気に知名度を上げた。そんな彼が、芸歴25年目にしてようやく初DVD「コラアゲンはいごうまん 実録・体験ノンフィクション漫談」を発売。涙あり、笑いあり。苦節25年の”お笑い道”を振り返ってもらった。

コラアゲンはいごうまん:「すべらない話に出させて頂いて、僕もすごく嬉しかったんですけど、何よりも嬉しかったのは今まで関わってきた方がすごく喜んでくれたんですよ」

コラアゲンはいごうまんはそう言うと、うれしそうにこう続ける。

コラアゲンはいごうまん:「そういう方がいれば、万が一僕が売れても芸の根幹はブレないだろうなと思います。なぜ、テレビに出たほうがいいのか明確に自分で理解していればテレビにのまれないと思います。喰さんからも言われました。売れたいって思ってテレビに出るのと、誰かを笑わせたいと思ってテレビに出るのは全然違うと」

実体験をもとにした彼の漫談は、1つの話が完結するまでがとにかく長い。だが、その迫力と臨場感に圧倒され、気づけば時間も忘れて彼の世界観に入り込み、そして腹を抱えて笑ってしまう。出演者一人当たりのしゃべる時間がある程度制限されているテレビ番組に彼のスタイルが合うはずがなく、本人も「テレビ向きではない」と認めるほどコラアゲンはいごうまんは少々異質な芸人なのだ。その唯一無二の芸が生まれるきっかけとなったのがワハハ本舗社長であり演出家の喰始との出会いだった。

コラアゲンはいごうまん:「自分で作ったネタで10年、吉本でやってましたけど、つまらなかったんですよ。そこから東京に出てきたものの、仕事も増えず。オーディションを受けてネタが面白くなかったら普通はそこで不合格で終わりなんですけど、喰さんだけは『こうやったらおもしろくなるんちゃう?』とアドバイスをくれたんです。合否だけではなくて、そこで関わろうとしてくれたんですね。やっぱり演出家でもあるので、そのアドバイスが見事だったということでしょうね」

そして、”喰始の指令”がはじまった時のことをこう振り返る。

コラアゲンはいごうまん:「ある時、りかちゃん人形に向かってしゃべれと言われたんです。とりあえずやってみたんですけど、喰さんが求めていたのは言葉尻や突っ込みの仕方とかではなく、その人の人間味が面白いかどうかだったんですね。小手先の笑いには何にも未来がないといわれました。1回でいい。おもしろくなくてもいいからしゃべりたくてたまらないことをしゃべってみろと」

以来、コラアゲンはいごうまんは喰始から出されるミッションを遂行し続けた。「あったこともない人の葬儀に参列」「刑務所の慰問」「後期高齢者しかいないソープランド」「奴隷体験」「マズイのに行列ができるラーメン屋」などその数なんと200超。もっとも過酷な指令については「うーん…全部ですね」というほど、生易しいものはひとつもなく、そういう身を削って得た体験談がコラアゲンはいごうまんに言霊として宿っていく。ただ、開始当初からその本当の意味、狙いに気づいたのではなく、ある人物の言葉がきっかけでコラアゲンはいごうまんは、スタンドアップコメディアンとしての人生を歩みはじめる。

コラアゲンはいごうまん:「ネタ見せの前日でそんなことしてる場合じゃなかったんですけど、もう今さら机に向かってもなぁと思ってフラ~っと相田みつを美術館に行ってみたんですよ。そうすると自然と足が止まるわけです。『つまづいったっていいじゃないか、人間だもの』。たまらんなぁ。もう、読むだけで泣けてくるわけですよ。あの独特の字体で、うん、うん、うん、辛かったねぇ、辛かったねぇ…と」

その話を喰始にしたところ、喰は待ってましたと言わんばかりに大喜びした。

コラアゲンはいごうまん:「喰さん、死ぬほど笑ったんですよ! 来たねー! 来たねー! それそれ! 初めて人間が見えた! 面白い! その話をそのまましてみろ。変なツッコミは一切いらない。笑いを捨てれば捨てるほど必ず笑いが近づくから。笑いを狙おうとしたらその瞬間スキができるんやって。その一件から喰さんとの心の距離も近くなりました。今から10年前のことです」

いかなる過酷な状況でも体一つで飛び込んでいき、結果、取材対象者との親密なコミニュケーションから数々の笑い話を生み出してきたコラアゲンはいごうまん。同じ取材する側として、その人心掌握術はぜひ学ばなければと思ったものの、意外や意外、彼は極度の人見知りだった。

コラアゲンはいごうまん:「基本的に初めて会う人ともあまりしゃべれないくらいの人見知りなので、取材なんていうのはされる側はいいですけど自分から話すなんて、いちばん苦手なことをしてるんですよ。コンパも嫌い。初めて会う女性に何話したらいいんですか。緊張してなんにも話せません」……続きを読む。