既報の通り楽天とイー・アクセスは9月19日、両社の共同出資による新会社「楽天イー・モバイル株式会社」(以下、楽天イー・モバイル)を設立し、新たなモバイルデータ通信サービス「楽天スーパーWiFi」を10月1日から開始すると発表した。同日、両社は共同記者会見を開催し、新会社および新サービスについて説明した。

左から楽天 常務執行役員兼CMO 中島謙一郎氏、楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏、イー・アクセス 代表取締役会長 千本倖生氏、イー・アクセス 代表取締役社長 エリック・ガン氏

楽天イー・モバイルは出資総額5億円。出資比率は楽天51%、イー・アクセス49%で、社長には楽天執行役員兼CMOの中島氏が就任する。

「楽天スーパーWiFi」はLTEに対応したWiFiルータで、イー・モバイルが提供する「EMOBILE LTE」の対応端末である「Pocket WiFi LTE GL04P」(ファーウェイ製)と同等のもの。本体の連続通信時間は約9時間、連続待機時間は380時間(無線LANオフ時)となる。

2年契約することにより端末代金は無料、月額料金は3880円定額となる。この金額はEMOBILE LTEと同額で、「業界最安値」だという。

通信速度は、下り(受信時)最大75Mbps/上り(送信時)最大25Mbps。データ通信を行なっても月額料金は変わらないが、24時間ごとに300万パケット(366MB)以上を利用すると当日21時~翌日2時までの混雑時間帯に通信速度制御が行われる(切断はされない)。

また、2014年5月以降は当月利用データ通信量が10GBを超えた場合、当月末までの通信速度が制御される。

気になる対応エリアだが、当日の発表によれば、下り最大75Mbpsを出せるLTEエリアは、2013年3月末に全国主要都市の人口の99%をカバーする見込みだという。また、主要都市以外では、下り14.4~42Mbpsの速度が出るデュアルモードで人口カバー率93%を達成しており、これらはエリアによって自動的にモードが切り替わる仕組みだ。

ちなみに300万パケットがどれくらいのデータ通信量かというと、PCでYouTubeを見た場合、動画にもよるが数本~10本程度の閲覧で達してしまう数字である。公式サイトでは、自宅の光回線やスマートフォンなどを楽天スーパーWiFiに一本化して通信費を節約するという例が挙げられているが、一日に動画を何本も見たり、音楽を大量にダウンロードしたりといったヘビーな使い方をするユーザーは注意が必要だ。

逆にブログなどの軽いページを閲覧する程度なら、300万パケット制限もさほど気にしなくていいだろう。要は使い方の問題である。

そんな「楽天スーパーWiFi」の最大の売りは、「トクするWiFi」というキャッチコピーの通り、契約することで付与される2つの特典だ。

1つは、契約中に楽天市場で買い物をすると、もらえるポイントが3倍になる特典。対象となるのは2012年10月末までに2年契約したユーザーで、ポイントが3倍になる期間は2年間。また、上限は毎月3万円までの購入分となる。

そしてもう1つは、「楽天スーパーWiFi」を契約することで、先日発売された楽天の電子書籍リーダー「kobo Touch」または、楽天スーパーポイント5000ポイントがもらえるというものだ。こちらも2年契約することが条件となる。

さらに、手続きの簡単さも売りの1つだ。すでに楽天会員の場合は、ログインすれば会員情報が受付画面に入力済みになるため、入力内容と重要説明事項を確認するだけで手続きが完了する。この間は最短で約1分とのことだ。

記者会見に登壇した楽天・三木谷社長は、今回のモバイルデータ通信事業への参入について「楽天市場へのアクセスは25%がモバイルから。ネットショッピングでもリッチコンテンツを使うようになってきており、これから電子書籍やコンテンツ配信事業に入っていく中で、会員の中で(モバイルWiFiの)ニーズが高まっている。通信を高速化し、マルチデバイスに対応する必要性を感じていた」と説明。また、イー・アクセスと協力体制については「技術的なバックボーンを得ることができ、楽天グループとのシナジーも高い。非常に可能性を感じている」と述べた。さらに将来、端末を付属して販売するつもりはあるかという質問に対しては、「将来的には端末とのバンドルも視野に入れたい」と今後の展望を語った。

今回、三木谷社長からkobo arcについての発表はなかった

イー・アクセスの千本会長。イー・アクセスは楽天と組むことで、ネット通販ユーザーへのシェア拡大を狙う考え

新会社、楽天イー・モバイルの社長には、楽天常務執行役員兼CMOの中島氏が就任する

イー・モバイルのエリック・ガン社長によると、イー・アクセスはモバイルデータ通信業界でトップシェア(約50%)を誇っているという

一方、イー・アクセスの千本会長は「イー・アクセスはモバイルブロードバンドに特化したオペレータとして世界から高い注目を集めている。そして今回、『楽天経済圏』というユニークですばらしいビジネスを展開しておられる楽天さんと組み、新たな事業領域に展開していく」と挨拶。「モバイルブロードバンドは特別な人だけのものでなく、すべての人にインフラを与えるものになると思っている。koboも愛用しており、夜寝る前に本を読んでいる。こういった端末と当社のネットワークサービスを組み合わせて使うことで、日本のモバイルブロードバンド環境を世界でもっとも高い状況にしたい」と新事業に自信をのぞかせた。

また、記者からの「なぜ合弁という形でリスクを背負うのか」という質問については、「楽天さんは日本最大のネット通販サイト。このチャンネルを活かして、ネット通販ユーザーへのリーチを一気に拡大していきたい。楽天さんのマーケティング力は、羨望の眼差しで見ていた。我々のネットワークと融合させて新しい価値を生み出せると考えている」と回答した。

(記事提供: AndroWire編集部)